東京での待望の個展!「柴田あゆみ 切り絵展 -ひかりの集い-」速報レポート!(8/8~8/19)

「柴田あゆみさんっていう切り絵の凄いアーティストがいるので、一度取材してみない?」

楽活編集部のM氏に誘われ、作家ご本人のアトリエで作品を拝見したのが2020年3月。幾層も重ね、光を当てて立体的に表現する彼女の切り絵は、まるで紙の彫刻作品。今まで見たことのない斬新な個性と発想力に、取材陣一同圧倒されたものでした。

それ以来、楽活では柴田あゆみさんを全面的に応援。アトリエ訪問レポートを皮切りに、頻繁に連絡を取らせて頂き、銀座・和光での次の個展「柴田あゆみ 切り絵展 -ひかりの集い-」を心待ちにしていました。

当初6月に予定されていた個展は、新型コロナウイルスの流行拡大に伴い一旦延期に。一時は、ひょっとしたらこのまま中止になってしまうのかな・・・とも危惧しましたが、当初より約2ヶ月遅れたものの無事に開催の運びとなりました。

そこで、私たち楽活では、展覧会初日と3日目にそれぞれ展覧会場を訪問。会場風景を撮影させて頂き、あゆみさんから特別にお話をお伺いすることができました。作家本人のコメントも交えつつ、展覧会レポートをまとめました!

銀座・和光に幻想的な切り絵の森が出現!既成概念を覆す大きさに度肝を抜かれた!

さて、今回の個展は、銀座・和光の地階での開催。早速作品を見ていきましょう。

銀座・和光の地階への階段を降りると、まず目に飛び込んできたのが天井まで届くような巨大な切り絵の森。何十にも重なった等身大切り絵のレイヤーが、床照明の優しい光に反射して、幻想的な雰囲気を醸し出しています。

光以外には特別な仕掛けは使われていないのに、切り絵の森の中にいると、霧の中に包まれているような不思議な感覚を覚えました。

「ときの薬草たち」

木々の太い幹に混じって1枚1枚細かく彫り込まれた木の葉や細い枝も見えていますね。これを1枚1枚彫り込むのにどれだけ手間暇がかかっているのでしょうか・・・。

ぜひ、切り絵の森の中に深く入って、色々な場所からインスタレーション全体を観察してみて下さい。見る角度、方向によって、非常に多彩な表情を楽しむことができます。あゆみさんが託した「みらいの東京銀座」への想いをたっぷり感じながら、あなただけのイメージを膨らませてみるのも面白いと思います。

そして、切り絵でできた純白の洞窟を最奥部へと進んでいくと、そこではさらに切り絵が!様々な形のガラス瓶に入った小さな切り絵作品と出会えました。

幾層にもつながった巨大な切り絵の中に、瓶やポットに入れられた手のひらサイズの切り絵。あゆみさんの説明によると、一つ一つの瓶やポットは、それぞれ存在する次元が違った、独立した宇宙を表現しているそうです。

インスタレーションの全体像については、このように説明してくださいました。

「私たち人間から見たら、細菌や細胞の世界が見えないように、宇宙の外から見たら私たち人間の世界は見えないミクロの世界です。

しかし、見えない細菌・細胞が私たちの体や大地を作り、私たち生き物が存在し、母なる地球が存在し、大宇宙が存在しています。すべては見えないつながりで成り立っているんです。

制作開始当初より全体の作品テーマとして“見えない繋がり”を表現したいと考えていました。ガラスの作品はミクロの世界、つまり私たちの星や宇宙を表し、大きなインスタレーションの森は、私たちの未だ知り得ない“宇宙の外”からの目線を表しています。」

そして、瓶に入ったミクロの作品群の中で、ひときわ心を惹かれたのが「みらいの東京銀座」です。作品の最上部を見てみると、時計塔みたいなものが!

「みらいの東京銀座」

これは、ひょっとして銀座・和光の時計塔を表現しているのでは?!そう思ってあゆみさんに聞いてみると、

「そうです!この時計塔は、銀座・和光さんの時計塔に、”未来の銀座”への思いを託して、彫り込んでみました。

江戸時代には、このあたりは緑や水辺に恵まれ、人間と様々な生き物、環境が調和していたと伺いました。私は、昔のように人間が動植物や環境と調和した生き方を作品の中で提案したいと思っているんです。それには、世界の中でも日本が誇る高い技術力がカギになると思っています。

日本の中心である東京、銀座、その象徴である銀座・和光さんの時計塔を中心として、ここから新しい更なる調和の世界が広がっていけばいいな、という思いを込めて制作しました。」

見どころたっぷり!バラエティに富んだ作品群

本展の見どころは切り絵の森だけではありません!その他にも、あゆみさんが「切り絵アーティスト」としてこれまでキャリアを積み重ねてた作家としてのルーツが感じられる作品群が出揃いました。

「星の記憶」

あゆみさんの切り絵のオリジナリティの源泉は、既成概念を覆す「立体感」。たしかに、一つ一つの切り絵は平面上で彫られた2Dの作品なのですが、平面作品である切り絵に対して、縦に数十枚重ねて光を当てる仕掛けを編み出したのが、あゆみさんの真骨頂なのです。

驚くほどの奥行きと深みが感じられる3D切り絵を、ぜひ心ゆくまで体感して頂ければと思います。

「唄うとり」

この「唄うとり」は切り絵と銅版画と単色版画を組み合わせた非常に味わい深い作品。あゆみさんは、ニューヨークでのアートスクール時代に切り絵以外にも様々なジャンルのアートを学んできましたが、中でもとりわけ熱心に興味を持って取り組んだのが銅版画でした。

特に版画部分には注目です。大きな木の幹の中では、どこか懐かしさを覚える生活風景が広がっています。驚くほど細かい線描は、まさに銅版画ならではですよね!

「木の家・まる鏡」

そして、こちらは同じく銅版画作品をプリントした、ハンディサイズの「まる鏡」です。缶バッジかな?と思って裏返したら、鏡になっていました。

「ピアス/イヤリング」各種

最後にご紹介するのが、切り絵で制作されたピアス/イヤリング。様々なデザイン、大きさで白と黒の2色が用意されています。

「ピアス/イヤリング」

この紙のピアス/イヤリングは紙と布の中間的な特殊素材でできているので、非常に丈夫なんです。だから汗ジミやファンデーションなどによる汚れがついた時は、洗濯も可能。

汚れた場合は、薄めた中性洗剤に浸して軽く叩き洗いをし、すすいだ後タオルなどを押し当てて水分を取り、乾燥後はハンカチ等の上から低温でアイロンをあてればOK。これは心強いですよね!

「調和の森・キャンドル」/キャンドルの炎の部分は、実際に火をつけて燃やすのではなく、LEDランプで表現されています。炎の形をした先端部分がユラユラ揺れる仕様なので、かなり臨場感がありました。

最後に、こちらの「調和の森・キャンドル」をご紹介。あゆみさんの切り絵は、一枚の横長の切り絵をぐるぐると何十も「巻く」ことでも、奥行きや深みをつけることに成功しているんです。見た目以上に手間暇やこだわりが詰まった秀作だと感じました。

そうそう、特に繊細に表現されている作品については、より楽しめるように、観賞用の虫眼鏡が設置されています。これで、ガラス瓶に鼻をぶつけずにスマートに鑑賞できますね!

「見えないところにこそ、手を抜かずきちんと仕事をするのが大事だと考えています。」と語るあゆみさん。ぜひ隅々まで作品をじっくり観察して、あゆみさんのこだわりを見つけてみてくださいね!

今年のお盆は銀座・和光へぜひ!19日まで開催中です!

長らく海外での活動が長かった柴田あゆみさんにとって、今回の銀座・和光での個展「柴田あゆみ切り絵展 -ひかりの集い-」は、東京での個展は、日本でもっと多くの人々に彼女のアーティスト活動を知ってもらえるまたとない機会となりました。

現在開催中の個展が終わった後は、9月から山梨県富士川クラフトパーク内にある「切り絵の森美術館」で大規模な個展が開催予定。こちらは、あゆみさんの切り絵作家としてのこれまでのキャリアを総括するような集大成的な展覧会になりそう。

こちらも非常に楽しみですよね。今後も楽活では柴田あゆみさんを全力で応援していきたいと思います!

文中写真提供 ©Shoji Shohei 

展覧会基本情報

銀座・和光「柴田あゆみ 切り絵展 -ひかりの集い-」
開催日時:2020年8月8日(土)~8月19日(水)
開催場所:銀座・和光 本館地階
(〒104-8105 東京都中央区銀座4丁目5-11)
公式HP:https://www.wako.co.jp/events/2809

柴田あゆみさんのプロフィール

横浜出身。2007年にニューヨークに移り、国立アカデミーにて版画とマルチメディアを習得。2015年よりパリに移り、パリ市運営のアトリエ59リボリにて2年間の展示と制作活動を行う。パリ滞在中、フランス最大のペーパーアーキテクト会社より支援を受け、4メートル四方の大型作品の展示やフランス老舗ブランドrepetto本店にて特別展示や、その他多数展示を行う。2018年より横浜を拠点として活動中。同年、イタリアミラノマルペンサ空港での大型作品の展示や、ドイツ国際アートトリエンナーレにて入賞。2020年は、銀座・和光での個展(8月8日~8月19日)、富士川・切り絵の森美術館(9月12日~)など、より一層の活躍が見込まれている。

公式HP:https://www.ayumishibata.com/
公式Facebook:https://www.facebook.com/ayumishibatart/
公式Instagram:https://www.instagram.com/ayumishibatart/?hl=ja

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