アート

【趣味れーしょん美術館】#001:横山大観展は極端アートがぞろぞろ!

エーゲ海よりも深い青色の富士山。宝箱を開けた時に出る光のような金の空。その上を歩けそうなほど厚い雲海。

決めた!この屏風、買います!!

えっ、ここ、IK○Aじゃないの!? 東京国立近代美術館!?

横山大観の生誕記念大回顧展

横山大観《群青富士》大正6(1917)年頃 静岡県立美術館

皆さんこんにちは、サッカーボールをシャンシャンのぬいぐるみと見間違えた明菜です。最近、眼精疲労がしつこいです。

改めて、この屏風を見てみましょう。疲れ目にもハッキリ見える原色です。新進気鋭の平成生まれ若手クリエイターの作品…と思いきや、なんと、明治生まれの故人でした。その名も横山大観。なんてこった。富士山どーん!雲ぼわーん!森ぐんっ!と思い切りが良いデザインですね。これぞクールジャパンなモチーフです。

横山大観《秋色》大正6(1917)年9月

この屏風も綺麗!緑と赤が滲んで引き立て合っています。でも混ざって汚くならないから凄い。右から左に見ていくと最後に鹿のカップルが出てきて、なんとなく心温まって落ち着きました。

これらのカラフルな屏風を描いたのは、明治時代に生まれた画家、横山大観です。全く明治感が無いですよね。今現在、カッコいいの王道です。

横山大観は伝統的な日本画の手法を取り入れつつ、新しい表現に挑戦した人です。感性がモダンすぎる明治人。ものの輪郭を描かず、色の滲みやぼかしで表現する「朦朧体」という手法は、モダンすぎて中々評価されませんでした。世間が彼に追いついたのは、明治も終わりに近づく頃。

そんな大観の生誕150年、没後60年を記念して、大規模な回顧展が開催されています。場所はIK○Aではなく東京国立近代美術館です(会期終了後、京都国立近代美術館へ)。

日本一長い40mの絵巻!?

横山大観《生々流転》大正12(1923)年 東京国立近代美術館(重要文化財)

ポップな色使いの先駆者かと思いきや、水墨画も描けるのです。黒一色なのに、水・岩・木など素材の違いが伝わってくる絵の上手さ!特に波がぶつかって砕ける場面は必見!

しかも、この絵巻は40mを超える長さなのです!軽い短距離走ですね。現段階で、日本一長い絵巻です。展示も大変で、どこまでもショーケースが続いています。先が霞んで終わりが見えません。

絵巻を1回見るだけで40mなのです。これはとんでもない長さなのです。物足りなくて2回見たら、80mになります。もっともっと見たくなって25回見たら、それだけで1kmです。凄さが伝わらない喩えですね。

横山大観《生々流転》大正12(1923)年 東京国立近代美術館(重要文化財)

40m、ただただ絵巻を追いかけるだけだと飽きてしまいそう。だから展覧会では、ポイントの場面で解説パネルが登場します。日本画ビギナーの「ふーん。で、何が凄いの?」という疑問に寄り添ってくれます。

いや、飽きないかも。というのも、生々流転は場面の展開が早く、忙しい作品だから。

端的に言えば、雲から雨が落ちて川になり、海になり、水しぶきを上げてまた雲に戻るという、水の一生のストーリーです。最後まで行くと冒頭に繋がるから、流転。理科の教科書に載せたいエコロジーな流転です。

途中で人間や動物、植物もたくさん登場します。水は形を変えながら環境を移ろい、生き物は水に生かされている、ということが分かります。本当に理科の教科書に載せてほしくなりました。

素敵な作品がざくざく!

横山大観《海に因む十題のうち 波騒ぐ》昭和15(1940)年4月 霊友会妙一コレクション

生々流転で水の色んな局面を描いたように、大観は水の絵が得意だったようです。この絵の水しぶき、凄く綺麗じゃないですか? なんか、こう、しょっぱそう…濃いめの海ですね。写真よりもドラマチックで、サスペンスのクライマックスシーンみたい。

右:横山大観《夕顔》昭和4(1929)年/左:横山大観《柚子》昭和5(1930)年9月 公益財団法人 二階堂美術館

 

植物も上手いです。何気ない絵なんだけど、本当に綺麗。柚子は重く膨らんだ果実を守るように葉っぱがツンツンしています。夕顔は黒い何かに包まれていて…何だろう、妖しい香りを描いたのでしょうか。どちらも素敵な絵です。はがきで貰ったらテンション上がる絵(台無し)。

大観の死角

一瞬の水しぶきを捉えて絵に落とし込む観察眼や、40mの絵巻に挑戦した奇抜な発想の持ち主である横山大観。クリエイターとして必要なものを全て持っているように感じられますが、1つだけ死角がありました。それが、人物の複雑な姿勢。

左:横山大観《白衣観音》明治41(1908)年

下半身、短くないですか!?これ、ちゃんと脚組めてる!?左右の脚の長さ、違くない!?

大観はどうもデッサンが苦手だったようで、複雑な人体のポーズを描くと微妙なバランスになってしまいます。腿から下は骨が抜かれたような丸みで、うにゃっと無理やり組ませた感じ。周囲の岩がやたらリアルなので、人物の変な縮尺が目立ちます。

それでも「これで良いや!」的に完成させる自信は羨ましいですよね。豪快な性格とメンタルの強さが、彼を天才絵師にしたのかもしれません。

大観の代表作が全部見られる展覧会

というわけで、企画の趣旨を説明しないまま終わろうとしている、連載「趣味れーしょん美術館」の初回。とにかく横山大観展の楽しさ、面白さが読者の皆さんに伝わったことを願います。これからも美術館の敷居をどんどん下げ、海抜0m、いや駿河湾の海底を目指します。

ここまで紹介できた作品は、大観の制作のほんの一部です。展覧会は東京と京都で開催されるので、足を運びやすいと思います。読者の皆さんも、大観を体感してくださいね。(滑りそうなことは臆せずに言うのが鍵)

IK○Aとクールジャパンのマリアージュが目印です!

【展覧会情報】
『生誕150年 横山大観展』
[東京展]
会期:2018年4月13日(金)~ 5月27日(日)
会場:東京国立近代美術館 (東京都千代田区北の丸公園)
開館時間:10:00~17:00(金・土曜日は20:00まで) *入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし4月30日は開館)

[京都展]
会期:2018年6月8日(金)~ 7月22日(日)
会場:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)
開館時間:9:30~17:00 (6月8日~6月30日の金・土曜日は20:00まで、7月6日~7月21日の金・土曜日は21:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし7月16日(月・祝)は開館、7月17日(火)は休館)

写真:チバヒデトシ

明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館めぐりの楽しさを発信。西洋美術、日本美術、現代アート、建築、装飾、ファッションなど、扱うジャンルは多岐にわたる。人間より猫やスズメに好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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