アート

毒と共に生きていく?『ヨコハマトリエンナーレ2020』とコロナ禍

こんにちは、美術ブロガーの明菜です。

3年に1回の国際芸術展『ヨコハマトリエンナーレ』が、2020年も開幕しました!

国内外のアートの最新の動向を発信するヨコハマトリエンナーレ。今回もユニークな作品がたくさん展示されており、とても面白かったです。

エヴァ・ファブレガス《からみあい》2020(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:横浜美術館)

本展のアーティスティック・ディレクターを務めるラクス・メディア・コレクティヴは、 展覧会の鍵となるキーワードを5つ挙げています。

「独学」
自らたくましく学ぶ。

「発光」
学んで得た光を遠くまで投げかける。

「友情」
光の中で友情を育む。

「ケア」
互いを慈しむ。

「毒」
世界に否応なく存在する毒と共存する。

チェン・ズ(陳 哲)《パラドックスの窓》(部分)2020 ©Chen Zhe(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:横浜美術館)

特に「独学」「毒」は、他の展覧会では聞かないキーワードで印象的だと思います。どういうことなのか引っかかりませんか?

しかし、展覧会を読み解き、今の時代の状況を照らし合わせると、独学して実践することや毒と共存して生きていくことの大切さが見えてきます。それでは、一緒に展覧会を見ていきましょう。

想像力を膨らませて独学する

マリアンヌ・ファーミ《アトラスシリーズ》2020 ©Marianne Fahmy(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:日本郵船歴史博物館)

現代アートの面白さの一つが、「見た人が自由に発想を展開できること」です。見た人の感想が、作家の意図と違うことがあっても良いと思います。間違った感想なんて存在しないのです。

私も1つの作品を見て、どこまで自由に柔軟に発想を飛ばせるのか、チャレンジする気持ちで見てきました。

金氏徹平《White Discharge (フィギュア / 203)》(部分)2003-2020(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:横浜美術館)

例えば、金氏徹平さんのフィギュアがバニラアイスを被ったような作品が興味深かったです。新たな創造は過去を土台に生まれていることを示すようです。

あるいは、ネット社会で現実とは別人のように振る舞い逃避する現代人を表しているようにも感じました。作品を見ていると、自分の顔や頭に白いドロドロがかかった気分になりますね。鼻と口が覆われて苦しむフィギュアたちは、生きづらさを感じながら暮らす私たちなのかもしれません。

金氏徹平《White Discharge (フィギュア / 203)》(部分)2003-2020(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:横浜美術館)

「現代アートは理解するのが難しい」と思う人は多いと思うのですが、「難しい・簡単」あるいは「理解できる・できない」で捉えるのはちょっと違うのではないでしょうか。

学校のテストではないので、正解が決まっているわけではありません。また、作者の意図を汲み取っておしまいでもありません。どこまでも遠く発想を飛ばして、自由に楽しんでみてはいかがでしょうか?

アートはなぜ社会の課題を反映するのか?

ハイグ・アイヴァジアン《1、2、3 ソレイユ!(2020)》2020 ©Haig Aivazian(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:プロット48)

ヨコハマトリエンナーレ2020には、世界のさまざまな場所からあらゆる社会問題を反映した作品が集まっています。しかし、そもそもどうして現代アートは社会の課題を映すのでしょうか?

本展を通じて、その答えが少し理解できたように思います。アートが社会の課題を反映するのは、抗い、立ち上がるためのメッセージだからではないでしょうか?

ニック・ケイヴ《回転する森》2016/2020 ©Nick Cave(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:横浜美術館)

例えば、《回転する森》は無数のガーデン・スピナーがめまいを起こさせんばかりに回転する作品です。綺麗な印象ですが、拳銃のような物騒なモチーフも紛れています。

ガーデン・スピナーは、アメリカの家庭の庭で使われる飾りです。どこにでもある普通の家庭にも、銃社会の恐怖が迫っていることを暗示しているようです。しかしただ悲観するのではなく、無数の光で包んで社会を前に進めようとする希望の作品でもあるでしょう。

ニック・ケイヴ《回転する森》(部分)2016/2020 ©Nick Cave(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:横浜美術館)

アーティストが作品を通じて伝えるのは、「こんな問題があるから、誰か助けて欲しい」といった他力本願なメッセージではありません。むしろ「この課題に抗い、自由を手に入れてみせる」という力強い宣言なのです。

あなたを取り巻く有害な毒に抗うこと

アリュアーイ・プリダン(武 玉玲)(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:プロット48)

抗う対象となるのが、本展のテーマの一つである「毒」なのです。自分の周りには無数の有害な毒があることを認め、その上でアーティストは対抗するためにアートで立ち上がっているのだ、と直感しました。

理不尽な政治、非科学的な差別、工業化と温暖化など、私たちはさまざまな問題に直面しています。現在の最も大きな脅威といえば新型コロナウイルスですが、全く同じことが言えると思います。「誰かがなんとかしてくれる」ではなく、「乗り越えるためにはどうしたら良いのか」を考えないといけないですよね。

川久保ジョイ《ディオゲネスを待ちながら》2020(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:プロット48)

否応なしに存在する毒に対して、私たちはどのように行動すれば良いのでしょうか?まさに「独学」の実践だと思います。ラクス・メディア・コレクティブが示した独学と毒は、このようにつながるとも考えられるでしょう。

【まとめ】コロナ禍の今見るべき国際芸術展

オスカー・サンティラン《チューインガム・コデックス》2019-2020 ©Oscar Santillán (digital model by Marijn van Bekkum)(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:プロット48)

ヨコハマトリエンナーレ2020について、テーマの一部である「独学」と「毒」を中心に紹介してきました。

本展の企画が始まった数年前は、ウイルスの発生やパンデミックなど予想もしない時代でした。それなのに、コロナ禍の今にぴったりの展覧会になっていることにも驚きます。

イヴァナ・フランケ《予期せぬ共鳴》2020 ©Ivana Franke(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:横浜美術館)

70億人が同時に生き方の変更を余儀なくされる今、毒との共存や独学は、私たちに最も必要なことではないでしょうか。ヨコハマトリエンナーレ2020は、コロナ禍の今だからこそ見るべき展覧会です。

展覧会概要

アンドレアス・グライナー《マルチチュード》2014年(2020年再制作)©Andreas Greiner(ヨコハマトリエンナーレ2020 展示風景、展示会場:プロット48)

ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」Yokohama Triennale 2020 “Afterglow”
会期:2020年7月17日(金)-10月11日(日)、
   毎週木曜日休場(8/13、10/8を除く)
会場:横浜美術館、プロット48(日本郵船歴史博物館でも展示あり)
公式HP:https://www.yokohamatriennale.jp/

明菜

明菜

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