アート

【ミュージアム・プレイリスト】第1回 音楽の印象派『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』

絵画と音楽には、時代ごとの空気感やメッセージに満ちた「物語」があります。
美術館で音声ガイドを聴いていたら、一枚の絵画の前で流れだした音楽に、涙が出るほどの共鳴を味わった――そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
近年関心が高まりつつある、美術展とクラシック音楽のコラボレーション。このコラムでは、音楽キュレーター高野麻衣が美術展のために選曲したプレイリストをご紹介いたします。

現在、国立新美術館(東京・乃木坂)で開催中の「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」。世界的コレクター、エミール・ゲオルク・ビュールレによる「世界最高峰の印象派コレクション」が大きな話題を呼んでいます。

「印象派(印象主義)」とは、19世紀末後半から20世紀初めのフランスで起きた芸術運動。描く対象の輪郭や色より、周囲の光や空気の変化をとらえようとした画家たち――ですが、じつは音楽家のなかにもマネ、モネ、ルノワールらの絵画に影響を受け、光や風、木々のざわめき、波、匂いなど、変化していく瞬間的なイメージを音にした人々がいました。記念すべき第1回のプレイリストはそんな「音楽の印象派」、ドビュッシー、サティ、ラヴェルを中心にセレクトします。

★4月のプレイリスト★

1曲目はドビュッシー:交響詩「海」~海の夜明けから真昼まで。個人的に、本展で最も音楽を感じた、シニャック《ジュデッカ運河、ヴェネツィア、朝》にちなんでいます。

2曲目はドリーブ:夜鳴鳥(ナイチンゲール)。マネの《べルヴュの庭の隅》など、印象派の風景のなかで飛びまわっていそうな小鳥のイメージを投影しました。

「ルノワールといえばピアノを弾く良家のお嬢様たち!」ということで、《可愛いイレーヌ》に合わせたい3曲目は、ラヴェル:ソナチネ~第2楽章。古典的でチャーミングな曲調がイレーヌにお似合いです。

4曲目のサティ:エンパイア劇場の歌姫は、ダンスホールやキャバレーを愛したロートレックへのオマージュ。本展は、このロートレックのように、印象派の次世代やピカソなどのモダン・アート作品までカバーしているのが特徴的。時代や作風はさまざまですが、ビュールレの好みに一貫性があるので、センスのいいコンピレーション・アルバムみたいに楽しめます。

そしてラスト。大作《睡蓮の池、緑の反映》の余韻とともに味わいたいのは、やはり名曲ドビュッシー:月の光。最初にこの絵画の前に立ったとき、「夜なのだ」というほどの静けさを感じたからです。ジヴェルニーの庭に降り注ぐ月の光。まるで、ドビュッシーが霊感を受けたという、ヴェルレーヌの詩の一場面のようでした。

音楽を思い浮かべると、止まっているはずの絵画が生き生きと動き出す――その瞬間が、私はなによりも大好きです。これからみなさまと、そんな瞬間を分かちあえれば幸いです。

「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」は5月7日(月)まで開催中。展覧会をすでにご覧になった方は図録を眺めつつ、おたのしみいただくのも一興です。アートを味わう上質な時間のおともに、ミュージアム・プレイリスト、ぜひご活用ください。

選曲・文:高野麻衣
写真:チバヒデトシ

★4月のプレイリスト★

高野 麻衣

高野 麻衣

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コラムニスト。上智大学文学部史学科卒業。歴史をベースに音楽、美術、マンガやアニメについて​幅広く執筆・講演。著書・CDに『フランス的クラシック生活』(PHP新書) 『マンガと音楽の甘い関係』(太田出版)『マリー・アントワネットの音楽会』(ワーナーミュージック)などがある。ラジオ『Memories & Discoveries』(JFN系列)出演中。

Instagram:https://www.instagram.com/_maitakano

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