![華麗なドローイングでたどるフランク・ロイド・ライトの建築](https://rakukatsu.jp/wp-content/uploads/2024/02/b00aca197aacd401596edf0f3fad6e4a.jpeg)
現在、パナソニック汐留美術館では「帝国ホテル二代目本館100周年」を記念し、「フランク・ロイド・ライト――世界を結ぶ建築」(〜2024年3月10日(日))を開催しています。
ライトが設計した「カウフマン邸(落水荘)」「グッゲンハイム美術館」などアメリカ合衆国内の8つの建築物は、2019年、「フランク・ロイド・ライトの世界遺産群」として世界文化遺産に登録されました。
アメリカ近代建築の巨匠 フランク・ロイド・ライト(1867–1959) の日本で初公開となるドローイングも見られるこの展覧会。ドローイングの華麗で詳細な描写からライトの建築や思想を知ることができます。ここでは本展の大きなみどころであるドローイングを中心に紹介します。
壮大な風景をも描く
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本展ポスター等に使用されているのはライトがインク、鉛筆、色鉛筆を用いてトレーシングペーパーに描いた「大バグダット計画案」、未来的な都市計画を緻密に仕上げたドローイングです。90歳の作と聞くと、ライトのエネルギーに驚かされます。
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展覧会入口にライトの肖像写真があります。ライトの後ろに花が描かれた屏風があり、日本との関わりを示しています。
7つのセクション
展示は7つのセクションに分かれ、ライトが追求したテーマ、人と自然と建築の関係、多様な文化との出会い、理想の社会が浮かび上がってきます。
- セクション1:モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観
- セクション2:「輝ける眉」からの眺望
- セクション3:進歩主義教育の環境をつくる
- セクション4:交差する世界に建つ帝国ホテル
- セクション5:ミクロ/マクロのダイナミックな振幅
- セクション6:上昇する建築と環境の向上
- セクション7:多様な文化との邂逅
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ライトは最初に勤めた建築事務所に浮世絵が飾られていたことから日本に興味をもち、1893年のシカゴ万国博覧会の日本パビリオン「鳳凰殿」に感銘を受け、1905年に来日。7週間におよぶ旅行で建物を周囲の自然と相まった空間と理解するようになったと記録されています。数百枚におよぶ歌川広重の浮世絵を持ち帰り、シカゴ美術館で2回、浮世絵の展覧会を開くほど浮世絵に情熱をかけていました。
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ライトは建物の設計だけではなく、建物内部の壁や家具のデザイン、造園、技術革新、都市計画に至る広い視野、理想をもっていました。
華麗で繊細なドローイング
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この展覧会では、ライト直筆のドローイング39点が圧巻です。ライトには完成した建築がはっきりとイメージできていたのでしょう。繊細で詳細なドローイングからは「建築家は画家でもあり、写真家でもあり、思想家でもある」と感じさせてくれます。
上記のドローイングは設計を画像に変える「レンダリング」で、ライトは抽象化した葉や花を詳細に表現しています。
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建築図面に植物を描き込んだのはライトが初めてでした。デローズ邸のように青い空を背景に建物が木々に囲まれ、塀に囲まれた庭からも植物が覗き、手前左には花と鳥が大きく描かれるのは浮世絵の構図を思わせます。
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建築場所の気候までを取り込み、水墨画を思わせるドローイングが並んでいます。ドヘニー・ランチ宅地開発計画案は、尾根と渓谷に広がる巨大な人工構造物、「ミニアトゥーラ」にはユーカリの木から差し込む光も描いています。
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初期のライト建築は「プレイリー・ハウス」はアメリカ中西部を象徴する平原から着想し、水平性の建築の印象が強いですが、後に高層ビルの可能性も提言しています。ライトの高層建築の頂点は、シカゴのマイル・ハイ・イリノイ計画案です。ニューヨークのエンパイアステートビルの4倍以上の528階建てになるものです。雲を突き抜けた高層ビルをインクと鉛筆で描き、詳細な窓枠、色のグラデーションが美しいドローイングです。
「東洋の宝石」帝国ホテル二代目本館
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帝国ホテルは東京都千代田区に建つ日本を代表するホテルのひとつ、日本で実現したライトの傑作です。展示は第1案、第2案の図面、右の縦長の図には、内部の装飾も描かれています。左右対称の中央玄関などは日本建築を連想させます。
初代の帝国ホテルは1890(明治23)年に訪日客向けの迎賓館として創業、二代目はライトの設計で当時類をみない異彩を放つ建物として「東洋の宝石」と呼ばれました。地震対策には鉄筋コンクリートの上にタイルを張り、大谷石で補強しました。
依頼を受けてから約10年の建設期間を経て、1923年9月完成、落成披露準備中に関東大震災が起こり、倒壊はしなかったものの、被害を受けました。その後1970年の大阪万国博覧会の旅行客増加を見越して建物を高層化するため、1967年に解体が始まり、1976年に博物館明治村(愛知県犬山市)に正面ロビーが移築され、ライトがデザインした壁、照明、家具なども見ることができます。三代目の帝国ホテルは1983年に複合ビルとして開業、2024~30年度に立て替えが予定されています。
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石膏模型の原作はライトが帰国に際して、京都帝国大学教授(現・京都大学)の武田五一に贈ったものです。武田はライトと深く交流し、日本におけるライトの受容に貢献しました。100年を経た模型を巡回展示させることは難しく、京都大学と京都工芸繊維大学が連携して、最新の技術力による精巧な複製が制作されました。
この模型によって、帝国ホテルの全景を見ることができます。間口約100m、奥行き約150m、総面積34,000㎡余、中心軸に玄関、大食堂、劇場などがあり、全長150m・3階建ての客室棟が配されていました。後ろの壁に展示されたライトの「鳥瞰透視図」と見比べることができます。
ライトが手がけたデザイン
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カラフルな丸や四角がデザインされたステンドグラスは、近代的な教育理論に基づく「クーリン・プレイハウス幼稚園」のもの、ライトは教育こそ民主主義の基本と考え、日本では「自由学園明日館」の建築も手がけました。
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ライトは建物だけではなく、内部の装飾、家具、食器などのもデザインしました。赤や黄色の丸が鮮やかで可愛らしいリズミカルなデザインです。
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ライトが手がけた「ピーコック・チェア」は背もたれが六角形で、座る人が最も美しく見えるようにデザインです。
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「ユーソニアン住宅」とは、ライトが1930年代後半から取り組んだアメリカの中流家庭のためにつくった低価格で美しい住宅のことです。会場には木造のユーソニアン住宅・ベアード邸(マサチューセッツ州、1940年)を手本とした原寸大の壁や家具が展示され、ベンチや椅子に座ることもできます。
また、展示室手前のモニターでは10分ほどの動画「フランク・ロイド・ライトとの対話」が放映されています。動画は、教師である母親がライトが生まれる前から息子を建築家にすることを決意していた、というエピソードから始まります。1953年、85歳のフランク・ロイド・ライトがインタビューに応える、低い声でゆっくりとした語り口を聞くことができます。
バラエティーに富むミュージアムショップ
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ミュージアムショップには、本展覧会にちなむさまざまなオリジナルグッズや書籍が並んでいます。
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このパナソニック汐留美術館には、フランスを代表する画家ジョルジュ・ルオー(1871〜1958)の絵画、『ミセレーレ』『悪の華』などの代表的な版画作品が約260点収蔵され、「ルオー・ギャラリー」にて一部が常設展示されています。
展覧会情報
展覧会名 | 「フランク・ロイド・ライト――世界を結ぶ建築」 |
会期 | 2024年1月11日(木)〜 3月10日(日) ※会期中、一部展示替 前期1月11日~2月13日、後期2月15日~3月10日。 2月15日以降に再入場の場合は、半券の提示で100円割引。 |
会場 | パナソニック汐留美術館 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F |
休館日 | 水曜日(ただし3月6日は開館) |
時間 | 10時~18時(入館は17時30分まで) |
入場料 | 一般:1,200円、65歳以上:1,100円、大学生・高校生:700円、中学生以下:無料 |
ホームページ | https://panasonic.co.jp/ew/museum |