何か新しいことを始めるにしても、まずは「お金」が必要になりますよね。楽活では、2022年4月から「投資のHANPOプロジェクト」をスタートしました。そこで、第一弾としてまず投資への半歩を踏み出すために手軽に投資を始められる「トラノコアプリ」をご紹介いたしました。
これを読んで「投資を始めてみようかな?」と思った方もいると思います。
そういう方は、ぜひ投資への「はじめの半歩」を踏み出してみましょう。でも、「投資って、今ひとつよくわからない」「なんとなく不安だ」とモヤモヤした気持ちがある方も多くいらっしゃるかと思います。
やはり、投資を初めて半歩を進めるうえで、投資の必要最低限の知識は必要となってきます。
「投資のHANPOプロジェクト」では、投資の基本的な考え方として「長期分散投資」を基本的な方針として取り組んでいきます。投資の考え方には、さまざまありますが、私たちは、投資を始めてみようと思っている方にとって「長期分散投資」がベストな考え方だと考えています。
今後本格的に投資をしていく上で、最終的には自分に合ったスタイルを見つけるのが一だと思います。ですが、「投資の半歩」ですから、まずは投資の一番基本的なスタイル・考え方である「長期分散投資」について理解しておくのが大切です。
そこで、第1回として「長期分散投資」とはどういう考え方なのかをしっかり理解することからはじめましょう。
今回解説していただくのは、ファイナンシャル・プランナーの津村牧人さん。
津村さんは、この道30年以上の金融のスペシャリスト。あらゆる投資手法に精通したプロフェッショナルです。前後編に分けて、インタビュー形式でお送りします。
イタ他ビューでは、以下の4つの項目について順番にお聞きしていきます。
- 「長期」とはいったいどれぐらいを指すのでしょうか?(前編)
- 「分散投資」というのは、具体的になにをどうすることでしょうか?(前編)
- 「長期分散投資」が有利と言われる根拠はなんでしょうか?(後編)
- 「長期分散投資」をスタートするには、なにをどうすればよいのでしょうか?(後編)
一見難しそうに見える投資の仕組みですが、身近な日常生活に置き換えた例え話などを交えながら、わかりやすく解説していただきました!
投資の疑問1:「長期」とはいったいどれくらいの期間を指すのでしょうか?

――津村さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
津村:まず今回は、投資の基本である長期分散投資について、そのイロハを誰でもわかるようにやさしく解説させていただきます。
――ありがとうございます!楽しみです。まず「長期分散投資」って聞いたことがあるような、ないような……という感じですね。正確には、どんな意味があるのですか?
津村:まず、長期分散投資というのは、文字通り「長期」的に資産を「分散」させることです。長期分散投資は、すべての投資の基本なのです。
――でも、「長期」っていったいどれくらいの期間のことを指すんですか?
津村:投資の世界では、一般的に数年から数十年を長期と考えます。ちなみに、長期の反対である「短期」はだいたい数日から数か月を短期、その中間である「中期」は数か月から数年を指す場合が多いですね。ただし、実は〇〇年以上が長期、といった「明確な定義」があるわけではありません。
――それはなぜなんですか?
津村:なぜかと言えば、投資する領域や手法によって、基準が違ってくるからです。これは例えば、休憩時間として10分は長いか短いか、といった話に似ています。10分は仕事の途中休憩としてはちょうどいいでしょうが、お昼休みには短いでしょう。ボクシングのインターバルには長すぎますし、フルマラソンのあとの休憩には短すぎます。投資でも同じように、1年という期間が短いか長いかというのは、投資する領域や手法によって違ってきます。
――なるほど!ケースバイケースなのですね。
津村:例えば、友人が競馬をする資金として100万円を貸すといった場合、1年というと気が遠くなるほど長いように感じられますよね。でも、これも定期預金ならどうですか?これも1つの立派な投資ですが、1年だと短すぎるのでは……?と考える人のほうが多いでしょう。
――確かに!これはわかりやすいたとえですね!では、株式投資の場合の「長期」ってどれくらいの期間が妥当なんでしょうか?
津村:少なくとも3回以上の決算がないと、株式投資では「長期」とは言いません。ですので、一般的には3年以上です。ただし、これもケースバイケースなんですね。たとえば、比較的短期売買をする人の場合、6か月ごとの中間決算✕3回と考えれば、18か月以上を「長期」ととらえることもあるでしょう。その反対に、投資信託の場合では、10年未満は「短期」と考える場合が多いです。投資信託には、商品ごとに信託期間という運用期間が決められていますが、もっとも一般的なものは10年ですので。
――株式投資一つをとっても、投資の種類によって「長期」「短期」の解釈は変わってくるのですね。
津村:その通りです。そして、一般的にリスクの高いもの、変動幅(ボラティリティ)の大きな投資ほど、長期と呼ばれる期間はどんどん短くなり、安定的な投資ほど長くなります。
――面白いですね!でも、それはなぜなのですか?
津村:これは、先ほどの友人の競馬の例を考えればわかりやすいと思います。競馬が大好きな友人は、たった1日で100万円をすってくるかもしれません。逆に100万円勝つかもしれませんが、次の日には、また100万円すってくるかもしれません。原資100万円に対して、一日で100%上下するという、ものすごい変動幅がある投資の場合、1日でもドキドキですね。だから、FXや暗号資産などといったハイリスクな投資では1年でも長期にあたります。

――そうか、競馬は究極の短期投資ともいえるわけですね?!
津村:逆に、原資100万円で一日一回サイコロを振り、1と2が出ればマイナス30円、3~6が出ればプラス30円もらえる投資だとすると、一日の変動幅は±30円で期待値は毎日プラス10円です。これならぜんぜんドキドキせずに安心して見ておけますが、一年たっても期待値はプラス3650円です。金利でいうと0.3%なので、これでもいまの定期預金よりは有利ですが、例えば10万円増やしたいと思ったら27年以上かかります。この投資の場合なら、10年はむしろ短いでしょう。皆さんが投資しやすい、インデックス投資や投資信託で考えれば、少なくとも10年以上が長期になります。
――なるほど、コツコツ増やすには時間がかかりますからね!
津村:このように、「長期」という期間の中身は、投資する対象のリスクとリターンによって異なってくるわけです。
投資の疑問2:「分散投資」というのは、具体的になにをどうすることでしょうか?

――「長期」投資についての考え方はよく理解できました。そこで、次に「分散投資」について教えていただけますか?
津村:「分散投資」といえば、言葉は難しく聞こえますが、要するに色々な投資商品に分けて投資することです。ただし、どう分散するか、がポイントになります。分散するときは、動きが異なるものに分けなければ意味がないんです。
――というと?
津村:具体的には、現金(普通預金)とアメリカドル(外貨預金)、国内株、国内不動産、米国株インデックスファンド、金やプラチナ、暗号資産など。もうすこしわかりやすい例えでご説明しましょう。たとえば、スーパーで買い物をすることを考えると良いでしょう。

――おお!わかりやすいですね。
津村:いつも行く最寄りのスーパーには、肉の特売がある。別のスーパーでは、野菜の特売がある。もう一つ別のスーパーでは、乳製品の特売がある。このとき、最寄りのスーパーだけで買い物をしていると、どうなりますか?
――野菜と乳製品の特売を逃してしまいますね。
津村:そうですね。肉が安い日は得しますが、野菜や乳製品をほかの店よりも高く買って損していることに、気づくことすらできませんよね。でも、だからといって、例えば同じような肉の特売しかない最寄りのスーパー2号店に行ったところで、それはあまり意味がありません。複数のスーパーで、それぞれに安いものを買うことで、高いものを買うという損を減らし、安いものを買うという得をすることができるわけです。
――つまり、投資にもこれと同じことが言えるわけですね!?
津村:その通りです。例えば株式投資の場合。ソニーにユニクロにソフトバンクにANAなど、業界をまたいで銘柄を買おうとする人がいたとします。
――分散投資ですね?
津村:ある意味ではそうです。確かに、これらの銘柄はそれぞれ業界が違うという意味で、分散されてはいます。しかし、どれも日本株という意味では同じなんです。つまり、日本全体が売られるときには同時に安くなってしまい、資産全体の分散としては弱いです。
――なるほど!
津村:そして今、投資を全くしていない人が、まさに資産の分散をしないことによるデメリットを被っています。
――えっ?!それはどういう意味なんですか?
津村:つまり、投資を全くしていない人というのは、すべての資産を日本円で持っていることになります。日本に住んでいる限り、日本円でしか買い物をしませんから、日本円がほかの通貨に比べて安くなっても損していることに気づくことすらできません。しかし、今、まさに日本円は20年ぶりの記録的な円安水準に差し掛かっています。

――確かに、ニュースなどで最近「行き過ぎた円安」が話題になっていますね。
津村:日本は食料品やエネルギーを輸入に頼っていますから、海外からそれらを買う時の原資である日本円の価値が安くなれば、私たち消費者にとっても物価の高騰というかたちで損をもたらします。2021年の1月時点では1ドルはおよそ103円ほどでした。しかし、そこから1年半もしない現在、1ドルは130円になっています。対ドルでマイナス20%以上の下落です。
――えっ、短時間のうちにそんなに円が弱くなっていたのですね…!
津村:もちろん、為替の場合は長期的にはいつか元のレートに価格は戻ってきます。しかし、それには何年かかることかわかりません。一方で、例えばもし2021年の1月に、資産の半分をドルで持ったとすれば。その半分のドルは、日本円に対して30%値上がりしています。日本円のマイナスをドルのプラスがカバーして、資産全体ではプラスになっています。これは、なにもアメリカの株や投資信託といった、金融商品に投資をしたわけではありません。日本円100%という資産を、日本円50%、ドル50%というように分散させただけです。それでも、日本円自体の価値増減が抑えられ、下落局面であってもプラスに転じることができるのです。
――凄い!ただ自分のお金を円とドルに分けただけで、資産が増えているんですね!
津村:このように、資産や投資対象である金融商品を分散させるということは、リスクを抑えてリターンを得られる、極めて有効な手段なのです。便利だからと言って、すべての買い物をコンビニで済ます人は、いろいろなものを割高で買っていますよね。同じように、投資が怖いからと言って、日本円しか持たない人は、自覚のないうちに損をしている期間が必ず発生するということです。
――なるほど!分散投資の重要性がよくわかりました!!(後半へ続く)
前半までのまとめ

さて、前半では「長期投資」「分散投資」について、その特徴やメリットを学んできました。私達の日常生活に即した、非常にわかりやすい例え話で、津村さんのお話がストンと腑に落ちた方も多かったのではないでしょうか?
そこで、後半ではいよいよ「長期投資」と「分散投資」の考え方を融合させた「長期分散投資」についての説明に入っていきます。読めば必ず、「長期分散投資」の大切さが理解できるようになりますよ。それでは、記事後半もどうぞお楽しみに!(下記リンクからどうぞ!)
津村牧人さんプロフィール

1976年生まれ。投資とは無縁の生活を送ってきたが、1990年代のアメリカITバブルとその崩壊を目の当たりにして金融に興味を持つ。株や暗号資産、FXで投資経験を積み、投資教育機関に転職。投資初心者が危険な投資に手を出さないように、初めの一歩を安全に踏み出すためのサポートをしている。
津村さんへのご質問やご相談もお待ちしています!
また、ここまでの津村さんへの「投資の半歩」についてのインタビューをお読みいただいて、もし他にも疑問点や不明点がある方は、津村さんに直接質問できるように致しました。以下のフォームからどしどしご質問くださいね!
津村さんへのご質問はこちらから!(入力フォームが開きます)
https://forms.gle/Vja7qEaufMbE2cCJ9
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