アート

ゴミでアートをつくる面白さに取り憑かれたアーティスト・淀川テクニック(柴田英昭)さんへのロングインタビュー!

最近、アートの世界にもSDGsが浸透しつつあります…もとよりアートは社会課題と向き合っていますが、アートでSDGsの要素を用いた作品は、私たち鑑賞者を楽しませると同時に、人間による環境破壊にも特に目を向けさせてくれます。

今回、楽活で取り上げるのは、3年に1度開催される瀬戸内国際芸術祭での常設作品「宇野のチヌ」「宇野のコチヌ」の作者としてよく知られている、淀川テクニックこと柴田英昭(しばたひであき)さん。赴いた土地の人々とゴミ拾いなどのイベントを通して、その土地で収集したゴミや漂流物などを使用し、さまざまな造形物を制作しているアーティストです。

ちょうど2022年2月25日(金)から岡山県・旧玉野市消防署にて、淀川テクニックが制作総指揮をつとめる、瀬戸内海のゴミを使った作品展示『瀬戸内ゴミンナ〜レ!!』が開催されています。

そこで、展示開催にあわせて、インタビューをさせていただきました。

柴田さんがアート作品を作りはじめたきっかけとは?

柴田英昭さんの写真

柴田さんがアーティスト活動をはじめたのは2003年頃でした。大阪文化服装学院を卒業後、一旦は工場に就職。一年ほど働いてみたそうですが、自分のアイディアとセンスで何かを作ってみたいと思い、会社を辞めてアルバイトをしながらアーティスト活動をスタート。

そこで、大阪・淀川の漂流物や河川敷に落ちているゴミに目をつけ、これらを組み合わせた造形物をアート作品として作りはじめました。

活動当初は、現代美術作家の村上隆さんが主催していた、若手アーティストの登竜門「GEISAI(ゲイサイ)」に、柴田さんひとりで半年に一度出展していたのだそうです。

淀川フェスティバルの様子

その後、2003年に「淀川フェスティバル」という淀川河川敷で行われるイベントに誘われたことをきっかけに、チームでの制作へとシフトします。大阪文化服装学院時代以来の友人・松永和也さんに声をかけ、アートユニット“淀川テクニック”を結成。「GEISAI #5」にはじめてアートユニットとして参加しました。

「河川敷のゴミや漂流物を使って作品を作ってみたところ、ゴミを探しながら作品を制作していくという行為が面白かった」と教えてくれました。

その後、2017年からは再び柴田さんのソロ活動へと回帰。現在まで「淀川テクニック」の活動に邁進中です。

ゴミの存在、ゴミの魅力、ゴミで作品をつくることの可能性とは?

制作過程のゴミ拾いの様子

多くの人にとって嫌われ者であるゴミを使用し、さまざまなかたちの作品を生み出す柴田さんに、ゴミの存在について伺ってみると、「僕にとってはゴミはどこまで行ってもゴミなのですが、ゴミのまま素材にするんですよ。」と、にこやかに答えてくれました。

その言葉のとおり “ゴミ=素材” を観察してみると、様々な色彩、形状、素材で作られており、同じメーカーの同じ商品でない限り、すべてが異なっていることが分かります。

柴田さんは「漂流ゴミはもともと人間が作った(アーティフィシャル※)なモノなのですが、それに“漂流”というランダム要素と、“経年劣化”というナチュラル要素が加わり、アーティフィシャルな形を残しつつも、目的を失って行きどころのないモノとなり、岸辺などに漂着しています。そんな漂流ゴミを拾い集め、もう一度漂流ゴミをモチーフとしてアート(芸術)な存在意義を作り、作品として面白く生まれ変わらせるのが面白いです。」と語ってくれました。

続けて、柴田さんにゴミの魅力について伺ってみると、「ゴミにはそれぞれ記憶があり、その断片が見えるのが魅力です。」と教えてくれました。

店舗で販売されている商品は、生産者から消費者へと届けられますが、その消費者が使用した痕跡が見えたり、海の荒波に揉まれながら世界中を漂流して、柴田さんの手に渡るまでの過程が見えたり、一つ、一つ、それぞれの記憶があるように思います。

アーティフィシャル※
人工的。 人為的。 技巧的。 不自然な。

制作過程の仕分けの様子

また、ゴミは元々の機能や用途にとらわれず、自由な使い方ができるのも魅力だ、と柴田さんはいいます。「例えば、植木鉢が落ちているとします。それをそのまま使用してもいいのですが、別の何かを入れる代用品にもなりますよね。もし頭から被れば、帽子にもなります。ゴミは、転用して他の使い方をしてもいい。そんな敷居の低さもゴミの魅力のひとつです。」と答えてくれました。

そのように違うものに転用したり、見立てたりするところにも、柴田さんならではの面白いアイディアとセンスが感じられますね。

最後に、柴田さんにゴミでアート作品をつくることの可能性について伺ってみると「僕にとってアートは世の中の見方を変えたり、掛け合わせたり、違うものへと変化させるスキルだと思っています。素材はゴミでなくてもいいんですけど、ゴミだからこそできることが沢山あるんです。」と力強く語ってくれました。

ゴミはいらないモノ、迷惑なモノとして見られていますが、その後ろめたさみたいな感情を使うことで、よりアートとしての純度が高まるのではないかと考えているそうです。

「瀬戸内ゴミンナ~レ!!」について

制作過程での仕分けの様子

2022年2月25日(金)から岡山県・旧玉野市消防署にて開催され、淀川テクニックが制作総指揮をつとめる、瀬戸内海のゴミを使った作品展示『瀬戸内ゴミンナ〜レ!!』

『瀬戸内ゴミンナ〜レ!!』は、柴田さんがよくお世話になっている先輩アーティスト・ヤノベケンジさんから、京都大学の研究チームRE:CONNECTが開発した、AIを活用した海洋ゴミの調査アプリPicSea(ピクシー)を使用し、何か企画をやってもらえないかという依頼をきっかけに企画されました。

そして、今回の展示作品で素材として使用しているゴミを収拾する際は、全てPicSeaを使用して撮影を行い、データ収集に協力。環境問題などの課題解決に協力しています。

展覧会に先駆け、ワークショップ「ゴミジナル工作®️」が開催されましたが、参加者によって制作されたアート作品は、会場でアーティストの作品とともに展示されています。また、そのワークショップではRE:CONNECTとコラボレーションし、そこで「PicSeaアプリ」の実演と「地Qクイズ」という環境啓発クイズをしたそうです。

PicSea実演

作品展示『瀬戸内ゴミンナ〜レ!!』でグループ展にした理由をお伺いしてみると、以前より世界的にもゴミを使用して作品をつくるアーティストが増えてきていることから、そんなアーティストたちを集めて大きな展覧会を開いてみたいという構想があったという柴田さん。

「アーティストによって、ゴミに問題意識を持っている人も、ゴミが単純に面白いと思っている人も、いろんな目線があっていいと思うし、兎に角ゴミを素材として扱っているアーティストを集め、グループ展をするとどうなるのか?という野望を昔から持っていました」と話してくれました。

また、タイトル『瀬戸内ゴミンナ〜レ!!』の語源ては、「ゴミが何かになあれ」という想いが含まれていることや、ビエンナーレ(2年に1回)やトリエンナーレ(3年に1回)などの周期を表す言葉の響にも似ていることから、柴田さんが作った造語だそうです。

柴田さんの作品アプローチと「瀬戸内ゴミンナ~レ!!」の参加作家について

柴田さん制作風景

いつもは動物や魚などの生き物をテーマに作ることが多い柴田さんに、今回はどのような作品を生み出すのかを聞いてみると、「大きな涅槃像を作るつもりです。」と教えてくれました。

生涯に約12万体の仏像を彫ったと推定され、現在までに約5,300体以上の像が発見されている、円空(えんくう)。彼は各地に「円空仏」と呼ばれる独特の作風をもった、木彫りの仏像を残したことで知られています。

「様々な場所に赴き、現地で手に入れた素材の形を生かしながら作品を作り続けるのは、本当に大変でボロボロになります。でもその反面そこにしかない作品を作ることができますし、様々な人に出会う喜びがあります。放浪系アーティストとして見習いたいことが沢山あり、円空の気持ちを理解するには一度仏像を作ってみよう!」と思い立ったそうです。

参加アーティストの出川晋さん

また、今回の企画で制作総指揮をつとめる柴田さん以外に、4名のアーティストが参加されることについて伺ってみると。

「独特の収集癖からその集めたものがいろんなものに見えてくる作品を生み出す出川晋さん、ポップで可愛らしい作品とは裏腹に、狂気に似たものを感じるほど手数が多い吉田一郎さん、スマートな作品の見せ方をしてしてくれて、緊張感と脱力感の狭間で戦っているミシオさん、石川県で活動されており、現地の海ゴミを使用し、生き物の作品を作り出すあやおさん…みんな表現スタイルやアプローチが違うので、企画している僕自身も楽しみにしている。」と仰られていました。

最後に…

ワークショップにて参加者にアドバイスする柴田さん

最後に、今後の活動や展開などについてお伺いしてみると…「世界中の様々な川から海へ流出したプラごみが海流の影響で延々に渦巻いている場所である「”ゴミベルト”に行って、その海域のゴミを拾いに行って、そのゴミで作品を作りたいです」と語っていただきました。

柴田さんは当初形だけの環境活動やSDGsと同じように見られるのが嫌で距離を置いていたそうですが、現在は目撃した現状を作品という形で伝えることで、ゴミ問題をより広く考えることを目的にしているそうです。

消費社会の負の側面であるゴミをアート作品へと巧みに逆転させるアイディアを持ち、ただゴミを用いて作品制作をするのではなく、赴いた土地でのイベントやワークショップを通して、その地の人々とコミュニケーションを取り、その体験から環境問題を考えてもらうアクションへと繋げています。それこそが柴田さんにしかできないスタイルだと感じました。

ぜひ2月25日(金)から始まった『瀬戸内ゴミンナ〜レ!!』にて、5名の織りなすさまざまなアート作品をご覧になって、素材であるゴミの面白さに触れてみながら、世界に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

インタビュアー、写真、編集、構成、文:楽活編集部
※カバー写真:「宇野のチヌ」©︎淀川テクニックCourtesy of YUKARI ART

写真:撮影 藤田和俊

淀川テクニック(柴田英昭)プロフィール

淀川テクニック(柴田英昭)
1976年、岡山生まれ。2003年、大阪の淀川河川敷にて活動開始。ゴミや漂流物などを使い様々な作品を制作する。赴いた土地ならではのゴミや人々との交流を楽しみながら行う滞在制作を得意としている。近年では環境問題に関わる展示に招かれることも多い。
公式サイト:https://yukari-art.jp/jp/artists/yodogawa-technique/

「瀬戸内ゴミンナ〜レ!!」開催情報

「瀬戸内ゴミンナ〜レ!!」
会期:2022年2月25日(金)~3月15日(火)
会場:(旧庁舎)玉野市消防本部
   岡山県玉野市宇野1丁目27-2
参加アーティスト:淀川テクニック/ 出川晋 / ミシオ / あやお / 吉田一郎
主催:京都大学RE:CONNECT
製作総指揮:淀川テクニック
共催:玉野市
特別協力:日本財団、ユカリアート
公式Facebook:https://www.facebook.com/gominnarev

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