アート

ファッションに息づくカルチャーを読み解こう!~「ファッション イン ジャパン 1945-2020 ー流行と社会」から~

現在、国立新美術館にて開催中の『ファッション イン ジャパン 1945-2020 ー流行と社会』。

本展では、第二次世界大戦中に普及したもんぺから未来に向けられたサステナブルな装いまで、戦後のファッション史を総括。衣服やアイデアを創造するデザイナーサイドと、ムーヴメントを生む消費者サイドの双方向から、媒介するメディアも参照して戦後の日本におけるユニークな装いの軌跡を概観することができます。

これまでまとまって紹介されることがなかった日本のファッション史を、洋服を軸にして黎明期から最先端の動向まで、社会的背景に合わせて紐解いていく画期的な展覧会で、早くもSNSを通じて大きな話題となっています。

本記事はファッションから読み解いた映画や音楽、アートなどの要素を紹介していきたいと思います。

映画とファッション 

本展の第1章『映画とファッション』のコーナーでは、『狂った果実』(日活・1956年公開)など、映画作品の登場人物たちが着用していた衣装が展示されています。

1950年代半ばから60年代初頭にかけて、日本映画は「第二黄金期」を迎えます。当時、人々にとって最も影響力のあったメディアは映画だったのです。毎週のように新作が封切られ、数多くのスターが誕生し、彼らが口にしたセリフや劇中歌、そして衣装が人々の暮らしを楽しませていたそうです。

全盛期に比べると影響力は低下しているものの、現代でも映画のメディアとしての影響力は健在。たとえば、現代においては、第6章『ゴシック&ロリータファッション』のコーナーで見られるように、『下妻物語』(2004年公開)や『NANA』(2005年公開)の影響から、ゴシック&ロリータというスタイルが認知され、Kawaiiファッションとして独自の文化を形成していきました。

第4章の『東京コレクション、 DCブランド隆盛』で紹介されている、1970年代〜80年代に活動を開始した「MILK(ミルク)」や「PINK  HOUSE(ピンクハウス)」から、ロマンティックで少女的なスタイルから源流を見つけられると同時に、時代とともに変化していったKawaiiを感じることができるでしょう。

音楽とファッション

第3章『世界への挑戦』の山本寛斎による前衛的なデザインを集めた展示の中には、カウンターカルチャーの旗手であったデヴィッド・ボウイの写真が展示されています。

彼から「ジギー・スターダスト」と「アラディン・セイン」のツアー用のステージ衣装の依頼を受けた山本は、歌舞伎の「引抜き」を応用して一瞬にして下に着ている衣装が現れる《トーキョーポップ》や、着物の柄と柄とを重ねる着方をワンショルダーのニットでアレンジした《出火吐暴威》などを提供。

展示されている衣装を見ると、歌舞伎の華やかな色彩や様式美から着想を得て、日本独自の美学が衣装とともに世界へと発信されていることが感じられるでしょう。

また、第4章『アメリカへの波及』で紹介されている「arrston volaju(アーストンボラージュ)」は、既成概念を打ち破る前衛的なデザインによって、国内のみならずアメリカのアートシーンから注目を集めました。

会場では、デザイナーの佐藤孝信と深い親交があったジャズ・トランペッターのマイルス・ディヴィスが、さまざまなポージングをした写真が展示されています。佐藤は彼のステージ衣装やグラミー賞授賞式の際の衣装を手掛けてたそうです。

続く、第6章『技術の革新と「第二の皮膚」』で紹介されている「SOMARTA(ソマルタ)」は、マドンナレディーガガが衣装として着用したことでも知られ、2018年にはMoMAのコレクションに所蔵されるなど、国際的な注目度も高いブランドです。

コンピュータープログラミングを活用して生み出されたのは、伸縮性に富んだ丈夫な無縫製ニットや、タトゥーのような刺繍、メタリックな箔加工を施したものなど様々。身体を美しく見せながら皮膚の拡張をイメージしたモデルを発表しています。

アートとファッション

第6章『2000年代にパリで発表を開始したデザイナーたち』のコーナーで紹介されている「Maison MIHARAYASUHIRO(メゾンミハラヤスヒロ)」では、ブランドを代表するアイテムになった、だまし絵の技術を用いた遊び心溢れるアイテムがご覧になれます。

また、第7章より『「ストリートファッション」の再解釈』のコーナーにある「sacai(サカイ)」は、ベーシックでクラシカルな全く異なるアイテム2つを組み合わせる「ハイブリッド」なスタイルとして、現代のファッションに新しい潮流を生み出し、海外のファッション関係者から熱い視線を集めているブランド。

展示されている2019秋冬コレクションは、現代アートシーンにおいて、アメリカの抽象表現主義を代表するジャクソン・ポロックのスタジオとコラボレーションしたアイテムです。まるでペンキが飛び散ったような斬新なデザインは、ポロックが自身のスタジオの床に残したペイントの写真を、サカイのアイテムにカスタムプリントしたものだそうです。

文学や漫画とファッション

左 ボディス、スカート│川久保玲│コム デギャルソン│2020年春夏│京都服飾文化研究財団 真ん中 ボディス、スカート│川久保玲│コムデギャルソン│2020年春夏│京都服飾文化研究財団 右 トップ、パンツ、靴下、ブーツ│川久保玲│コムデ ギャルソン│2020年春夏│京都服飾文化研究財団

第8章『ジェンダーレス』のコーナーの「COMME des GARSONS(コム デ ギャルソン)」では、ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』の物語から着想を得て、ジェンダーという今日的問題とともに、時間という普遍的なテーマを扱った作品がご覧になれます。

さまざまな時代の様式がミックスされた男性服でも女性服でもない展示衣装から、性と時間を超えて、人は自分らしく、自由に生きられるのかという、生きることへの根元を見つめる問いを投げかけれていると感じるでしょう。

同章の『「未来」のオートクチュール』のコーナーの「YUIMA NAKAZATO(ユイマナカザト)」では、手塚治虫『火の鳥』からインスピレーションを受けた2020年春夏コレクションに要注目。土に還る合成タンパク質素材に加工を施し、生地を裁断せずに立体的な構造を生かして、不死鳥のように飛翔感のあるイメージを作り上げています。

最先端の技術をファッションに活用しながら、サステナブルなオートクチュールの可能性について追求しています。

最後に…

本記事はファッションに息づく映画や音楽、アートなどを紹介してきましたが…展示衣服から読み取れる社会背景はもちろん、他分野のカルチャーの要素とも掛け合わさって、時に大きなムーブメントとなって、時代を築き上げてきたことがわかります。

私たちの身近にあるファッションから、音楽や映画といった隣接するカルチャーとの兼ね合いを発見し、いろんな要素を紐解いていくと、裏側に秘められた創造性やメッセージから、新たな視点でファッションを楽しめるかもしれません。

あなたなりの視点で、ぜひ他カルチャーとのコラボレーションを見つけてみてくださいね。

展覧会基本情報

ファッション イン ジャパン 1945-2020 ─流行と社会

会期:2021年6月9日(水)~9月6日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22−2
開館時間:10:00~18:00
※展示室への閉館の30分前まで
※金・土曜日は20:00まで
休館日:火曜日
公式HP:https://fij2020.jp

新 麻記子

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。

日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に…#日本酒がある暮らしをコンセプトにしたメディア&コミュニティ『酒小町』の編集長をつとめるほか、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

Instagram:@shin_makiko

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