2018年3月30日に、「楽活」コラム執筆陣のTakさんがメインパーソナリティを務めたトークイベント「久保佐知恵×おおうちおさむ×中村剛士 サントリー美術館の舞台裏―コレクションをいかに魅せるか」が開催されました。サントリー美術館の所蔵品を選りすぐって収録した図録本「サントリー美術館 プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて」が求龍堂から出版されたことを記念して、「銀座蔦屋書店」で開催されたトークイベントとなります。
Takさんが司会役として、今回の図録製作の中心メンバーとして関わった久保佐知恵氏(サントリー美術館学芸員)、おおうちおさむ氏(グラフィックデザイナー)からお話を聞いていく形で進行していきました。「楽活」では、事前の告知もお手伝いさせて頂きましたが、当日のトークイベントにもスタッフ3名が参加してきました。
トークイベントでは、今回の記念図録の製作エピソードを中心にして、サントリー美術館の運営体制や歴史、展覧会開催での苦労話など、たっぷりと「美術館の舞台裏」を聞くことができました。
いろいろ盛りだくさんのトーク内容の中で、特に興味深かったのは、図録製作の工程や手順がわたしたちが想像する以上に遥かに細かく、細心の準備や配慮が図られた上で製作されていたことです。例えば、また、図録の解説は全ページバイリンガル対応が施され、糸綴の背中をそのまま見えるように本を仕立てる「コデックス」仕様が採用されており、どのページで開いても本にストレスをかけずに大きく開くことができます。海外も含めた幅広い読者層に、快適に楽しんでもらいたい、という配慮がしっかり感じられますよね。
また、図録上へ再現する作品の色味を調整するため、何度も印刷所と折衝をかさねた久保氏のこだわりや、1ページ1ページ全てデザインを丁寧に微調整したおおうち氏の苦労話など、図録作成に関わった両氏の、専門家としてのプロ意識をたっぷり感じることができました。
これに対して、今回がサントリー美術館との初取引だったという、求龍堂の製作担当者の営業プロセスも人間臭くて興味深かったです。単に価格交渉で最安の見積提示がなされただけでなく、これまで展覧会未発表ながらサントリー美術館が大切にしてきた小山楢重の小品に対して、かつて求龍堂で画集として取り扱った実績があったことも不思議な「縁」となり、これが取引の決め手になったそうです。元営業担当だった筆者は、仕事ってまさに「ご縁」なのだな、と非常に感慨深く感じたのです。
そして、この日はTakさんのツッコミの切れ味もいつになく鋭く、来場者の美術知識レベルが未知数だった中、非常に巧く会場の空気を見ながら進行されていた印象でした。
案の定、トークは予定の90分では時間が足りないくらい盛り上がりました。後日、求龍堂の製作担当者に聞いたところ、この日のトークのため、1週間前に綿密な打ち合わせを行った効果なのか、久保さん、おおうちさんとも伝えたい内容が非常に多くて、時間内に納まるか心配だったのだそうです。結局、用意されていたスライドをすべて見せることができなかったそうですが、非常に濃厚な90分は、あっという間の楽しい時間でした。
まだまだレポートとしてお伝えしたい内容はたくさんあるのですが、より詳細な内容は、筆者ののブログに別途まとめてありますので、こちらも是非合わせてご覧いただければと思います。(ブログ「あいむあらいぶ-裏話もたっぷり聞けたトークイベント「久保佐知恵×おおうちおさむ×中村剛士 サントリー美術館の舞台裏」【イベント感想レポート】)
筆者は、これまでアートについての知識は、「書籍」や「雑誌」など紙媒体からのインプットが中心で、こうしたトークイベントにはあまり参加してきませんでした。でも、やっぱりアートの現場の最前線で活躍されている専門家の方の本音トークは本当に面白いし、「美術書」や「作品鑑賞」とはまた違った観点から教養が身につくのだな、と改めて体感できた機会となりました。はじめの「半歩」を踏み出すという「楽活」のコンセプトにぴったりなトークイベントだったと思います。
※詳細情報
本稿で取り上げた名品図録「サントリー美術館 プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて」のより詳細な情報は、以下をご参照下さい。
◯サントリー美術館広報ページ
https://www.suntory.co.jp/sma/info/d/004654.html
◯求龍堂オンラインストア
http://www.kyuryudo.co.jp/shopdetail/000000001395/
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