アート

爆音上映ならぬ勉強上映? スクリーンから西洋美術を学ぶ。『アート・オン・スクリーン(ART ON SCREEN)』シリーズ

このところ良質なアートドキュメンタリーや著名な作家を主人公とした映画など、映像作品としてアートを楽しめる機会が増える傾向にあります。

そうした中、イギリス発の新たな人気アートドキュメンタリーのシリーズが、日本で紹介されています。それが、2018年6月から順次公開されている『アート・オン・スクリーン』シリーズです。

おもに西洋美術の巨匠たちの作品や画業全般に対して、「新たな視点」で掘り下げていこうという、意欲的なドキュメンタリーシリーズなのです。2018年は以下の3作品が上映されています。

『私は、クロード・モネ』(I, Claude Monet)

世界でもっとも人気がある芸術家であることは疑う余地がないモネ。彼が残した 2500 通を超える手紙や彼自身の言葉を 通して、今まで知られていないかったモネの一面に迫る。モネは印象派を生み出す傑作を描いた画家であると同時に、19 世紀~20 世紀初頭の画家たちにもっとも影響を与えた画家の一人だ。本作は西洋美術史上最も愛されたモネが活躍した時 代の背景を、象徴的に新鮮かつ繊細に描き出す。

クロード・モネ『印象、日の出』,1892年

 

『フィンセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点』(Vincent van Gogh: A New Way OfSeeing)

長い間おそらく他のどのアーティストよりも、ゴッホの人生は人々のイマジネーションを深く刺激し続けてきた。 ゴッホの悩ましくも輝ける人生を深く掘り下げ、彼の人生を一緒に味わえる本作では、ゴッホ美術館のキュレー ターの独占インタビューも盛り込み、今までにないゴッホの世界を紹介している。 

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)『ひまわり』1889年 アルル(C)ファン・ゴッホ美術館

 

『ミケランジェロ:愛と死』(Michelangelo: Love and Death)

ヨーロッパ各地の製図室から、バチカン、ローマ、フィレンツェの美しい教会、美術館を巡り、ミケランジェロ の波乱の人生を追体験できる、ルネサンスの巨匠に捧げる作品。ミケランジェロ本人の言葉や専門家の解説によ り、ミケランジェロが残した傑作を通じて彼の謎めいた人生に迫る。

『ダヴィデ』アカデミア美術館 (R)デビッド・ビッカースタッフ

すでに、ヨーロッパやアメリカなどの海外では「Exhibition on screen」というシリーズ名で、これら3作品とも上映済み。この3作品以外にも、ルノワールやセザンヌ、フェルメール、ボスといった巨匠達のドキュメンタリーも公開済みのラインナップに入っています。今回の日本での上映が好評であれば、3作品以外の作品も追加で公開されるかもしれません。

骨太のアートドキュメンタリー

春の上映を終えて次は今秋の上映を待っている第1弾『ミケランジェロ:愛と死』を例に、『アート・オン・スクリーン』シリーズがどういった作品なのかお伝えします。

一度通して鑑賞した感想としては大変手堅くアカデミックにまとめられている印象を持ちました。ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)は、「絵画」「彫刻」「建築」「詩」など、多岐にわたる分野において非常に傑出した実績を持つ、紛れもない天才芸術家です。本作では、そのミケランジェロの代表作が収められている各地の美術館や協会などを巡りながら、「ピエタ」「ダヴィデ像」「システィーナ礼拝堂天井画」といった、誰もが知る名作を重点的に取り上げていきます。ミケランジェロの人生の中でなぜその作品が制作されたのか、背景や経緯を踏まえた上で、研究家たちのインタビューを交えながら、彼の謎めいた人生や業績を丁寧に紐解いていくのです。

上映時間は約90分とドキュメンタリーとしては比較的長尺であり、非常に骨太で、硬派なドキュメンタリーなので、「映画を鑑賞している」というより、展覧会を音声ガイド付きでサテライト鑑賞しているようにイメージしていただければわかりやすいでしょう。特に、名作とされる「ダヴィデ像」や「システィーナ礼拝堂天井画」などは、ゆっくりとしたカメラワークで、かなりアップになるまで作品に近づいてくれます。また、日本人にはあまり知られていないエピソードや作品も紹介されており、新しい視点で巨匠たちの作品を深く読み解いていこうとする「アート・オン・スクリーン」のコンセプトを感じることができました。

今秋、三作品の集中上映も

現在は第二弾として『私は、クロード・モネ』が上映中(東劇は8月4日まで)、今秋10月には第三弾となる『フィンセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点』が上映されます。さらに11月16日以降は三作品が全国のユナイテッドシネマ系列であらためて上映される予定です。

映画館で勉強?

ところで、一点気がついたのですが、こういった真面目なアートドキュメンタリーでは、メモを取りながら鑑賞したくなる、ということです。ですが、上映中は真っ暗なのでしっかりメモを取るのは至難の技。映画を通して得た学びや気づきを、忘れずに全部持ち帰りたい人のために、アートドキュメンタリー映画では、完全に室内灯を消さなで、手元でメモを取れるようにするのも悪くはないのではないかと感じました。

爆音上映や応援上映が一般化しつつある昨今、ノートを取るために室内の照明を完全に落とさない “研究上映” や “勉強上映” があってもいいと思いませんか?

 

【作品情報】
『私は、クロード・モネ』(2017年/約90分)
監督:フィル・グラブスキー
◯2018年8月3日まで上映中(東劇)
◯2018年11月16日以降、全国のユナイテッドシネマで順次公開

『フィセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点』(2015年/約90分)
監督:デイビッド・ビッカースタッフ
◯2018年10月6日公開予定(東劇、ミッドランドスクエアシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹)
◯2018年11月16日以降、全国のユナイテッドシネマで順次公開

『ミケランジェロ:愛と死』(2017年/約90分)
監督:デイビッド・ビッカースタッフ
◯2018年11月16日以降、全国のユナイテッドシネマで順次公開

公式サイト:http://artonscreen.jp/

かるび

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メーカー、IT企業で勤務後、41歳にして1年間のサバティカル休暇へ突入。現在は、ブロガー&Webライターとしてアートや映画について主催ブログ「あいむあらいぶ」(http://blog.imalive7799.com/)にて日々見聞きした出来事を書き綴っています。

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