アート

ようこそ《グラン・ブーケ》の食卓へ。『ルドン−秘密の花園』(三菱一号館美術館)

三菱一号館美術館において7年ぶりとなるオディロン・ルドンの作品をテーマとした企画展『ルドン-秘密の花園』展が開催されています。会期は5月20日(日)まで。本展はルドンが描いた「植物」に焦点を当てるという、前例のないユニークな展覧会となっています。印象派の画家達と同世代でありながら、自身の内面世界を深く掘り下げることによって、独自の神秘的・幻想的な作風へと到達した個性派作家だったルドン。その画業は、今もなお世界中のアートファンを魅了し続けています。

本展では、出品作約90点のうち、実に半数以上がオルセー美術館、ニューヨーク近代美術館、シカゴ美術館など、海外の有名美術館の所蔵作品を集めた、まさに三菱一号館美術館の総力を結集した本格的な回顧展となっています。この見逃せない「ルドン-秘密の花園」展について、4つの見どころを紹介していきます。

見どころ1:「グラン・ブーケ」とドムシー男爵家の食堂を飾った15点が一堂に

《グラン・ブーケ(大きな花束)》(1901年 パステル/カンヴァス 三菱一号館美術館蔵)

2011年、フランス・ブルゴーニュの古城、ドムシー城に眠っていたルドンの巨大なパステル画「グラン・ブーケ」が三菱一号館美術館の収蔵品となって以来、本作品は同館の「顔」として大切に扱われてきました。

本展では、美術愛好家だったドムシー男爵の依頼により、「グラン・ブーケ」と共に連作作品として描かれ、かつてはドムシー城の食堂の壁面を彩っていたオルセー美術館所蔵の15点の装飾画とあわせ、当時の壁画16点(18点のうち2点は喪失)を配置し、再現する形で展示されています。ルドンの作品と言えば、比較的小品をイメージしがちですが、本展で再現展示された壁画の大きさには驚かされます。

3F展示室に再現されたドムシー男爵の城館の食堂壁画

見どころ2:画業前半を占めた「黒の時代」

《『起源』Ⅲ. 不格好なポリープは薄笑いを浮かべた醜い一つ目の巨人のように岸辺を漂っていた》1883年 リトグラフ/紙(シーヌ・アプリケ)岐阜県美術館蔵(左)と《『起源』II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた》1883年 リトグラフ/紙(シーヌ・アプリケ)岐阜県美術館蔵(右)

華やかな色彩の画家というイメージのあるルドンですが、実はその画業の前半は「黒の時代」と言われ、50代以降に華やかな「色彩の時代」となります。「色彩」とは無縁の「黒」の画家と認知されていたモノクロームな時代には、まるで妖怪のような一つ目、首、怪物といった奇怪な作品を描いていました。これにはボルドーの植物学者・アルマン・クラヴォー(1828-1890)の影響が指摘されています。

アルマン・クラヴォーに捧げられた石版画集『夢想』より

ルドンがクラヴォーから影響を受けたのは植物学だけではなく、ボードレールやポーといった同時代の文学、スピノサやインド哲学になど多岐に渡りました。このことがルドンに神秘的な世界への興味を開かせる土壌となり、1891年に出版された石版画集『夢想』は前年に亡くなったクラヴォーに捧げられました。

見どころ3:ルドンの描いた華やかな植物

《首の長い花瓶にいけられた野の花》1912年頃 ニューヨーク近代美術館蔵(左)と《青い花瓶の花》1912-1914年頃 ひろしま美術館蔵(右)

生まれて間もない長男を亡くした1880年代後半は「黒の時代」に通じる鬱々とした画風の影響を与えましたが、1889年に次男が生まれてルドンの人生は激変し、これ以降、ルドンの画風は明らかに豊かな色彩を得たものへと変貌を遂げます。そして1893年の「グラン・ブーケ」へと至ります。世界各地から厳選して集められた植物画だけが展示された一角は非常に華やかでした。筆者も、時間さえ許せば、1日中ここで佇んでいたいと感じました。また、今回の展覧会では、絵画作品以外にも、肘掛け椅子や屏風絵といった絵画以外の珍しい装飾作品も出展されています。様々な作品を通じて、ルドンの華やかな作品世界を感じてみてください。

オリヴィエ・サンセールの屏風

見どころ4:お洒落なオリジナルグッズ類に要注目!

毎回充実したStore 1894のミュージアムグッズコーナー

三菱一号館美術館のミュージアムショップ「Store 1894」に設けられたグッズコーナーは展覧会ごとにとにかくクオリティが高く、つい手にしたくなるアイテムが数多くあります。今回も、華やかなルドンの色彩世界が味わえる、《グラン・ブーケ》のスカーフをはじめ、数十種類の「秘密の花園」ハンカチーフや、ドムシー城の壁画をモチーフにしたマグネットやクリアファイル、そして、ルドンの生まれ故郷であるボルドーで採れたぶどうで仕込まれたワインなど多数のグッズが揃っています。ぜひ、手にとって見てください。

まさに花園のように壁一面に飾られた数十種類の「秘密の花園」ハンカチーフ

マグネット、クリアファイル、フランス陶磁器、書籍など非常に充実した魅力的なオリジナルグッズの数々

大作「グラン・ブーケ」を中心にドムシー城の食堂へと時空を移動したかのような壁画作品の展示をはじめ、ルドンのキャリア初期から末期まで、様々な作品群と資料94点で特集された、非常に力の入った展覧会です。ぜひお見逃しなく!

展覧会情報:
「ルドン-秘密の花園」
会期:2018年2月8日(木)~5月20日(日)
会場:三菱一号館美術館
住所:〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21時まで)
休館日:毎週月曜日※ただし祝日の場合と、5/14、2/26、3/26は開館
観覧料:一般 1700円 / 大学生・高校生 1000円 / 小・中学生 500円
問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
国立新美術館HP http://mimt.jp
展覧会HP http://mimt.jp/redon

かるび

かるび

投稿者の記事一覧

メーカー、IT企業で勤務後、41歳にして1年間のサバティカル休暇へ突入。現在は、ブロガー&Webライターとしてアートや映画について主催ブログ「あいむあらいぶ」(http://blog.imalive7799.com/)にて日々見聞きした出来事を書き綴っています。

関連記事

  1. 笑って学べる古美術の贋作コメディ!『嘘八百』の意外な面白さとは?…
  2. 【Takのアート入門講座】展覧会を楽しむために、ちょっと知ってお…
  3. 『サントリー美術館 プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて…
  4. 【ミュージアム・プレイリスト】第1回 音楽の印象派『至上の印象派…
  5. 日本映画再興の起爆剤になるか?国立の映画専門美術館「国立映画アー…
  6. 『あなたが選ぶ展覧会2017』中間発表。エントリー結果速報!
  7. 【Takのアート入門講座】無料で「銀ブラアート」しましょう!
  8. 春を感じるような華やかさ。『ヘレンド展 ―皇妃エリザベートが愛し…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

シネマ

アート

おすすめ記事

日本画を体験型展示で楽しむ!『Re 又造 MATAZO KAYAMA』展

画期的な日本画の展覧会『Re 又造 MATAZO KAYAMA』が開催中です。加山又造という…

図録製作秘話もたっぷり聞けたトークイベント「久保佐知恵×おおうちおさむ×中村剛士 サントリー美術館の舞台裏」

2018年3月30日に、「楽活」コラム執筆陣のTakさんがメインパーソナリティを務めたトークイベント…

【趣味れーしょん美術館】横山大観展は極端アートがぞろぞろ!

エーゲ海よりも深い青色の富士山。宝箱を開けた時に出る光のような金の空。その上を歩けそうなほど厚い雲海…

【ミュージアム・プレイリスト】第1回 音楽の印象派『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』

絵画と音楽には、時代ごとの空気感やメッセージに満ちた「物語」があります。美術館で音声ガイドを聴い…

北斎の「内面」に深く切り込んだドキュメンタリー映画『大英博物館プレゼンツ 北斎』

浮世絵は世界的な人気がある、日本美術の代表と言えますが、とりわけこのところの葛飾北斎の人気は特別で、…