伝統文化

【初心者必見】能は難しくない!好きなジャンル別でおすすめの能4選

能は、日本を代表する芸能のひとつで、2008年にユネスコの世界無形文化遺産にも登録されています。

ですが、能と聞くと「なんだか難しそう…」「ハードルが高い」と思う人も多いのではないでしょうか?

実は能は、室町時代には庶民など幅広い層に親しまれており、現代でいうとカラオケのように自分たちでも能の謡(うたい)をして楽しんでいたそう。つまり、本来はそこまで身構えなくても充分楽しめる、エンターテイメントなんです!

とはいえ、謡に使われている言葉は古文のものですし、時代背景も違います。

そこでおすすめなのが、自分の興味にぴったりの演目を観てみることです。

『源氏物語』が好きな人であれば、嫉妬に苦しむ六条御息所を描いた『葵上』。刀剣好きな人であれば、名剣・小狐丸の誕生を描いた『小鍛冶』といったように、好きなジャンルに関係する能であれば、すっと頭に入りやすく、能を観るのが初めてでも面白さを感じやすいです。

それでは、ジャンル別におすすめの能をご紹介していきます!

『源氏物語』の名場面が能に!六条御息所が主役の『葵上(あおいのうえ)』

光源氏の正妻・葵上への嫉妬に苦しむ六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)のエピソードは、源氏物語のなかでも特に印象的なエピソードです。身分が高く、美しい容姿にも恵まれ、教養も豊かな六条御息所が、自分を抑えられなくなる姿は、現代の私たちの心にも深く刺さります。

『葵上』は、六条御息所の身を切られるような思いを能で表現した傑作!数ある演目のなかでも、トップクラスの人気があります。

【あらすじ】

光源氏の正妻・葵上は、物の怪にとりつかれて寝込んでいました。あらゆる手を尽くしても回復せず、梓弓(あずさゆみ)の音で霊を呼ぶ儀式を行い、物の怪の正体を突き止めることに。物の怪の正体は、六条御息所の生霊でした。

源氏を愛する六条御息所が嫉妬のあまり、生霊となって葵上を苦しめていたのです。六条御息所は、葵上の魂を奪おうと、枕のそばに行き、うち叩こうとするなど呪いをかけ姿を消します。

葵上は急激に弱り、強い法力を持つ修験者・横川(よかわ)の小聖(こひじり)が招かれます。横川の小聖が祈祷を始めると、六条御息所は鬼女の姿を現し……。

【見どころ】

梓弓の音に招かれて六条御息所の生霊が登場するシーンから、葵上の枕元に近寄るシーン、そして鬼女の姿となって襲い掛かるシーンと、スリリングな展開に目を離せません。

全体を通して、六条御息所の激しい嫉妬心や悲しみ、そしてどんなに感情が高ぶっても消えない高貴さが表現されていて、非常に見ごたえがあります。恐ろしい般若の面をかぶった姿は、壮絶な美しさを感じさせます。『源氏物語』が好きな人であれば、より心を揺さぶられるはずです。

ちなみに葵上は役者が演じるのではなく、舞台上に置かれた小袖で表現されます。それにより、なすすべもなく苦しむ葵上の姿と、狂わんばかりの嫉妬にさいなまれる六条御息所の姿が、より鮮明に浮かび上がってくるようです。

【参考動画】

『平家物語』ファンにおすすめ!知盛と弁慶の壮絶バトルを描いた『船弁慶(ふなべんけい)』

義経や弁慶、静御前など、『平家物語』の誰もが知っている登場人物が勢ぞろい!『葵上』と同じくらい、上演回数の多い作品です。優美さと豪快さが両方味わえるので、お得感があります。

【あらすじ】

平家討伐で活躍した源義経ですが、兄・頼朝と不仲になり、追われる身に。弁慶や従者とともに西国へと向かいます。義経の恋人である静御前も一緒に旅をしていましたが、弁慶のすすめで都へ帰すことにします。別れの祝宴で、静御前は烏帽子をかぶった姿で、謡いながら舞い、義経の無事を祈ります。

義経一行が乗る船が海へと漕ぎ出すと、嵐が巻き起こり、平知盛をはじめとする平家一門の音量が出現。恨みを晴らすべく襲い掛かってきます。弁慶は必死に祈りますが……。

【見どころ】

前半と後半でガラッと雰囲気が変わるのが、この曲の最大の魅力です。

前半の見どころは、静御前の別れの舞。優美な雰囲気に思わずうっとりしてしまいます。後半の見どころは、知盛の怨霊が襲ってくる場面。荒々しくなぎなたを振り回す姿は、息をのむほど壮絶です。対抗する弁慶の、勇敢さも必見ですよ。

海でのシーンは、シンプルな船のつくりものだけで見せます。船をこぐ船頭は、所作や弁慶とのやりとりで、荒れ狂う海を表現。観客を物語の世界へと引き込みます。

ちなみに義経を演じるのは、子方と呼ばれる子役です。謡う声がとっても可愛らしく、ほほえましい気持ちになれます。弁慶との強い絆を感じさせる会話にも注目です!

【参考動画】

刀剣好きにおなじみの『小狐丸』誕生秘話!稲荷大明神が活躍する『小鍛冶(こかじ)』

平安時代につくられたとされる名剣『小狐丸』。今は所在不明ではありますが、数々の名作を生み出した刀工・小鍛冶宗近(こかじむねちか)が打ったとされ、刀好きの間ではおなじみの刀です。人気ゲーム『刀剣乱舞』の登場人物のモチーフにもなっています。

『小鍛冶』はそんな『小狐丸』の誕生エピソードを描いた作品で、スピード感のある展開と、ほぼ全部が見どころといったエンターテインメント性の高さが魅力です!実際に刀を打つシーンもあり、刀剣ファンにはたまりません!!1時間くらいでサクッと終わるので、初めて能を観る人でも観やすいです。

【あらすじ】

京都の三条に住む小鍛冶宗近は、帝の使いから剣を打って奉納せよとの勅命を受けます。しかし、一緒に剣を打つ相手がいないことに困り、伏見の稲荷明神に参拝することにします。

すると、不思議な雰囲気の子どもが現れ、古代中国や日本の剣の持つ力について語り、宗近を励まし、姿を消します。

帰宅した宗近が剣づくりの用意を整えて、神に祈りをささげると、稲荷明神が出現。宗近と一緒に、『小狐丸』を打ち、雲に乗って稲荷山へと帰っていきます。

【見どころ】

謡いも軽やかで動きもキレキレなので、ワクワク感たっぷりな作品!

前半の剣の持つ力について語りながら舞うシーンでは、ヤマトタケルが火攻めにあって剣で草を薙ぎ払うシーンを再現。後半の宗近と稲荷明神が剣を打つ場面では、少しずつ剣ができあがっていく様子をスリリングに描きます。そしてラストの山へ戻っていくシーンでは、稲荷明神が豪快に飛び跳ねます。

ストーリーも分かりやすく、おめでたい曲なので、とにかく楽しい能を観たい人にはイチオシです。稲荷明神が完成した刀を披露するシーンは、すごくかっこよくて華やかですよ。

【参考動画】

鬼や妖怪好きなら思わず夢中に!蜘蛛の糸の演出がすごい『土蜘蛛』

妖怪退治や鬼退治は、実は能の得意ジャンル!手に汗握るパワフルなバトルを見られる作品がいっぱいあります。

そのなかでも、最も人気が高く、上演回数の多いのが『土蜘蛛』です。和紙で作った蜘蛛の糸が舞台を飛び交う様子に、思わずテンションが上がってしまいます!

子ども向けのイベントで取り上げられることも多く、たまに能楽堂のロビーなどで蜘蛛の糸を投げる体験コーナーが設けられていることも。

目の前で繰り広げられる妖怪退治を、ぜひ楽しんでください。

【あらすじ】

病で伏せる武将・源頼光(みなもとのらいこう)に、召使の胡蝶(こちょう)が薬を持ってきますが、頼光の病は重くなるばかりです。

夜更けに妖しい僧が現れ、古今和歌集の一節を口ずさみながら、頼光に蜘蛛の糸を投げかけます。頼光が枕元の太刀を抜いて反撃すると、その僧は姿を消します。

心配して駆けつけた独武者(ひとりむしゃ)に、頼光は一部始終を語ります。独武者は流れた血をたどり、古塚を見つけます。従者たちと力を合わせて崩すと、中から土蜘蛛の精が登場。独武者たちは、次々と蜘蛛の糸を投げる土蜘蛛の精と激しく戦い、なんとか勝利し、都へと帰っていきます。

【見どころ】

蜘蛛の糸が次々と投げられるシーンは、迫力満点!白い糸が舞台をどんどん埋め尽くし、土蜘蛛と戦う独武者とその従者の刀に糸が巻きつく様子は、ビジュアル的にもとても美しいですよ。能の静かなイメージが吹っ飛ぶくらい、ショー要素が強い場面です。

土蜘蛛のダイナミックな最期にも要注目!エンターテインメント性たっぷりの作品にふさわしい、ド派手なラストが待っています。

ちなみにこの蜘蛛の糸を使った演出は、江戸時代から明治時代に活躍した金剛唯一(こんごうただいち)が考えたもの。もし彼がいなければ『土蜘蛛』はここまで人気のある曲にならなかったかもしれません。

【参考動画】

まとめ

厳島神社の能舞台。能舞台には必ず松が描かれています。

ご紹介した4作品は、どれも見ごたえのあるものばかりです。そのジャンルに興味のある方なら、予習しなくても理解しやすいと思います。長引くコロナ禍の中で、初心者向けの良質な解説動画などもYouTubeを探せばたくさん見つかるようになりました。

ぜひ、これを機会に、まずは自分の好きなジャンルの関連作品として、気軽に能を観てみてはいかがでしょうか?

川瀬ゆう

川瀬ゆう

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アート好きのライター。大学時代は能楽部に所属し、実際に舞台に立ったことも。能や歌舞伎といった伝統芸能、絵画、映画など、興味の赴くままに楽しんでいます!楽活ではわくわく感のある記事を発信していきたいです。

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