アート

「シャルル=フランソワ・ドービニー展」

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の
「シャルル=フランソワ・ドービニー展」に行って来ました。


https://www.sjnk-museum.org/

新宿副都心高層ビル群の中、42階にある東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催される展覧会も「ドービニー展」「レオ・レオーニ展」「FACE展2020」と残すところ3展となりました。(新しい美術館は2020年5月にビル敷地内に移転オープンする予定です。)

沢山の思い出が詰まった美術館が無くなりはしませんが、別の建物になってしまうのはやはり寂しいものがあります。


シャルル=フランソワ・ドービニー《池の風景》1847年頃 油彩/板 29.7×44.8㎝ ランス美術館 ©Christian Devleeschauwer

馴染んだビル内の美術館で行われる最後の西洋美術館の展覧会とあってでしょうか「ドービニー展」は思っていた以上に多くの人で賑わっていました。

失礼な言い方ですが「ドービニー展」を開催していると知っても「よし!すぐ観に行こう!!」とはならないはず。引きの弱い展覧会だと勝手に思い込んでいました。


シャルル=フランソワ・ドービニー《オワーズ河畔》1865年頃 油彩/板 32.2×56.8㎝ ランス美術館 ©Christian Devleeschauwer

その理由としてドービニーの描いた作品はどれも同じような風景画ばかりで変化に乏しいとの誤解があるからです。実際に展覧会会場へ行ってみるとそんなことはないことよく分かります。

なるほどもっとも同じような水辺の風景がメインであり、シスレーのような明るさはなく地味な印象の作品が並んでいます。

しかし、彼はそれを意図して描いたのです。


シャルル=フランソワ・ドービニー《ポルトジョアのセーヌ川》
1868年頃 油彩/板 38.5×67㎝ フランス、個人蔵
©Christian Devleeschauwer

こちらは少し印象派を意識してタッチを荒く、色調を明るく描いた作品ですが、こうなるととたんに魅力が薄れてしまうのです。やはりドービニーはドービニーらしさを貫徹した作品でないと魅力が低減してしまいます。

ここであらためて彼の生没年を確認しておきましょう。→シャルル=フランソワ・ドービニー(1817~1878)

「バルビゾン派から印象派への架け橋」とのサブタイトルはまさに言い得て妙。ドービニーを紹介するのにこれ以上シンプル且つ正確な表現はありません。

ウジェーヌ・ドラクロワ (1798~1863)
カミーユ・コロー(1796~1875)
ジャン=フランソワ・ミレー(1814~1875)
エドゥアール・マネ(1832~1883)

ポール・セザンヌ(1839~1906)
クロード・モネ(1840~1926)
オーギュスト・ルノワール(1841~1919)
ファン・ゴッホ(1853~1890)


https://youtu.be/f-zuwojwCac
【東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館】「ドービニー展」紹介アニメーション

この紹介動画はとても良く出来ていて予習にピッタリです。

基本的にドービニー作品で構成されていますが、必要に応じてバルビゾン派の作品なども並べて展示してあり、日本で初の「ドービニー展」として申し分のない内容です。


カミーユ・コロー《地中海沿岸の思い出》1873年頃 油彩/カンヴァス
57×73.5㎝ ランス美術館 ©Christian Devleeschauwer

展覧会の構成は以下の通りです。

序章:同時代の仲間たち
第1章:バルビゾンの画家たちの間で(1830~1850)
第2章:名声の確立・水辺の画家(1850~1860)
第3章:印象派の先駆者(1860~1878)
第4章:版画の仕事


フィンセント・ファン・ゴッホ「ドービニーの庭」1890年
ひろしま美術館蔵
※「ドービニー展」には出展されていません。

バーゼル市立美術館やゴッホ美術館にも同じ庭を描いた作品が残されています。この庭こそドービニーの家の庭なのです。ゴッホが敬愛して止まなかったドービニーを亡くなる年に描きました。

バルビゾン派や印象派の展覧会に1,2枚紛れている程度の画家と思っていたら大間違いです。事実フランス国内ではドービニーの評価は美術史的に非常に高いものがあるそうです。


シャルル=フランソワ・ドービニー《ボッタン号》
1869年頃 油彩/カンヴァス 171.5×147㎝ フランス、個人蔵
©Archives Musées de Pontoise

この船に乗り込み、川を自由自在に行き来して水辺の風景を数多く描いたのです。有名なモネとルノワールがそれぞれ描いた「ラ・グルヌイエール」はドービニーをリスペクトした作品でもあるのです。

「クリムト展」とは違った意味で、まとめてドービニー作品を借り集めることは非常に難しいそうです。知名度の低さと難易度の高さの理由からこれまで展覧会が開催されませんでしたが、ようやく「ドービニー展」が実現しました。

待ってました!との声は上がらないかもしれません。でも、この展覧会を観ないと西洋絵画史のある部分が欠落したままになってしまいます。騙されたと思って新宿まで行ってみて下さい。

「シャルル=フランソワ・ドービニー展」は6月30日までです。是非!


「シャルル=フランソワ・ドービニー展」

会期:2019年4月20日(土)~6月30日(日)
会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
(東京都新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階)
https://www.sjnk-museum.org/
主催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、読売新聞東京本社
協賛:損保ジャパン日本興亜
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協力:エールフランス航空
監修:ランス美術館 Exposition produite et gérée par le Musée des Beaux-Arts de la VILLE DE REIMS.
企画協力:ブレーントラスト


シャルル=フランソワ・ドービニー《ブドウの収穫》
1863年頃 油彩/板 24.5×42.3㎝ フランス、個人蔵
©Christian Devleeschauwer

美術館移転準備のため休館
休館日:2019年9月30日(月)~ 2020年2月14日(金)

※本記事は、ブログ「青い日記帳」Takさんの許可を得て以下の記事を転載させていただいたものとなります。
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5495

 

Tak

Tak

投稿者の記事一覧

美術blog「青い日記帳」主宰。『カフェのある美術館』(世界文化社)『美術展の手帖』(小学館)編集。『フェルメールへの招待』編集・執筆。ぴあ、goo連載。『文藝春秋』書評寄稿など、各種講演・執筆活動など、幅広く活躍中。

関連記事

  1. 【趣味れーしょん美術館】#003:ミラクル エッシャー展はクルク…
  2. 金魚が日本橋で乱舞?『アートアクアリウム 2018』で過ごす夏
  3. 「東京 TOKYO / MIKA NINAGAWA」で蜷川実花さ…
  4. 【趣味れーしょん美術館】#001:横山大観展は極端アートがぞろぞ…
  5. オトナにうれしい夜の水族館で、イルカとデジタルアート花火に興奮!…
  6. 【趣味れーしょん美術館】#005:無限ループ探検物語『小瀬村真美…
  7. 大阪でもチームラボ!千住博と「水」をテーマに異色のコラボ:千住博…
  8. 若冲の悩みと人生。新発見された作品にも出逢える。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

シネマ

アート

おすすめ記事

首都圏から気軽に行ける!山梨県の「芸術の森公園」でアートの秋を満喫してきました!

山梨県甲府市の観光スポットの一つに芸術の森公園があります。公園内には、山梨県立美術館と山梨…

9月19日から開催!藝大アートプラザ人気No.1の展覧会「藝大の猫展2020」での注目点とは?展覧会直前まとめ!

※本記事は、藝大アートプラザ様のご厚意にて、以下の記事を転載させていただいたものとなります。…

清春芸術村は素敵な建物に出会えるアーティストコロニー!文豪やアーティストの息遣いが感じられました!

素敵な建物に出会える「清春芸術村」(きよはるげいじゅつむら)へ行ってきました!廃校となった清春小学…

上野の美術館帰りにオススメ!アイリッシュパブ「The World End」のクラフトビールがバカ旨でした!

唐突ですが、美術館や博物館で真剣に見た後って、お腹へりますよね?その証拠に、今ミュージアム…

アントワープの見どころを紹介!ルーベンスとダイヤモンドの街【明菜のオランダ・ベルギー紀行 Vol.5】

こんにちは、海外大好き美術ブロガーの明菜です。突然ですが、ベルギーといえば皆さんは何をイメージしま…

PAGE TOP