アート

あなたはアートの魔法にかかりますか? / レアンドロ・エルリッヒ展 見ることのリアル(森美術館)

「スイミング・プール」で知られるレアンドロ・エルリッヒ氏の作品をこれでもかというほど集めた『レアンドロ・エルリッヒ展 見ることのリアル』が六本木ヒルズの森美術館で好評開催中だ。会期は2018年4月1日(日)まで。

アートファンでなくとも、プールの水の中に人がいて、なぜかまったく苦しそうにしていない不思議な写真を目にしたことがある方は少なからずいるだろう。その作品は金沢21世紀美術館(石川県金沢市)の目玉として常設展示されている、アルゼンチン出身の現代美術作家・レアンドロ・エルリッヒ氏の代表作のひとつ《スイミング・プール》(2004年)だ。


《スイミング・プール》[模型](1999年)部分

今回、森美術館で開催されている本展では「スイミング・プール」に負けないほどの、驚きと発見に満ち溢れたエルリッヒ氏の作品の数々を展示している。本レポートでは展示作品のいくつかを紹介しつつ、本展でどのような楽しさが待っているか一端でも感じ取っていただけたらと思う。
薄暗い板張りになったスロープを通っていくと、まるで港のボードウォークのような場所にたどり着く。最初の作品《反射する港》(2014年)だ。真っ暗な水面に船体を写し込んだボートが何艘も浮かぶ港が地上230mに出現する。これは美術館内に本当に水を張った港を作ったのだろうか? ぜひ暗闇で目を凝らして確かめていただきたい。


《反射する港》(2014年)

これは心霊写真なのだろうか? ガラスの向こうにある廃墟となった教室に半透明の人の姿が浮かんでいる。日本の社会問題である少子化や過疎化の現実と出会ったエルリッヒ氏が《精神分析医の診察室》(2005年)をベースに制作した《教室》(2017年)だ。


《教室》(2017年)

一枚のドアの覗き穴から覗いてみると、本来ならドアの向こうが見えるはずなのが、なぜかそこには無いはずの空間が見えている。《隣人》(1996/2017年)の覗き穴から見えている空間は覗き穴に映し出された映像なのだろうか? 作品プレートにある素材には「金属フレーム、木製ドア、メラミン化粧板、模型 」とあり、ここには映像素材はなく「模型」というキーワードに気づく。あるはずのない空間は一体なにで出来ているのだろう? 作品の事をよく知るには素材を確認するとわかることもある。そこから想像をふくらませるのも楽しい。


《隣人》(1996/2017年)

突然、《美容院》(2008/2017年)の入口の前に立たされる。店舗をのぞくと、施術する椅子の前にある鏡にはこちらの店舗空間が写っている。ごく当たり前の光景だ。いや、ちょっと待てよ。鏡の向こうにいるのは私? いや違う。というか向こうには私がいない。後ろに立っている他の人も鏡の中にはいない。いったいどうなっているのだろう? 仕掛けに気づいた方は、ぜひ2人で同じ服装で行って、この偽りの空間を体験してみていただきたい。


《美容院》(2008/2017年)

最後に待ち構えている作品が本展の目玉となる《建物》(2004年)だ。写真はプレス内覧会の際にスペシャルゲストとして登場した女優の本田望結さん、本田沙来さん姉妹が《建物》を体験している様子だ。今にも落ちそうな望結さんを、望結さんよりも小さな妹の沙来さんが引っ張り上げようとして…。一体どうなっているのかは、ぜひご自分の目でお確かめいただきたい。


《建物》(2004年)


レアンドロ・エルリッヒ氏

本展を訪れたら、ぜひ作品の中に入って作品の一部になる体験をして、エルリッヒさんの魔法にみずからかかってみていただきたい。現代美術の中には本展のように体験したり、作品の中に入り込めるような作品が少なからずある。そうした作品では、ぜひ体験して純粋に楽しむとともに、作品の本質に触れてみるのが作品をよりよく知るコツと心得たい。

【展覧会情報】
『レアンドロ・エルリッヒ展 見ることのリアル』
会期:2017年11月18日(土)~2018年4月1日(日)
会場:森美術館(六本木)
公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/LeandroErlich2017/index.html

千葉 英寿

千葉 英寿

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アート、デザイン、エンタテイメントとテクノロジーに関連したクリエイティビティについて横断的に取材、執筆活動を行っているフリーランス・ジャーナリスト。メディアやアプリの企画を手がけ、ファシリテーションなども行う。また、さまざまな美術館に足を運び、今後の美術館のあるべき姿を考える美術館研究家としても活動。週4日の美術館、ギャラリー通いは当たり前。デジタルハリウッド大学大学院客員教授(2011〜2016)。元書店員(西武百貨店、リブロ)。仙台出身。

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