アート

屏風と庭のカキツバタが饗宴。『光琳と乾山展ー芸術家兄弟・響き合う美意識ー』根津美術館

根津美術館のカキツバタが見頃を迎えています! 毎年恒例となっている、尾形光琳《燕子花図屏風》が公開され、庭園のカキツバタが満開になっています。寒さが厳しかった冬から、一転して平年より温かい日々が続いたこともあり、2018年は例年より少し早い時期となるゴールデンウィークを前に見頃を迎えました。足を運ぶなら、今が一番の旬と言えます。今回は、現在開催中の特別展「光琳と乾山-芸術家兄弟・響き合う美意識-」の見どころと合わせ、都心にあるとは思えない、素晴らしい庭園の魅力について紹介します。

特別展『光琳と乾山展ー芸術家兄弟・響き合う美意識ー』は5月13日まで開催中です。

根津美術館では、尾形光琳(1658~1716)が手がけた国宝《燕子花図屏風》を、庭園のカキツバタ(燕子花または杜若)が見頃を迎える4月~5月の時期に公開するのが恒例となっています。根津美術館のファンのみならず、広く美術愛好家にとって、この時期に「根津の燕子花」を観るのは、定番の年中行事となっている方も多いことでしょう。

この時期、例年趣向を凝らした企画展が行われていますが、今年の特別展「光琳と乾山-芸術家兄弟・響き合う美意識-」も、燕子花図屏風だけが主役というわけではありません。何と言っても、尾形光琳の弟である乾山(1663~1743)との芸術家兄弟の名品の数々が見どころと言えます。観るべき作品が数多くあり、大変クオリティの高い作品から二人の美意識の饗宴が堪能できます。

本展で展示されている作品約60点は、すべて光琳・乾山の作品となっており、二人の作品がこれだけ揃っているのは実に壮観で、それだけでも大変注目に値します。特に第1室で展示されている作品は、日本各地の美術館・博物館から集められた「オール光琳」の作品で占められています。まず、しっかり目に焼きつけておきたいのは、言うまでもなく国宝《燕子花図屏風》です。尾形光琳の代表作にして、歴史や美術の教科書にも出てくる、日本美術史屈指の名品です。

国宝 燕子花図屏風(かきつばたずびょうぶ) 尾形光琳筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵

さらに、琳派のお手本的作品とも言える《夏草図屏風》《秋草図屏風》の2点は、それぞれの季節を象徴するような草花が、琳派独特の装飾的なデフォルメを施されて美しく描かれており、ほれぼれするような美しさで、いつまでも見ていたくなるような作品です。

夏草図屏風 尾形光琳筆 2曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵

ぜひ注目いただきたいのは《白楽天図屏風》。唐の詩人・白楽天が日本にやってきて漁師と問答をするものの、漁師は実は和歌の神様である住吉明神の化身で、白楽天は和歌の偉大さを思い知らされて中国に追い返されてしまうという謡曲から着想を得て、屏風絵にしたものです。この大胆に斜め45度に傾いた船に悠然と乗る白楽天や、漁師のひょうひょうとした表情が非常に印象的です。また、背景の大海原や、緑一色で描かれた陸地のシンプルな図像的表現も奥ゆかしくて素晴らしいです。

白楽天図屏風 尾形光琳筆 6曲1隻 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵

第2室では、弟の「オール乾山」の作品となっています。こちらは尾形乾山の肉筆画が中心。兄、光琳とは一味違う、乾山の表現した「琳派」らしさをじっくり味わえるこれまた貴重な機会と言えます。流水の表現や、柔らかい流線型で表現された木々の幹などを見ていると、彼の焼き物のデザインと共通する独自のセンスを感じ取ることができます。今となっては尾形乾山は、絵画作品よりも焼き物やうつわで有名ですが、肉筆画も味があって見応えたっぷりです。

続いて、2階にある第5室へ。こちらは、やはり乾山の焼き物を大特集しています。光琳や、初公開となる渡辺始興との共作となる《銹絵蘭図角皿》など、こちらも味わい深い作品群がいっぱい。国内各所から集められ、手間暇をかけたキュレーションが素晴らしかったのです。

◎ 銹絵染付金彩絵替土器皿 尾形乾山作 5枚 施釉陶器 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵

そして、全部見終わった後、最後にもう一度第1室に戻って見ることをおすすめします。実は、光琳が絵付けを行い、乾山が制作した、兄弟合作の作品もあるのです。第1室の光琳、第2室、第5室の乾山を全部観た後に、最後に鑑賞してみると、二人の長所と個性がぶつかりあい、融合した名作を、また違った感覚で味わえるかもしれません。

◎ 銹絵寒山拾得図角皿 尾形乾山作・尾形光琳画 2枚 施釉陶器 日本・江戸時代 18世紀 京都国立博物館蔵

さて、展示を見終わった後は、本物のカキツバタを見に庭園に出てみましょう。変化に富んだ庭園内ですが、庭園への出入り口には、庭園の地図が記載された施設案内が置いてありますので、案内を片手に、庭園を散策しましょう。そして、生い茂った新緑の中、階段を下ってしばらく歩くと、庭園内の池に見事なカキツバタが待っています。

根津美術館 庭のカキツバタ(※過去の画像です。実際の開花状況は、公式Twitterでチェック!)

気になるカキツバタの開花情報は、根津美術館のTwitterで頻繁に更新されているので、美術館を訪れる前に状況を確認しておくといいですね。また、美術館の入り口前にもその日のカキツバタ開花情報が告知されています。

カキツバタを見たら終わりではなく、ゆったり庭園内を散策してみるのも良いと思います。根津美術館といえば、秋の紅葉シーズンも素晴らしいのですが、この春から初夏にかけて、まだ緑が若い感じの新緑のモミジのトンネルを歩いてみるのも、趣があって素晴らしいと思います。ここが東京の都心であるということを忘れてしまうほど優雅な時間が楽しめますよ。

庭園は意外な程に広く、色とりどりの植物や史跡が楽しめます。

いかがでしたでしょうか。オール光琳・乾山で構成された大変力の入った企画展と、手入れの行き届いた趣のある日本庭園と池に映えるカキツバタはまさにいまこの時期だけのものです。会期はあと2週間弱となりましたが、ぜひ足を運んでみてください。ゴールデンウィーク開けの5月8日(火)~5月13日(日)は、19時までの夜間開館を実施しています。日が長くなるので、日没いっぱいまで夕暮れの庭園を楽しむことができます。こちらも要注目!

夜間開館も趣があっておすすめです!

★根津美術館 特別展「光琳と乾山ー芸術家兄弟・響き合う美意識ー」

開催期間:4月14日(土)~5月13日(日)
開館時間:10時~17時(※最終入館は16時30分)
※5月8日(火)~5月13日(日)は、19時まで開館(※最終入館は18時30分)
オフィシャルHP:http://www.nezu-muse.or.jp

かるび

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メーカー、IT企業で勤務後、41歳にして1年間のサバティカル休暇へ突入。現在は、ブロガー&Webライターとしてアートや映画について主催ブログ「あいむあらいぶ」(http://blog.imalive7799.com/)にて日々見聞きした出来事を書き綴っています。

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