ツタンカーメン王墓の玄室の壁のカビまで忠実に再現

古代エジプトというと、ピラミッド、スフィンクス、そしてあの黄金のマスク──。

その中でも「名前は知っているけれど、何をした人なのかはよく知らない」──ツタンカーメン王は、そんな不思議な存在かもしれません。

そして今、横浜では彼の物語を再構成する展覧会「MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~」と、 ピラミッドの内部へと実際に“足を踏み入れる”没入型VR体験「Horizon of Khufu」が同時に開催中。

3300年前の「消された王」と、4500年前の「巨大建築の謎」。 それぞれが、展示を超えて「歴史に立ち会う体験」としてよみがえっています。

MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~

エントランスのようす

黄金の仮面の奥にある、記憶と問い

古代エジプト新王国時代、9歳で即位し19歳で急逝した少年王ツタンカーメン。 その存在は長らく歴史から抹消されていました。

彼が再び語られるようになったのは、1922年、イギリスの考古学者ハワード・カーターによって王家の谷で彼の墓が発見されてからのこと。 盗掘を免れ、黄金のマスクとともに無数の副葬品が発掘された“奇跡”のような発見。 それから100年、彼の人生と死、そして埋葬の背景にある物語を、今再び私たちが見つめ直す時が来たのです。

本展の監修を務めるのは、エジプト考古学者・河江肖剰(かわえ・ゆきのり)氏。ピラミッドの実地調査でも知られる河江氏の知見が随所に活かされ、展示の考古学的な信頼性と深みを支えています。

ツタンカーメンの黄金のマスクを説明する河江氏

見どころ1:発見されたままの空間を歩く

副葬品が発見された当時のままに配置され、墓室そのものが再現された展示空間。 ショーケース越しではなく、自分の目線と歩みでその空間を体感できる構成になっています。 特に注目すべきは、世界に3セットしか存在しない“スーパーレプリカ”。 3Dスキャンと職人の手仕事でつくられた副葬品は、材質やサイズ、傷跡に至るまで本物そっくり。2023年に角川武蔵野ミュージアムで展示されて以来の展示になります。

ツタンカーメンの王墓の再現

見どころ2:副葬品の8割が“転用品”?

副葬品の多くに見られる、名前の上書きの痕跡。 近年の研究では、彼の副葬品の大半がツタンカーメンの義母・ネフェルティティなど別人のために用意されたものであり、急な死により流用された可能性が指摘されています。 これは、王の死と埋葬がいかに急ごしらえだったかを示す証拠であり、展示品に刻まれた“痕跡”を通して、その背後の人間ドラマを読み取ることができます。

見どころ3:宗教改革と信仰のリセット

父アクエンアテンが行った一神教への宗教改革。 それは神々を否定し、ひとつの神(アテン神)だけを信じるという、当時としては革命的なものでした。

多神教時代に信仰されていた古代エジプトの神々

ツタンカーメンはその混乱の中で即位し、父の改革を撤回。 再び多神教を復活させ、国の秩序と神官たちの信仰を元に戻すことに尽力します。 展示では、当時の神像や祭祀用具が並び、宗教と政治が深く絡み合った歴史の転換点を立体的に知ることができます。

見どころ4:棺の構造に隠された宇宙観

いくつもの厨子・棺が入れ子状に重なった“マトリョーシカ”構造。 これは単なる収納の都合ではなく、死後の世界で魂が旅する「階層構造」や、古代エジプト人の宇宙観を反映しています。 外から内へと進む展示構成が、自然とその思想を追体験できる導線になっています。

スクリーンの前に置かれた金箔の厨子と人型棺

見どころ5:王が“そこにいた”と感じられる玉座

黄金に輝く玉座には、王と王妃の親密な姿が描かれています。 再現されたこの玉座は、ただ“美しい”だけでなく、王という存在が実在したこと、そこに“人間としてのぬくもり”があったことを、実感させてくれます。 まるで王が立ち上がった直後のような、静かな緊張感が空間に漂っています。

黄金の玉座を説明する河江氏

開催概要

イベント名MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~
会期2024年12月13日(金)~2025年12月25日(木)
会場ツタンカーメン・ミュージアム(横浜・みなとみらい PLOT48)
アクセスみなとみらい線「新高島駅」2番出口より徒歩約7分、みなとみらい駅3番出口より徒歩10分
開館時間11:00〜18:00(最終入館 17:30)
※ゴールデンウイーク中 10:00〜18:00(最終入館 17:30)
休館日火曜(祝日の場合は開館、翌日休館)
※開館時間、休館日は変更となる場合がございます。最新情報は公式HPをご確認ください。https://tutankhamen.jp/#page04
チケット一般2,600円/中高生2,000円/小学生1,500円/未就学児無料
公式サイトhttps://tutankhamen.jp

Horizon of Khufu(ホライズン・オブ・クフ王)

エントランスのようす

石の迷宮に、息をひそめて

世界遺産・ギザのピラミッド。 その中でも最大のクフ王のピラミッドは、いまだ謎に満ちた建築物です。

本作「Horizon of Khufu」は、そのピラミッド内部を再現した没入型VR体験。 ただ映像を観るのではなく、実際に1000㎡の空間を歩いて進むという、他に類を見ないスケールの探検型展示です。

会場のようす

見どころ1:身体ごと“時空を越える”体験

来場者はVR機器を装着し、広大な空間を自ら歩いて移動します。 歩く、曲がる、立ち止まる──そうした動作そのものが、記憶と身体に“古代”を刻みます。 移動するたびに景色が変わる没入型の空間体験は、まるで時空を超えた現地探検。

ゴーグル装着のイメージ

見どころ2:科学と芸術の融合で再現されたピラミッド

この体験を制作したのは、フランスのVRスタジオ「excurio」。 考古学者や建築学者と連携し、当時の記録や発掘データをもとに、細部まで緻密に空間を再現しました。 石材の質感や、天井の高さ、通路の狭さまで、現地で感じるリアリティが再現されています。

体験のイメージ

見どころ3:ガイドと歩く、物語の旅

ガイド役のキャラクター「モナ」と一緒に進むことで、旅はただの映像体験ではなくなります。 物語のなかに自分が入り込むことで、自然と古代エジプトの文化や儀式の意味が伝わってくるよう構成されています。

体験のイメージ

見どころ4:観光では見られない場所を探検

この体験では、観光客が普段入れないようなピラミッドの内部や裏側まで探索できます。 たとえば──

  • 王の石棺が置かれた暗い部屋
  • 天井裏や細い通路
  • ピラミッドの頂上からギザの大地を見下ろす視点

このような“裏側のエジプト”を歩けるのは、VRならではの特権です。

体験のイメージ

見どころ5:“遊びながら学ぶ”知的体験

本体験では、日本語監修をエジプト考古学者・吉村作治氏が担当。 エンターテインメント性を保ちつつ、年齢や知識の有無を問わず、誰もが“遊びながら学べる”ように設計されています。 まるで歴史の中に入り込むような、知と体感の融合体験です。

開催概要

イベント名Horizon of Khufu(ホライズン・オブ・クフ王)
会期2024年12月13日(金)~閉幕日未定
会場横浜アソビル3F IMMERSIVE JOURNEY
アクセス横浜駅みなみ東口通路直通、横浜駅東口より徒歩2分
開館時間全日10:00~20:00(最終開始時間18:30~19:00)
※2025年4月19日よりに変更。
体験時間約60分(体験:約45分 + 説明・準備:約15分)
※混雑状況により、待ち時間が発生する場合がございます。
対応言語日本語・英語・フランス語・中国語・スペイン語に対応
対象年齢8歳以上
チケット一般 休日:5,000円/1名 平日:4,000円/1名
※4名以上の場合は団体チケットをご購入ください
公式サイトhttps://immersivejourney.jp

まとめ|“展示を見る”から“歴史を生きる”へ

ツタンカーメンの封印された墓室に立ち、ピラミッドの奥深くを歩く── この冬、横浜で体験できるのは、知識と感覚を総動員して古代と出会う“没入型の冒険”です。

体験のイメージ

目で見るだけではない。説明を読むだけでもない。 歴史を歩く、というまったく新しい旅へ。

あなたなら、この古代の問いに、どう応えますか?

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