アート

麗子ちゃんだけじゃない!『没後90年記念 岸田劉生展』で理解する異才

《麗子肖像(麗子五歳之像)》1918年10月8日 東京国立近代美術館

『麗子』でお馴染みの画家、岸田劉生。美術の教科書に必ずと言って良いほど載っている超有名な画家なので、岸田劉生を知らない人はいないはず。

…ですが、その怪しいほほえみに怖さを感じてしまい、苦手意識がある人もまた多いのではないでしょうか?

展示風景

「怪しい女の子の絵」のインパクトを私たちの頭に焼きつける画家は、2019年に没後90年を迎えます。東京ステーションギャラリーで『没後90年記念 岸田劉生展』が始まりました。

本展は展示替えを含めて172点の作品で構成されています。これだけ多くの作品を見ていると、「麗子」だけではない劉生の素顔が見えてきます。

岸田劉生の人生と作品を読み解くヒントは、次の3つ。

①日付まで書かれた完成年月日
②外からの影響と自己表現
③サインの移り変わり

順番に解説していきますね。

①日付まで書かれた完成年月日

展示風景

最も驚いたのは、劉生が作品のほとんどに完成した年月日を記していたこと。制作年までは記載する画家が多いものの、その先の○月○日まで書く画家はほとんどいません。

本展の凄いところは、ほとんどの作品が制作順に並べられていること!

似たような絵が連続して「このモチーフや描き方を自分のものにしたかったのだなぁ」と理解するところもあり。

はたまた、「これの後にこれ!?その間に一体何の影響を受けたんだ!?」と驚くことも。

②外からの影響と自己表現

展示風景

その「一体何の影響を受けたんだ!?」と驚くタイミングがあるのは、劉生が意図的に画風を変えているから。セザンヌ、ゴーギャン、ミケランジェロ、デューラーなどさまざまな画家の絵を模倣したため、ガラリと印象が変わる瞬間があるのです。

ただモノマネするのではなく、巨匠たちが何を表現するために絵を描いていたのかを学ぶため、模倣を続けた劉生。その筆さばきは「劉生らしさ」を含んで本人の身体に定着したのでしょう。

展示風景

西洋絵画を学んでも東洋の美に着地したり、印象派を学んでも写実に着地したり。幹の太い樹木が数多の細い根っこから養分を吸ってますます太くなるように、劉生の絵画は独自の進化を遂げていきます。

③サインの移り変わり

《道路と土手と塀(切通之写生)》重要文化財 1915年11月5日 東京国立近代美術館

絵の転換点の目印の一つに「サイン」があります。劉生は画風が変わるときにサインを変える傾向があったようで、これに注目して本展を見ると面白さが10倍アップします!

1915年に制作された《道路と土手と塀(切通之写生)》には、劉生の「R」の上に羽根が生えたようなサインが描かれています。通称「羽根R」と呼ぶのだとか。(本作は重要文化財に指定されている有名な作品ですが、サインまでマジマジと見たことがある人は少ないのでは?)

展示風景

それが1918年の静物画では「劉」の一文字を洋風に装飾したサインに変わっているなど、なかなか目まぐるしい変貌ぶり。サインが変わるということは、劉生の心境に変化があったと読み取れるので、サインに着目して本展を見るのもおすすめ!

岸田劉生とは何者だったのか?

《自画像》1921年4月27日 泉屋博古館分館

独自の絵画を作り上げた孤高の画家、岸田劉生。その軌跡は、彼が絵に完成した日付を書き込んだことで、クッキリと浮かび上がってきます。

巨匠の美術を自分の血肉とし、自らの絵画を作り上げたその全貌を、没後90年の節目にご覧ください。

『没後90年記念 岸田劉生展』基本情報

会期:2019年8月31日(土)-10月20日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
休館日:月曜日[9月16日、9月23日、10月14日は開館]、9月17日(火)、9月24日(火)
開館時間:10:00-18:00
※金曜日は20:00まで開館
※入館は閉館の30分前まで
公式HP:http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館めぐりの楽しさを発信。西洋美術、日本美術、現代アート、建築、装飾、ファッションなど、扱うジャンルは多岐にわたる。人間より猫やスズメに好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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