ニューヨーク・コンフィデンシャル エピソード6

このコラムでは、「どうせ私なんか…」というセリフが頭に浮かんでいた日本での私が、多様性の都といわれているアメリカのニューヨークに47日間滞在し、半歩ずつそのマインドを変えていき、『“インドミタブル(不屈の精神)”MAYUMI』になるまでの軌跡を辿っています。

★過去のエピソードはそれぞれ下記URLからどうぞ!
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep1-20221124/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep2-20221221/
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#6 通勤経路(どうやって、毎日通おうかな?)

ブルックリンとNYの中心マンハッタンの位置関係はこんな感じ。ベッツィーの家から娘の家までは私の足では25分くらいかかる。地図を見ても結構な距離だ。地下鉄で一駅分、最寄り駅は、ノストランド駅、娘曰くゾンビストリートを通らねばならない。すごく怖がりのところとへいっちゃらのところの両極端を併せ持つ私。

このストリート、まあ危ない時間帯でなければ平気だろうと思った。久しぶりに地下鉄に乗るのでムコ殿がついてきてくれて、メトロカードを3枚くれる。スロットに入れるやり方も教えてくれた。

礼を言って一人になってからゲートにそのカードを入れてみると、バーが全く動かない。カードにお金をチャージしていないのかと思い、もう一枚入れてみたがピクリとも動かない。

隣のゲートでは、カードを挿入せず、ポンとゲートを飛び越えている無賃乗車の輩もいるのに、私は一人でゲートバーの前で立ち尽くしている。

何をやってるんだか。

3枚目を入れようかと思ったが、ゲートの故障かと思ってバーを思い切り押したらぐるりと回転。「ああそうだった。ゲートを通るためにはバーを押すんだった」後ろに駅員もいたのに教えてもくれず、日本のように「お通りください」とばかりにバーが自動で開くんじゃなかったんだ。自分の力で押すのがここでの基本。「覚えました」。

が、ホームの隅々までおしっこ臭く構内全体がトイレのよう。

結局トータルでみると、歩くのが一番ということになり、それ以降、ソロ活家政婦は歩いて通勤ということになり、道の組み合わせを変えてはこの距離を歩いて通った。そのうち、危険な時間もなくなっていった。

#7 Beggarにベッツィーが挨拶を

ベッツィーの家から娘のアパートまでの道すがら、1ドルをせがむ物乞いが何人かいる。日本では、お乞食さんは見かけなくなった。ホームレスの人はいても、そういう行為は迷惑行為として警察に通報されたりするからできなくなったのかな。

それなのに、ベッツィーはその中の一人と顔見知りらしく言葉を交わし始めたので驚いた。それでこそ、ベッツィーだ。

#8 食料品(ミスターメロンって何者?)物価高(アイス買うにも手が震える)

ミスターメロンという生鮮食料品が近所にあった。コリアン系の店で、駅の近くに同じような店の作りと名前の店が増えていて周辺の人にとても人気のようだ。その店ができるまでは、よく見ないと中で腐りかけているような野菜も平気で売られていたそうだ。日本では見かけない韓国製の車や電化製品も品質が悪くなく、リーズナブルなので売れている。当然、NYにはコリアンがとても多い。

あたりまえだけど、お客さんが欲しがっている品質水準でリーズナブルな値段の物なら受け入れられる。日本では曲がったキュウリや不揃いな野菜が敬遠されているけど、野菜は新鮮で充分と実感した。

物価がインフレで上がっているうえに円安で、日本円に換算するととんでもない値段になっている。メンタルに悪いので換算は止めた。肉類はもともと日本に比べて安いはずだったが、鶏肉のパッケージが6ドルくらいだったのがあっという間に9ドルになったと娘が嘆いていた。

おいしそうなアイスクリームを食べるために20ドル持って出かけている。

#9 Free Food Refrigerator(コミュニティ冷蔵庫)

派手にペインティングされた冷蔵庫があった。「Feed Each Other」と書いてある。食べ物が乏しい人のために寄付の食材を入れておくストリート冷蔵庫だそうだ。

「えぇーっ、この中の食品は食べても大丈夫なの?腐ったものとか毒とか入れてあったりしたことはないの?」とベッツィーに聞いたらそんなことは想像したこともないと言っていた。

空き缶が散乱しているのは、ここで、そのまま食事をしている人もいるのかな。日本では、昔、公衆電話に置き忘れたように置いてあったドリンクが毒入りだった事件やらがあったためか出所不明の飲食物を口に入れてはいけないと多くの人が思っている。

「うう~ん」

この冷蔵庫の存在は、大災害の折に沸いてくる自分も何かできることをしなければというボランティア精神の象徴か、キリスト教の相互扶助の象徴か?道端にネズミやハトやラットの死骸が見られるほど、視線を下に向けると強烈に汚いのに、その同じ道端に人を信じあう心が併存していて、「まいりました!」と頭を垂れた。

#10 駐車事情(路駐無料)

車はみんな路上駐車だ。場所取りが大変なのでめったなことで車を使わない。空いているスペースはすぐに別の車に停められてしまうから。一週間に一回、ロードスイーパーが回ってくる。逆にその時には車をどかしておかないと250ドルの罰金だ。その時間帯は清掃予定のない別の道路に駐車するか、それができなければその時間帯は、目的地のないドライブをしていなければならない。

ロードスイーパーの日には、ムコ殿が車を動かさなければならない「ついでに」迎えに来てくれた。彼は、古いシボレーを「るみちゃん」と名前を付けて愛おしんでいる。どこらへんが、「るみちゃん」なのか私にはよくわかりません。

#11 衝突(いつものことだけど)

 渡米前から娘の指示は、たくさんあった。

「自宅でグラフィックデザインの仕事をしている彼の邪魔をしないようにして」
「泊まる所は近くに自分で見つけて」
「空港の送迎はできないと思って」
「みんなへの土産はよく考えて相手が欲しいものを持ってきて」

ついては喜ばれるお土産リストは「これ」と送ってきた。よく見ると、娘が欲しい物ばっかり。

そして お母さんに手伝ってもらいたいこと(ソロ活家政婦のお仕事)は赤ん坊の見守り、オムツ替え、入浴、自分たちの食事だそうだ。ちなみにリクエストレシピは決まっていて、娘は辛いもの好きで私が食べたこともないような韓国料理もあり大苦戦。

ガス台、調理台の背は高く、食器、調理器具、テーブルウェアすべてがヘビィ。それらを前に小人になってしまった気分の私の体力はすぐに失われていった。

一方、リビングから娘が授乳をしながらずっと見ていて、こちらとしては見張られている気分で緊張する。

「香辛料を測った?」
「肉を切った後の包丁を洗ってから、野菜を切った?」
「素手でおにぎり握ってないよね?」

等々、ありがたいアドバイスの連打。

何と言っても出産直後、今回だけは一言も口答えをしないでおこうと思って来たものの、ヒュルヒュルヒュル瞬く間に気力も萎んでいった。そんな2人の様子を見てムコ殿、そわそわして、小さなシンクにたまっていた汚れ物を洗い出す。私たちの険悪なムードがなかなか収まらないので、一度洗った食器を何度も洗っている。

娘がやっと ベッドルームに去っていくとムコ殿は出てきて、ハグをして、

「あなたたち2人には過去のトラウマがある」
「カウンセリングに行くべきだ」

とアメリカドラマで聞き及びのあるセリフを。

私を慰めようと一生懸命なのは伝わりました。けれど、アメリカ人の典型的なセリフなんだと思った途端、おかしくなってしまった。

おかげで再び元気が出てきた。 さあ、歩いて我が家のようなベッツィーの家まで帰ろう。

今回は、娘との触れあいのハラハラぶりとソロ活家政婦の通勤路をスケッチしてみました。その後、通勤路を越えてマンハッタンに行って、いろんな人に出会いました。次回もご覧いただけますように。

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