上野公園内にある各文化施設が連携して行う「文化の杜の音めぐり2021」がオンライン配信されます。
楽活編集部では、2021年2月26日(金)から2021年3月31日(水)まで公開される動画を拝見。これから視聴される方に向けて動画の見どころと感想をまとめました。
「文化の杜の音めぐり」って?

「文化の杜の音めぐり」とは、東京文化会館を起点に、上野公園内にある6つの文化施設(東京国立博物館、国立科学博物館、東京都美術館、東京文化会館、上野の森美術館、旧東京音楽学校奏楽堂)を回遊して、演奏を楽しみながら各館が発信する文化・芸術にふれあうスペシャルコンサート。
【文化の杜の音めぐり2021 公式サイトはこちら】
2020年はコロナの影響で開催が一時危ぶまれたものの、各館とも2日間で100名以上が来場する盛況だったそう。
コロナ禍の現状を受けた新たな取り組みとして、「文化の杜の音めぐり2021」では上野公園内にある上記6館をイメージした音楽を、各文化施設で撮影した映像とともに配信する運びとなりました。通勤通学や夜のリラックスタイムなど、一日のうち好きなタイミングで楽しめるのは、動画配信ならではの嬉しいポイントですね。
♪ クラシック音楽が好き
♪ 博物館や美術館によく行く
♪ コンサートに行きたくて仕方ない
♪ 良質な音楽を好きなときに楽しみたい
いずれかひとつでも該当する方にとって、「文化の杜の音めぐり2021」はまさに必見(必聴?)のコンテンツと言えるでしょう。
東京音楽コンクール入賞者が奏でる珠玉の演奏が無料で楽しめる!
「文化の杜の音めぐり2021」の出演者は、東京音楽コンクール入賞者を中心に構成された合計9名。
まずは、こちらがピアノソロの秋山紗穂さん(※)

弦楽四重奏は、ヴァイオリンの篠原悠那さん(※)・吉江美桜さん(※)、ヴィオラの中恵菜さん、チェロの上野通明さん(※)



木管五重奏は、オーボエの副田真之介さん(※)、フルートの河野彬さん、クラリネットの須東裕基さん、ホルンの藤井春香さん、ファゴットの石井野乃香さん

(※)は東京音楽コンクール入賞者
東京音楽コンクールとは、東京文化会館、読売新聞社、花王株式会社、東京都による、芸術家としての自立を目指す可能性に富んだ新人音楽家の発掘と、育成・支援を目的として毎年開催されているコンクールです。
上野の地で、栄えある賞に選ばれたフレッシュな音楽家たちは、上野公園内のシンボルともいえる6館をどのように表現されるのでしょう。
上野の森美術館✕ドビュッシー
トップバッターは、ガラス張りの建物が印象的な上野の森美術館。白を基調とした展示室内で奏でられるのは、ドビュッシーの小組曲『小舟にて』『行列』『バレエ』。ピアノで演奏されることの多い楽曲ですが、木管五重奏になると雰囲気がガラリと変わります。穏やかで柔らかいハーモニーは、水面の反射光や行列に並ぶ人々の軽やかな足取りのイメージに重なります。暖かい日差しが降り注ぐ昼下がりに聴きたい、軽やかな気持ちになれる演奏でした。

【上野の森美術館 公式サイトはこちら】
https://www.ueno-mori.org/
東京文化会館✕ベートーヴェン
上野公園改札を出てすぐにある、モダニズム建築の巨匠として知られる前川國男(まえかわくにお)が手がけた東京文化会館。
ピアニストの秋山紗穂さんによる、ベートーヴェンの中期の最高傑作として知られるピアノソナタ第23番ヘ短調op.57『熱情』より第1楽章の緩急のある力強いダイナミックな演奏が、重厚感と存在感がありながらも不思議と威圧感を感じさせない空間とマッチします。
ひしひしと伝わる激しい感情に気持ちが吸い寄せられていき、演奏が終わった時には緊張のゆるみから思わず溜息がこぼれました。

【東京文化会館 公式サイトはこちら】
https://www.t-bunka.jp/
国立科学博物館✕L.アンダーソン
大人から子どもまで、幅広い年齢層に親しまれている国立科学博物館。
L.アンダーソンの楽曲の演奏場所に選ばれたのは、恐竜や動物の骨格標本がひしめく地球館。前半の『忘れられし夢』では地球誕生から現在に至るまで気の遠くなるような時の流れを感じさせるようなゆったりした雰囲気だったのが、『踊る子猫(ワルツィング・キャット)』に入ると一転。小気味よいテンポは、興味のあることにまっしぐらといわんばかりに、あちこち動き回る子猫さながら。2曲のコントラストがとても鮮やかで、個人的に一番好きな演奏です。

【東京国立科学博物館 公式サイトはこちら】
https://www.kahaku.go.jp/
東京国立博物館✕バッハ
上野について、博物館について話すとき、欠かすことのできない東京国立博物館。
訪れるたび「ただいま」と言いたくなる場所です。穏やかな微笑みをたたえた仏像が展示されている東洋館の静寂に、弦楽四重奏によるJ.S.バッハ『G線上のアリア』が優しく染みこみます。
聴き終えた後にこみ上げてくるのは、静かな感動というのでしょうか。仏像とクラシックの組み合わせと聞いて最初は想像がつかなかったのですが、これはアリですね。思いもよらなかった新発見です。

【東京国立博物館 公式サイトはこちら】
https://www.tnm.jp/
東京都美術館✕リスト
アートへの入り口をテーマに、誰でも気軽に訪れることのできる存在として活動を続ける、東京都美術館。あらゆるジャンルの芸術の展示を取り扱い、訪問するたび違った顔を見せてくれる、魅力あふれる美術館です。
こちらで演奏されるのは、19世紀ロマン派を代表する作曲家リストによる『愛の夢第3番』。
ピアニストの秋山さんが奏でる音色は、古今東西の人々の胸に灯される、あるときは激しく燃え上がり、またあるときは周囲を温め照らし出す、決して絶えることのない芸術への愛情を連想させます。沈む夕日を見ながら聴き入りたい、しっとりとした風情のある演奏です。

【東京都美術館 公式サイトはこちら】
https://www.tobikan.jp/
旧東京音楽学校奏楽堂✕ハイドン
ラストを飾るのは、旧東京音楽学校奏楽堂。滝廉太郎、山田耕筰、三浦環など、日本の音楽史をたどる上で欠かすことのできない偉人を数多く世に送り出した、本邦における音楽活動の中心地的存在です。
今回セレクトされた中では最も重厚さを感じた、ハイドンの最高傑作弦楽四重奏第77番ハ長調『皇帝』より第1楽章が演奏されます。のびやかかつリズミカルな音色が重なり合いクライマックスへ向かう様は、芸術と自由に触れ合えることの喜びと、明日へと一歩踏み出す力強さにあふれています。ちなみにドイツでは、第2楽章は国歌として親しまれているそうです。

【旧東京音楽学校奏楽堂 公式サイトはこちら】
https://www.taitocity.net/zaidan/sougakudou/
目と耳で楽しみ、文化の底力を肌で感じるひとときを
日本を代表する文化芸術の拠点を、クラシックのプロが音楽で案内する「文化の杜の音めぐり2021」。音楽と映像の世界にじっくり浸るのもよいですし、動画の感想を家族や友人と語り合うのも楽しそうですね。
これまで上野の文化施設を訪問する機会が少なかった方でも、音楽と映像によるイマジネーションを存分に楽しんでいただけるのではないかと思います。
個人的には、良質なクラシックと各文化施設の映像によるコラボレーションは新鮮な発見の連続で、各館を訪問した時に感じる「今回はどんな展示を見られるのかな?」という気持ちと胸の高鳴りを思い出しました。
特に昨年からコロナの影響で窮屈な時間を過ごしたことで、普段の生活のなかでいかに文化芸術に元気づけられていたかを痛感したこともあり、ことさら染み入るものがありました。
春の訪れを待ちわびながら珠玉の音色に包まれる至福のひととき。皆さまにも楽しんでいただけたら嬉しいです。
開催概要
名称:「文化の杜の音めぐり2021」(ぶんかのもりのおとめぐり2021)
配信期間:2021(令和3)年2月26日(金)〜3月31日(水)23:59まで
参加方法:動画配信プラットフォーム上によるオンライン配信
※配信中の動画は、下記URLよりご視聴可能です
※各動画に関する詳細は下記をご確認ください
※都合により内容が変更となる場合があります。
特設サイトURL: https://oto-meguri.ueno-bunka.jp/
視聴:無料
主催:上野文化の杜新構想実行委員会、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
※本事業は令和2年度 文化庁国際文化芸術発信拠点形成事業です。
【参考URL】
https://oto-meguri.ueno-bunka.jp/
https://www.t-bunka.jp/tmc/about.html
https://ueno-bunka.jp/

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