アート

100年目、あらたに出会ういわさきちひろ。『生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。』東京ステーションギャラリー

今年、生誕100年を迎えた画家/絵本作家のいわさきちひろ。ちひろ美術館・東京と安曇野ちひろ美術館で展開される「Life展」をはじめ、彼女に関する様々なプロジェクトが行われています。「Life展」は1年をかけて東京と安曇野にある2館において7組の現代の作家たちがちひろに向き合い、コラボレーションした作品を展示するもの。

その他にも「特別展」として台湾の国立歴史博物館において「いわさきちひろ展」が2月から4月にかけて開催されました。

いわさきちひろ「絵をかく女の子」:生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

そして、現在東京ステーションギャラリーにおいて行われているのが『生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。』です。会期は2018年9月9日まで。京都、福岡に巡回する予定です。

いわさきちひろを作り上げていったもの

「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」

いわさきちひろが、のちの伴侶である松本善明さんと出会ったときの自己紹介の言葉「いわさきちひろ、絵描きです。」を冠するこの展覧会は絵本作家としてのイメージが強いちひろを「絵描き」として紹介するものとなっています。展覧会の前半はちひろが影響を受けたものを中心にして、どの様にみなさんがよく知るちひろになっていったかを探る展示です。

岡本帰一/初山滋/武雄武雄の童画や絵雑誌『コドモノクニ』:生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

マリー・ローランサン《ブリジット・スールデルの肖像》:生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

絵雑誌『コドモノクニ』を代表する武雄武雄などのちひろが憧れた童画の世界、師事した岡田三郎助の絵、着ていた服、その色使いに惚れ込んだマリー・ローランサンの絵など。これらが後のいわさきちひろを作り上げていったのかと思うと、興味深いものばかりです。

丸木位里の絵、いわさきちひろの油絵、紙芝居『お母さんの話』などの貴重な展示:生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

いわさきちひろのお仕事 ポスターや 雑誌の表紙など:生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

そして宮沢賢治のへの共鳴、日本共産党への入党、丸木位里・丸木俊(赤松俊子)夫妻との出会い、スタイルが固まらない時期に描いた油絵、新聞記者やポスターなどの仕事、童画家としての駆け出すきっかけとなった紙芝居など。いわさきちひろの展覧会でこんな作品を見る事が出来るなんて!と言う貴重な作品が並びます。

絵描き いわさきちひろの発見

実際に絵本を見ながら作品を鑑賞出来る展示空間:生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

展示の後半では水彩画を中心に、水彩画の特性を自由に使いこなし、絵本作家として活躍するいわさきちひろを見る事が出来ます。ただ、この展覧会、そう単純なものではありませんでした。私たちの良く知るちひろの中にあるものを切り口を変えて見せてくれます。

絵本『あめのひのおるすばん』の原画展示:生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

いわさきちひろ「雨傘と魚の親子」(絵本『あめのひのおるすばん』):生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

後半にいくに連れ顕著となるのはちひろの絵が様々な実験をしているかの様にぼんやりと抽象的になっていくことです。ほぼ滲みだけで描く絵、紙をくしゃくしゃにしてその皺で質感を出した絵などこれは抽象絵画では無いだろうか?と思ってしまうほど形が見えなくなっていきます。

いわさきちひろ「海辺を走る少女と小犬」(絵本『ぽちのきたうみ』):生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

さらに不思議なのが、どれだけぼんやりしていっても、形を無くしていっても、そこにはちひろの絵があるのです。ただ色を無造作に塗っただけの画面に小犬と少女が加わると、まぎれも無いちひろの絵本の一部となるのです。

高畑勲氏監修による、絵のなかに入り込む空間演出:生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

最後は巨大に引き延ばされたちひろの絵。この展示の監修は今年4月に亡くなられたアニメーション映画監督の高畑勲さんです。ちひろの絵の中に自分がいる様な世界観。ちひろの絵がどのように視線を誘導しているかなどを体験してほしいと言うコーナーです。

いわさきちひろの画机(再現):生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

いわさきちひろ「海の夕焼けと手紙をかく少女」(絵本『ぽちのきたうみ』):生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

いわさきちひろは「絵描きである」「絵本作家である」「女性である」「平和を祈っていた」など、展覧会は様々な方向から、それぞれのアプローチをしていきます。ただ、結局はそれらはすべて彼女という「人そのもの」の展覧会であったという印象が強く心に残ります。

そこにはみなさんがよく知っているちひろ、見たことがないちひろ、想像したちひろ、いろいろなちひろが居ます。絵には花があり、子供がいて、女性がいて、平和を訴えています。でも、結局はそれが様々な展示を通して行き着く、一人のいわさきちひろという人そのものを見つける、そういう一年になるのだと思います。

いわさきちひろをみつける一年

前述の通り、東京・練馬と長野・安曇野にある二館のちひろ美術館では「Life展」として、今年一年を通して7組の作家とコラボレーションをした展示をしています。

現在、ちひろ美術館・東京では「あそぶ plaplax」を開催中です。plaplax(近森基+久納鏡子+筧康明+小原藍)はいつもとても楽しい展示をしているチームでメディアアートに興味のある方にはおすすめです。また、安曇野ちひろ美術館では「子どものへや トラフ建築設計事務所」が開催されています。トラフ建築設計事務所は建築デザインのファンにとっては必見です。

ちひろ美術館・東京で開催中の「Life展 あそぶ plaplax」展示の様子。写真は歩くとちひろが描くにじみ技法による水彩絵の具のように足あとがつく。《絵の具の足あと》plaplax、音楽:高見澤淳子、プログラム:赤川智洋

「Life展 着るをたのしむ spoken words project」(ちひろ美術館・東京)展示風景。展示終了。

これまで、現代美術家の大巻伸嗣さん、ファッションデザインのspoken words projectと、ジャンルは異なるものの、いわさきちひろになんらかの影響を受けたり、通ずるところがあったりするクリエイターたちとのコラボレーションがありました。今後は写真家の石内都さん、詩人の谷川俊太郎さん、アートディレクターの長島有里枝さんとのコラボレーションがたのしめます。ぜひ、東京、安曇野のにふたつのちひろ美術館へも足を運んでみてください。

【展覧会情報】
特別展「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」
会期:2018年7月14日〜9月9日
会場:東京ステーションギャラリー(東京)
巡回展:
京都展
会期:2018/11/16-12/25
会場:美術館「えき」KYOTO
福岡展
会期:2019/4月-5月[予定]
会場:
「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」:http://www.nikkei-events.jp/art/chihiro/

◯Life展
「子どものへや トラフ建築設計事務所」
会期:2018年7月21日(土)〜9月25日(火)
会場:安曇野ちひろ美術館

「あそぶ plaplax」
会期:2018年7月21日(土)〜10月28日(日)
会場:ちひろ美術館・東京

いわさきちひろ生誕100年「Life展」:https://100.chihiro.jp/

※各展覧会の詳細情報はそれぞれの公式サイトを参照ください。

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アート展感想中心のブログ「今日の献立ev.」の中の人(注:決して料理ブログではありません)。音楽、映画、現代アート、建築、デザイン関連、後は江戸時代周辺の日本美術などが好みです。美術館や建築、デザインを見歩きに街中に出て、そのままお酒や美味しいものを嗜み……ついでに……少々……。主に都内、中央線沿線に出没しています。

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