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17年ぶりの続編ついに!精神科医・伊良部シリーズの奥田英朗さんおすすめ小説5選

私の大好きな小説シリーズが、なんと17年ぶりに帰ってきました! 直木賞作家でもある奥田英朗さんの人気作品、精神科医の伊良部先生シリーズです。

奥田さんはヘンテコで強烈なキャラクターが登場するユニークな小説を多く世に出されており、読みながら大笑いしたりニヤニヤしたり、ときにはホロリと涙を誘われることも。「とにかく面白い作品が読みたい!」とエンターテインメント小説をお探しの方におすすめの作家さんです。

この記事では、最新作の『コメンテーター』を始め、おすすめの作品を5つ紹介していきます。

イン・ザ・プール

さっそく新刊『コメンテーター』を紹介したいところですが、シリーズ第1作『イン・ザ・プール』を先に紹介させてください。

精神科医・伊良部一郎先生のもとには、水泳にハマりすぎてやめられない患者、みんなが私を見ていると妄想を抱く患者など、さまざまな患者が訪れます。

伊良部先生は優しく丁寧に患者の話を聞く……ことはなく、誰が相手でもマイペース。仕事そっちのけで自分もプールに行きたがるなど、幼い子どものような言動に、患者のほうが呆れてしまいます。

しかし、伊良部先生と関わるうちに、患者の悩みは予想外の方向で解決します。これは先生の思惑通りなのか? それとも偶然……?

本音と建前を使い分けなければいけない私たち社会人にとって、本音しか言わない伊良部先生という劇薬は深く刺さるはず。私たちが言いたくても言えないことを伊良部先生が言ってくれるので、読後感はスッキリ爽快。

本作に続く、直木賞を受賞した『空中ブランコ』、『町長選挙』もおすすめです!

コメンテーター

『町長選挙』から17年、新刊『コメンテーター』で伊良部先生が帰ってきました!

表題作の短編は、コロナ禍で外出制限と緩和が繰り返され、多くの人が疲弊していたあの頃が舞台。あるテレビ局のワイドショーのコメンテーターに伊良部先生が抜擢され、精神科医としてコロナ禍に鋭く斬り込みます。

的を射たコメントも言うものの、命に関わる病気なのに発言が軽い……。クールビューティーなナースのマユミちゃんもテレビを自分のバンドの宣伝に使うなど、やりたい放題。

番組はしっちゃかめっちゃかな方向へ進みますが、このお話の中で本当に伊良部先生の治療を必要としていたのは誰なのか? その人は病を克服することができるのか? 意外なオチに驚かされるお話でした。

オリンピックの身代金

伊良部先生シリーズ以外にも多くの著作があるので、一部ですがご紹介します。まずは奥田さんの代表作『オリンピックの身代金』です。

ときは1964年。来る東京オリンピックに誰もが沸き立つなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に、「オリンピックを妨害する」という脅迫状が届けられます。

実行したのは、東大の大学院生である島崎国男。貧富の差や地域の格差への憤りという動機はあったものの、成り行きも手伝ってテロリストになっていきます。

東京大学の院生という一般的には羨ましい立場の青年が、テロリストに「闇堕ち」するお話ですが、オリンピックのために犠牲にされた人々や島崎を逮捕した警察側のその後の対応などを踏まえると、本当は別のところに闇があるように思います。市民と国の関係を扱った、時間が経っても色褪せない名作です。

向田理髪店

2022年にベテラン俳優・高橋克実さん主演で映画化され、話題となった作品でもあります。

舞台は過疎化が進む、北海道の寂れた町(筆者は夕張市を思い出しました)。少子高齢化や介護など、人口が減少するこの町には重苦しい問題が。

そんな田舎の町に、会社を辞めて向田理髪店を継ぎたいと札幌から帰ってきた息子。店主の視点から、問題もあるけれどあたたかさのある田舎の暮らしや若者への思いが綴られます。

現代の日本のあらゆる地域が抱える問題を扱いますが、重くなりすぎず、あたたかな気持ちになれる小説です。

我が家の問題

家族を題材とした短編作品集。私は小説を読む前にラジオドラマで収録作の『夫とUFO』を聴いたのですが、作中の旦那さんが「UFOと交信できるようになった」と言い出すなど、強烈なインパクトに一瞬で心を奪われました。

「我が家の問題」という表題のとおり、新婚なのに家に帰るのが嫌になった夫、両親が離婚するかもしれないと悩む女子高生など、さまざまな家庭の問題が描かれます。どれも物凄く深刻というわけではなく、しかし共感もできるような……絶妙な問題なんです。

『夫とUFO』の旦那さんはふざけているのではなく、いたって真面目にUFOの話をします。旦那さんを心配し、目を覚まさせようと奔走する奥さんが可愛らしいので、本作の中で特におすすめです!

まとめ

奥田英朗さんのおすすめ小説を5つ紹介してきました。ユニークな人物と描写の賜物なのか、シリアスもコメディも面白い作品ばかりです。

新刊『コメンテーター』はシリーズ4作目ですが、本作から読み始めても全然問題ありません。この作品を読んで、伊良部先生とマユミちゃんの活躍に興味をお持ちになったら、ぜひ1作目の『イン・ザ・プール』も読んでみてほしいです!

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館めぐりの楽しさを発信。西洋美術、日本美術、現代アート、建築、装飾、ファッションなど、扱うジャンルは多岐にわたる。人間より猫やスズメに好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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