自然光が射す茅ヶ崎市美術館でフランシス真悟の展覧会が開催!

作家・フランシス真悟はアメリカ西海岸の青い空と海のイメージの街で生まれ、幼い頃から自然の豊かな色に触れ、色の重なり、組み合わせによって絵画作品をつくり出しています。作品に近づいたり、横から眺めたり、時間や天候の変化を受けて、作品は変わって見えます。美術ってちょっと難しいと思っているかたにも、作品を楽しむ機会になります。

「フランシス真悟-色と空間を冒険する」展は、フランシス真悟による1980年代の初期からの多様な絵画作品約100点を展示し、2024年6月9日(日)まで神奈川県の茅ヶ崎市美術館で開かれています。

自然光が射す茅ヶ崎市美術館

茅ヶ崎市美術館

神奈川県茅ヶ崎市は相模湾に面し、温暖な気候に恵まれています。茅ヶ崎市美術館は1998年に開館し、日本庭園・高砂緑地の、茶室や池がある松林を抜けた小高いところにあります。

美術館の屋根はゆるく弧を描く形で、鳥の軽やかな翼や海の波をもとにデザインされました。自然光を取り入れる展示室が今回の展覧会をより魅力的にしています。

エントランスホール

3月午後のエントランスホールには光があふれていました。窓には作家自身が撮った空の写真が展示されています。土地や時間によって変わる空の景色は作家にとって作品制作のインスピレーションになったそうです。

テーブルには色鉛筆とクレヨンが置いてあり、毎日変わる「お題」を見て、紙に色を塗って、インスタグラムへの投稿を呼びかけています。内覧会の日のお題は「今日の空はどんな色かな」でした。

フランシス真悟について

5章の作品解説をするフランシス真悟(作家が示しているのは「Periphery(rose)」(1996年))

作家・フランシス真悟は、1969年、アメリカ西海岸のカリフォルニア州、サンタモニカで生まれ、日本とアメリカを拠点に国際的に活躍し、色を重なり合わせ、色を組み合わせて、穏やかで静かな絵画作品をつくり出しています。

現在は鎌倉とロサンゼルスに拠点をおき、国内外の多数の個展やグループ展に参加。

パブリック・コレクションとして、JPモルガン・チェース・アートコレクション、スペイン銀行、フレデリック・R・ワイズマン財団、森アートコレクション、セゾン美術館、東京アメリカンクラブ、アメリカ大使館大使公邸に作品が収蔵されています。

父親は20世紀アメリカを代表する画家サム・フランシス、母はメディア・アーティストの出光真子です。

天候や時刻による色の変化を楽しむ

1章「Infinite Space インフィニットスペース|無限の空間」風景

「展示室1」では1・2章を展示しています。展示室入口から見て右側が1章5点、左側が2章6点。

1章「Infinite Space (「luminous abundance」)(2023~2024年)部分 

1章は鮮やかな色が画面の大半を占め、下部に異なる色が入っています。近づいて見ると、細い線が横方向に何重にも重なって描かれ、立体的にも見えてきます。

左の2点は2章、右の1点は1章

2章の円形作品「Starry Radiance」(2024年)は、展示室のくぼんだ空間を床の間、神棚のように見立てたものです。床に映った姿も作品の一部に見えます。

2章「Interference インターフェアレンス」風景

2章の3作品は四角いキャンバスの中に円が描かれています。作家はギャラリートークで、「時間や天候による光の変化による色の違いを見てほしい」と語りました。天井から自然光が入る構造を生かして制作された新しい作品です。

自然光を受けて色が変わって見えるのは、顔料に含まれている粒子に光が反射し、見る角度によって色が変化するからです。円の内部、円の縁、円の外部の色を比べてみてください。

ここでは毎時15分間は自然光を入れないように設定されています。写真では色の違いをうまく伝えられないので、是非、美術館にいらして、光による色の変化をご覧ください。

地下に向かう階段にも自然光が注ぐ

作品の中に存在する

3章「Into Space イントゥスペース|空間の中へ」 フランシス真悟「Into Space (violet-turquoise)」(2013年)

地下の「展示室2」には3・4・5章が展示されています。3章には4点の大作。写真の作品では「中央の線から描き始め、上下に描きすすめ、自分が線の中に存在するように感じられるようになった」と、作家は語ります。

3章「Into Space イントゥスペース|空間の中へ」風景

右の「Matrix(green-violet)」は、2018年にセゾン美術館の「レイヤーズ・オブ・ネイチャー その線を超えて」展で、父親のサム・フランシスの作品「Untitled 1978」と並べて展示されました。この展覧会では、フランシス真悟とドイツの芸術家クリスチャン・アヴァが同美術館所蔵のサム・フランシス作品を選び、呼応する作品を制作したものです。

また、父親の初期作品「ホワイトペインティング」(1950年)は国立西洋美術館に所蔵され、企画展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」(5月12日まで開催)にも展示されています。縦約2mの抽象画にはたくさんの色が渦巻いて奥行きが感じられます。

4章「.Blue’s Silence ブルーサイレンス|青の静けさ」風景

4章は3章の奥の空間に展示されています。3点並んだブルーの絵画はそれぞれ異なるブルーで、深海のような色の深さを感じました。

30年間の作品86点が壁を埋める

5章「Daily Drawing ディリードローイング」風景

地下の「展示室2」にも天井から自然光が入ります。5章は壁一面をおよそ30年間の作品、新作を含む86点が埋め尽くしています。一番古い作品は1993年作家24歳、一番新しい作品は今年2024年作家55歳の作品です。

D01~D26と記された作品は、2020年頃、コロナ感染症ウイルスによるパンデミックに伴うロックダウンによって、ロサンゼルスに暮らしていた作家がアトリエにも行かれなくなり、自宅で描き続けていた作品です。現在を表現する目的で、微妙な変化を繰り返し描き、タイトルにはその日の体験にまつわる言葉と年月日が記されています。

空間も含めて作品となる

6章「Bound for Eternity バウンド フォー エタニティ|永遠へ向かう」風景

八角形の壁面の「展示室3」には、長さ18m、幅152cmの1点「Bound for Eternity(magentablue)」(2009年)が弧を描くように、天井から吊されています。平面の作品と捉えるのではなく、空間自体も作品として感じてほしいと作家は語りかけました。

作品を通して色と光を感じる展覧会はいかがでしたか。帰る前に「展示室1」をもう一度のぞくと、最初に見た時と異なった感じを受けるのではないでしょうか。

作家フランシス真悟の話を直接聞くことができるイベントも用意されています。美術館のホームページをご覧ください。

展覧会情報

展覧会名フランシス真悟「Exploring Color and Space-色と空間を冒険する」
会期2024年3月30日(土)~6月9日(日)
会場茅ヶ崎市美術館
神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45
休館日月曜日(ただし4月29日、5月6日は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
開館時間10:00-17:00(入館は16:30まで)
入館料一般800円 大学生600円 市内在住65歳以上400円
※高校生以下、障がい者およびその介護者は無料
美術館ウェブページhttps://www.chigasaki-museum.jp/
https://www.chigasaki-museum.jp/exhibition/7778/

メインビジュアル:3章「Matrix(green-violet)」(2018年)の前でトークするフランシス真悟

おすすめの記事