アート

しとやか人形にひとめ惚れ。与勇輝の創作は「存在力」がすごい!『パリ凱旋・傘寿記念 与 勇輝 創作人形の軌跡』

初雪の朝、紅に色づく頰は、ぷにぷにと柔らかそう!人形のような人間…間違えた、人間のような人形です。こんなお人形が家にいてくれたら、現実の厳しさを忘れられそう。(26歳独身女性の感想)

申し遅れました。弊職は「アートの定理」という美術ブログを運営する、アラサー孤独ハイテンション美術ブロガーです。[楽活]読者の皆さん、はじめまして。

はじめに紹介したこの人形は、世界的な人形作家、与勇輝(あたえ ゆうき)さんの「初雪」(1996年)です。与さんの80歳を記念して、50年に渡る創作活動を振り返る展覧会が行われています!

人形の内側から滲み出る「存在力」

「徹子の部屋」で黒柳徹子さんが大絶賛されていた「夕子」も美しく静かに佇んでいます。

与勇輝「夕子」(2015年)

髪も瞳も唇も、浴衣のしわも、指の曲がり方も。しっとりした生気を感じます。頭の先からつま先まで完璧な和装美人…こんな美女に生まれてみたかった!

とにかく「存在力」が凄いんです。動き出しそうだし、喋り出しそう。この子の性格も声も息遣いも、無いはずの背景まで、全て伝わってきます。主人公を取り巻く物語がほわほわと脳内に広がりますよね。

驚異のバランス

与勇輝「戯れ」(2015年)

何とも自然に蝶々と戯れる少女。洋風の少女人形も、与さんの守備範囲なのです。

今、「この人形、本体を外側から支えているんでしょ?」って思いましたよね?違うんだなー! ちゃんと二本足で立っているのです!信じられますか!?お人形なのに二本足で!ねぇ!?人間の骨格と同じような仕組みで自立していますよ!

与さんの観察眼と計算が超絶に完璧すぎる証です。

与勇輝さんって何者!?

超ブラボーなマエストロの与さん。子どもの頃から手先が器用で、工作が大好きな少年だったそうです。最初の職は人形ではなく、マネキンの制作でした。ところが10年ほど勤めた頃、マネキンは機械で量産されるようになってしまいます。それからは、オリジナリティーが出せる表現を求め、30歳頃から人形制作にのめり込んだのです。人形制作一筋にやってきたその実力は、日本だけでなく世界からも認められようになります。

2000年にはニューヨークで初の個展を開催、2006年にはパリでも個展を開催しました。2008年のブラジル・サンパウロでの展覧会には10日間で20万人を動員したのです!70歳になる2007年には、ニューズウィーク日本版で「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれました。さらに翌年の2008年には「卓越した技能者(現代の名工)」として厚生労働省大臣から表彰されます。凄い2冠…日本を代表する芸術家と言っても全く過言ではありません。

さらに今回、2018年2月9日~3月3日には2回目となるパリでの個展が開催されました。与さんの人形は、美意識の高いパリジャン、パリジェンヌをも魅了し、個展は大成功!まさに日本が誇る人形作家であり、本展はパリでの成功を祝う凱旋記念展でもあるのです。

お人形の作り方も公開!

制作途中のパーツや道具も展示

マネキン制作の技術が役立っているという、「存在力」に溢れ、二本足で立つお人形たち。一体、どうやって作っているのでしょうか?

「中身を知りたい!」という声に応えるように、制作途中のパーツや道具も展示されています。針金に脱脂綿を巻いて、手袋のように縫い合わせた布の中に詰めるのだそうです。お手手の中から針金が伸びていて、急に現実に引き戻されますね…。中の針金をいじることで、首の角度や関節の曲がりを調整しているのです。0.1度レベルの繊細な針金の曲げで物語が生まれている、と。

こんなに手先の器用な作家がいるのかぁ…。参っちゃうよね、本当。

芸能界にもたくさんのファンが

与勇輝「埴生の宿」(2015年)

会場を訪れた、与作品の大ファンであり本展のオフィシャルサポーターを務めるミュージシャンの藤井フミヤさんが、「生きているようにしか見えない。動き出さないのが不思議なくらい」「人形を見ているだけで、住んでいる町や生活まで想像が広がる」と魅力を語っていました。展覧会に行ったら、同じ感想を抱くこと間違いなしですね。

同じく内覧会に登場した俳優の谷花音ちゃんと寺田心くんも「本物みたい!」と感激。おふたりのように、先入観の無い子どもたちには、どんな物語が見えているのでしょうか?

半世紀に渡る創作の歴史を一挙公開

与勇輝「お庭のすずめ」(1998年)

「布の彫刻」と評される、唯一無二の与作品。1つの人形を作るのに、平均して3週間もの時間がかかる大変な仕事です。本展では150点ほどのお人形が展示されており、隣のミニチュア異空間を覗くかのような体験ができました。1人1人から滲み出る物語を、あなた自身の心で受け止めてみてくださいね!

【展覧会情報】
『パリ凱旋・傘寿記念 与 勇輝 創作人形の軌跡』

[東京展]
会期:2018年3月21日(祝・水)~4月10日(火)
会場:松屋銀座8階イベントスクエア(中央区銀座3-6-1)
開催時間:10:00~20:00 ※最終日は17時閉場、入場は閉場の30分前まで

[京都展]
会期:2018年4月25日(水)~5月7日(月)
会場:京都髙島屋7階グランドホール
開催時間:10:00~20:00 ※最終日は17時閉場、入場は閉場の30分前まで

[横浜展]
会期:2018年5月18日(金)~5月28日(月)
会場: 横浜髙島屋ギャラリー<8階>
開催時間:10:00~20:00 ※最終日は18時閉場、入場は閉場の30分前まで
*以降、全国百貨店・美術館等を巡回予定

詳細は以下のURLをご参照ください。
https://atae-yuki.com/

明菜

明菜

投稿者の記事一覧

美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館めぐりの楽しさを発信。西洋美術、日本美術、現代アート、建築、装飾、ファッションなど、扱うジャンルは多岐にわたる。人間より猫やスズメに好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

関連記事

  1. セログラフィティの達人、Evgeny Chesさんのライブペイン…
  2. 感動のSF体験!「スター・ウォーズ アイデンティティーズ:ザ・エ…
  3. 俵万智からマーダーミステリー。「本棚劇場」だけじゃない、角川武蔵…
  4. 箱根ガラスの森美術館は、ヴェネチア旅行へ行った気分を味わえる異国…
  5. 和紙のある暮らしはいかが?日本橋の老舗「榛原」で言葉を彩るレター…
  6. 【青森】十和田市現代美術館の現代アートが楽しすぎる!りんごカレー…
  7. 横須賀に本格的な穴窯が!縄文土器に魅せられ、アーティスト村で活動…
  8. ベルギーのマグリット美術館へ!ブリュッセル周辺の観光やおすすめス…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

シネマ

アート

おすすめ記事

秋の京都で紅葉狩り!南禅寺・永観堂から慈照寺(銀閣寺)絶景お散歩コースをご紹介!

こんにちは、京都に移住した美術ブロガーの明菜です。寒がりな自宅警備員なので、おうちでぬくぬくしたい…

やきもの好き必見の有田陶器市!秋の有田陶磁器まつりをたくさんの写真で紹介!陶器市の攻略法解説も

みなさん、やきものといえばどこを思い浮かべますか?日本全国、様々なやきものがあり、有名なと…

地元密着型の老舗映画館!横浜『シネマ・ジャック&ベティ』の魅力に迫る!

『シネマ・ジャック&ベティ』は、横浜・若葉町にあるミニシアター。映画ファンはもちろんのこと…

自宅でも再生可能?!美術展で増える「スマホ音声ガイド」の特徴や活用方法を徹底解説します!

突然ですが、みなさんは美術館や博物館に行った時に音声ガイドを借りますか?「必ず借りる」「よく知…

【群馬県下仁田発】心癒す音色を奏でるオルガニートオルゴール「GARYU雅流(がりゅう)」

群馬県甘楽郡下仁田町。自然あふれるのどかな町で今日もオルガニートオルゴールの音色が流れています。「…

PAGE TOP