アート

エッシャーが命がけで守った珠玉の作品群!メスキータ展を見逃すな!

東京ステーションギャラリーで開催中の
「メスキータ展」に行って来ました。


http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ(1868-1944)を紹介する日本で初めてとなる本格的な展覧会が東京ステーションギャラリーで開催中です。

オランダ、ハールレムの応用美術学校で教鞭を執っていた頃の教え子にかの有名なM. C. エッシャーがいます。

その後国立視覚芸術アカデミーの教授に就くと共に生前、展覧会開催や作品集が出版されるなどデザイン、絵画、版画などの分野で幅広く活躍したアーティストです。



妻や息子がしばしばモデルとなり、今回の展覧会にも作品が出ています。

しかし、ユダヤ人であったメスキータは、1944年にナチスドイツにより強制収容所へ連行されその家族もろとも殺されてしまいました。


メスキータ《うつむく女》1913年、個人蔵 Photo: J&M Zweerts

強制連行され主のいなくなったアトリエから、メスキータの作品を持ち出し保管に努めたのが、ほかならぬエッシャーたちでした。

さらりと書いていますが、当時としてはまさに命がけのメスキータ作品救出劇だったことは想像に難くありません。

「エッシャーが、命懸けで守った男。」という展覧会キャッチは正鵠を射ているかと。



展覧会の構成は以下の通りです。

1:メスキータ紹介
2:人々
3:自然
4:空想
5:ウェンディンゲン


尤も、そうした「枕詞」に引っ張られてしまうと本質を見失いかねません。そうしたことを頭の片隅に留めておきつつ初めて目にする作品群(総数約240点!)としっかりと向き合うと、メスキータの真の面白さを探究して行きましょう。


メスキータ《幻想的なイマジネーション:さまざまな人々》1925年頃、個人蔵
Photo: J&M Zweerts

版画では、あくの強い線が何と言っても特徴です。人間の表面的な美しさよりも本質を描こうとすメスキータの意志がこうした特徴ある線に現れています。

特に人物の目の周りに不要とも思えるほどの線を幾重にも表現している作品が多く見られます。

一転して動物や植物にそれが用いられると、どうでしょう、人物のそれとは対照的ともいえる効果がまさに浮き彫りになります。


メスキータ《ワシミミズク》1915年、個人蔵 Photo: J&M Zweerts

「エッシャー展」で観たイタリアの風景を版画にした作品と、個性的な線が魅力のメスキータのそれは確かに強い師弟関係が伺われます。

「彼は常に我が道を行き、頑固で率直だった。
他の人からの影響はあまり受けなかった。」

(M.C.エッシャー)

生涯長きに渡り教える立場であったメスキータ。彼が与えた影響はいったいどれほど大きなものだったのでしょう。生誕150年の今年、これからそうした研究も進められ明らかにされていくことでしょう。



今回の「メスキータ展」は、単なる知られざる作家に光をあてるだけの展覧会ではなく、想像を超える大きな収穫を得られる場となっています。

それはメスキータが多く描き残したドローイングが非常に珍しく、これまでのどのアートの文脈にも属さない、とにかく新鮮な驚くと興奮を与えてくれる作品群です。

この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は 12_JES_222.jpg です
メスキータ《ファンタジー:稲妻を見る二人》1914年、個人蔵 Photo: J&M Zweerts

「まったく意図していない無意識の表れ」としてメスキータが描いたこうしたドローイング作品は、シュルレアリスムのオートマティスム(自動記述)の先駆的な存在としても捉えられるそうです。

展覧会会場としては最後のセクションに「4:空想」が置かれているので、辿り着くまでに体力を残して置くようにしてください。

久々に展覧会会場で興奮してしまいました。



まだまだメスキータについては書き足りないのですが、とにかく魅力的で新鮮な驚きと興奮が待っていることは確かです。

口コミで話題となり、そして後世に語り継がれるタイプの展覧会です。

「メスキータ展」は8月18日までです。是非是非!


「メスキータ」展

会期:2019年6月29日(土)~8月18日(日)
開館時間:10:00~18:00
※金曜日は20:00まで開館
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日[7月15日、8月12日は開館]、7月16日(火)
会場:東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
主催:東京ステーションギャラリー[公益財団法人東日本鉄道文化財団]
企画協力:キュレイターズ


まるごと東京ステーションギャラリー

※本記事は、ブログ「青い日記帳」Takさんの許可を得て以下の記事を転載させていただいたものとなります。
bluediary2.jugem.jp/?eid=5538

Tak

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美術blog「青い日記帳」主宰。『カフェのある美術館』(世界文化社)『美術展の手帖』(小学館)編集。『フェルメールへの招待』編集・執筆。ぴあ、goo連載。『文藝春秋』書評寄稿など、各種講演・執筆活動など、幅広く活躍中。

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