アート

女性ならではの独自の着眼点に注目! / 石内都「肌理(きめ)と写真」展(横浜美術館)

最近でこそ蜷川実花のように女性写真家は珍しい存在ではなくなりましたが、以前は、木村伊兵衛、土門拳、篠山紀信、荒木経惟、森山大道…といった、著名な写真家と言えば〝職人気質な男性カメラマン〟というのが一般的なイメージではなかったでしょうか?

そうした男社会の「写真」の世界にあって、アートとしての写真を中心に、独学で写真を撮って40年以上のキャリアを重ね、2014年にアジア人女性として初めて、写真界のノーベル賞と言われている「ハッセルブラッド国際写真賞」を受賞したレジェンドと言える女性をご存知でしょうか。それが、現在、横浜美術館で『石内都 肌理(きめ)と写真』展(〜2018年3月4日)を開催している石内都(いしうち みやこ)氏です。

1977年、個展「絶唱、横須賀ストーリー」で実質的に写真家としてデビューして以来、建物や皮膚そして遺品などに残された記憶や感情のかけらを写真へと強烈に焼き付ける石内の作品は、「記憶の織物」とも評され、世界各地で高い評価を受けています。その評価を世界レベルへと高めたのが、ベネチア・ビエンナーレにも出品されるきっかけにもなった、自らの母親の遺品を作品に収めた作品集「Mother’s」です。また、メキシコからのオファーに応え、内外から高い評価を受けた「フリーダ・カーロの遺品」など、近年も注目作を撮り続けています。

「フリーダ・カーロの遺品」シリーズ

そんな石内作品の良さに最初から気付けなかった筆者が、私なりに見て良かった幾つかの作品を紹介します。

yokohama 互楽荘(1986-87)

Bayside Courts(1988-89)

これらは初期~中期へ移行期にあたる作品群です。横浜時代に撮りためたもので、横浜の古い建物を敢えて白黒で「汚なめに」ざらついた感じで現像したもので、建物の壁面や内部にこびりついたような人々の感情や記憶が蘇ってくるようです。石内都の写真の魅力が凝縮されています。

「絹の夢」(2011年)などの作品が天井高いっぱいまで展示された「絹」の展示室

写真家になる前、多摩美術大学で織りを学んだ石内は染織家を志していたという。そのせいか、彼女の撮る写真には、衣服や様々な生地が非常に多い。撮影可のこの展示室には、まるで抽象画のようにカラフルな服飾を写した写真が、壁一面に大小さまざまに展示されています。一つ一つは全く違う素材や大きさなのに、不思議と妙なリズム感があり、展示室全体で一つの作品のようでもありました。

最後に、紹介するのが、彼女がキャリアの後半に出会い、今後もライフワークとして撮り続けるであろう、広島の被爆者の遺品を撮影した写真群「ひろしま」です。これらは原爆が原因で亡くなった女性たちの遺品として、広島平和記念資料館に寄贈されたワンピースや制服と言った衣服などを被写体に10年前に撮影したのをきっかけとして撮影をはじめたもので、以降も年に一度、一年の間に寄せられた遺品を撮り続けているものです。

「ひろしま」シリーズ

「ひろしま」シリーズ

歴史資料や戦争をテーマとした遺品写真では、モノクロームでときには非常に重苦しい雰囲気が漂いがちな遺品を、可愛く、上品に撮影する石内都の感性は、女性ならではのものを感じました。彼女の撮影した戦争遺品からは、厳しい戦時下においても、日々明るく朗らかに毎日を生きようとした、映画「この世界の片隅に」のすずさんのような女性を思い起こさせるものがありました。

全240枚、非常に見応えのある写真群が並んでいます。ざらついた感触の初期の白黒写真から、持ち主の生活の息遣いがはっきり感じられる遺品を撮影した作品群まで、写真に刻まれた「肌理」から、いろいろな感情を思い起こさせてくれるような、そんな味のある写真が魅力的な写真展です。是非、足を運んでみてください。

グランドキャラリーに展示されている「絹の夢」(2011年)ほか

 

【展覧会情報】
『石内都 肌理(きめ)と写真』
会期:2017年12月9日(土)~2018年3月4日(日)
会場:横浜美術館(みなとみらい)
公式サイト:http://yokohama.art.museum/special/2017/ishiuchimiyako/index.html

かるび

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メーカー、IT企業で勤務後、41歳にして1年間のサバティカル休暇へ突入。現在は、ブロガー&Webライターとしてアートや映画について主催ブログ「あいむあらいぶ」(http://blog.imalive7799.com/)にて日々見聞きした出来事を書き綴っています。

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