【趣味れーしょん美術館】#005:無限ループ探検物語『小瀬村真美:幻画〜像の表皮』× 原美術館 | [楽活]rakukatsu - 日々楽シイ生活ヲ

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【趣味れーしょん美術館】#005:無限ループ探検物語『小瀬村真美:幻画〜像の表皮』× 原美術館

奇妙ですね、門もドアも開けっぱなしです。

「あの…誰かいますか?」

あなたの声は、邸宅の白い壁に吸収されて消えました。

その家は主人を失い、時間の速度が違う世界に吸収されつつありました。人の気配がしない豪華な邸宅に、なぜか招き入れられるように入ってしまったあなた。玄関を上がり、さっそく最初の部屋へ。

「アートコレクターの家なのかな?」

壁には静物画が飾られています。しかし何も入っていない空の花瓶の絵には、まったく面白みがありません。画家は一体何を描きたかったのでしょうか。

「粧」ジクレープリント 2018年(7点組のうち1点)©Mami Kosemura

カランコロンッ…

意図が分からない不思議な絵画に夢中になり、何かを蹴ってしまったあなた。慌てて足元を見ると、透明な宝石が惰性で揺れています。

ギャラリーの床に無造作に落ちている宝石…?[ギャラリーⅠ]はじまりとおわりの部屋~ドローイングワークと各作品のはじまり、または終わり(きっかけ、または残骸)

宝石と金属…壊れた何かの一部分のよう。ピンと来たあなたは、天井を見上げてみます。そこにあったのは、邸宅のインテリアによく合うシャンデリア。ただし、一部が壊れていました。

天井を見上げてみると、そこには壊れたシャンデリアが。[ギャラリーⅠ]はじまりとおわりの部屋~ドローイングワークと各作品のはじまり、または終わり(きっかけ、または残骸)

この劣化は、コレクターが消えてから今までに経った長い時間を示しています。

コレクターの帰りを待ち続けるインテリアは劣化しながらも、人間より長い時間を生きていくのです。主がいなくなってから今までの間に、どれだけの時が流れたのでしょうか?

他の部屋に行けば、コレクターの人となりが分かるかもしれません。行ってみましょう。コレクターの孤独さを証明するかのような廊下の途中には、大きな展示室が。連作の静物画や肖像画が飾られています。

小瀬村真美「粧」ジクレープリント 2018年(7点組のうち1点)©Mami Kosemura

違う。

違和感に気づくあなた。静物画に見えたこれらは絵画ではなく、写真。1つの花瓶の中で、花が咲いて枯れるまでの一連を写した写真でした。なるほど。最初の部屋にあった空の花瓶は、この連作のはじまりだったのですね。

モデルとなった花は乾き、ヒビの入ったガラスに閉じ込められています。

≪粧≫で使用したオブジェクト 花と器

ここに飾られているのは、写真のような静物画。ならば、肖像画にもトリックがあるはず。近づいて見てみましょう。

小瀬村真美「氏の肖像」ビデオインスタレーション 2004年(5画面のうち1画面)©Mami Kosemura

「え、うわ…まばたきした…」

時間の流れが止まったかのような部屋の中で、肖像画はゆっくりと目を閉じ、また開きます。命が宿っているかのような肖像画に驚いたあなたは、不気味な部屋から逃げるように立ち去ります。

二階へ行ってみましょう。奥の暗い部屋に入るときには、誰かいるのではないかとドキドキします。4つのガラクタが並んだ静物画、ではなく、写真が展示されていました。用途不明の物ばかりで、ますます理解が追いつきません。

小瀬村真美「Objects – New York」ジクレープリント 2016年(うち1点)©Mami Kosemura

隣の部屋では、スローモーションの無音映画が上映されていました。晩餐会のテーブルに皿やポットが落ち、豪華なテーブルセットを破壊していきます。人間の時間とは明らかに違う速度です。壊される物が感じるゆっくりとした時間。

小瀬村真美「Drop Off」ビデオインスタレーション 2015年 ©Mami Kosemura

「あっ…」

確かな悪意を持って壊されるテーブルセットに、つい声を漏らしてしまうあなた。無音の映画を見るしかないあなたの耳に、皿が割れる幻聴が聞こえてきます。恐ろしくなったあなたは、この部屋からも踵を返してしまいました。

結局、二階にも誰もいませんでしたね。コレクターの遺品を通して感じたこの世のものとは思えない時間の流れにクラクラしながら、あなたは最初の部屋に戻ってきました。部屋のインテリアを眺めてあることに気づきます。

「これ…さっきの部屋で見たやつだ!」

動く肖像画は、とある図録の表紙。

左:[ギャラリーⅠ]はじまりとおわりの部屋 右:小瀬村真美「氏の肖像」ビデオインスタレーション 2004年(5画面のうち1画面)©Mami Kosemura

果物は、写真のモデルになっていました。

上:小瀬村真美「Objects – New York」ジクレープリント 2016年(うち1点)©Mami Kosemura、下:[ギャラリーⅠ]はじまりとおわりの部屋

「ということは、これは?これも写真の中にあったの?確認しなきゃ…」

インテリアの中に気になるものを見つけたあなたは、それが作品の中に登場するかどうか確かめずにはいられません。こうしてあなたも、邸宅の中に封じられ、外の世界を忘れていくのです。主のコレクターがそうだったように。

小瀬村ワールドに感化?

小瀬村真美ワールドに感化され、ストーリーテラーになってしまった明菜氏。普段は笑える記事を書くことに専念しているのですが、ごめんなさい、今回は面白いことのひとつも思いつきませんでした! 精進します。

つまり、人間の性格を変えるほどのコラボレーションだったのですよ、小瀬村真美×原美術館の展示。作品が単体で展示される一般的な個展の形式なのに、箱全体で世界観ができていました。雰囲気のデザインが最高。

「小瀬村真美:幻画〜像の表皮」は原美術館で開催中

現代アーティスト、小瀬村真美さんの個展が原美術館で開催されています。バロックの静物画のような構図の写真など、一目で夢中になってしまう、かぐわしいイメージの作品ばかり。写真も映像も、音や匂いまで伝わってくる究極の退廃美なのです。

【展覧会情報】

『小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮』
会期:2018年6月16日(土) 〜 9月2日(日)
会場:原美術館(東京都品川区北品川4-7-25)
休館日:月曜日(7月16日は開館)、7月17日
開館時間:11:00〜17:00(水曜は20:00まで/入館は閉館時刻の30分前まで)
原美術館公式サイト:http://www.haramuseum.or.jp/

明菜

明菜

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「芸術鑑賞はエンタメ!」
を伝えるため、勢いと慣性に任せた自由ブログ「アートの定理」を運営中。展覧会の感想、作品の考察、ミュージアム私小説など、1人井戸端会議を綴る普通のブロガーです。[楽活]では美術館へのハードルを下げ、テンションの上がる記事を書いています。アートのある楽しい生活へのお手伝いを、させてください。

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