「バグスクール:うごかしてみる!」で身体性について考える。2023年9月にグランドオープンしたBUGで開催

東京駅・八重洲南口を出て右へ。グラントウキョウサウスタワーの1階にある「BUG(バグ)」は、2023年9月20日(水)にオープンしたアートセンターです。展覧会事業に限らず、アーティストの活動支援や作品販売にも取り組み、アートと社会をつなぐ開かれた場を目指しています。

11月29日(水)からは第2弾の企画展として、「バグスクール:うごかしてみる!」が開催中です。若手アーティスト9名による32日間限定の実験的な学び場。キュレーターの池田佳穂さんにお話を伺い、展覧会の見どころやBUGの魅力についてお届けします。

BUGは、人や社会に開かれたアートの場。

藤瀬朱里《Where the kiss will be tomorrow》部分 2023年

BUGは、株式会社リクルートホールディングスが運営するアートセンターとして9月にオープンしました。その前身にあたるのは、銀座の「クリエイションギャラリーG8」と「ガーディアン・ギャラリー」です。社会貢献事業として30年以上ギャラリーを運営してきた同社は、新たな拠点をオープンするにあたりその活動内容も一新しました。

キーワードとなるのは「キャリア支援」。若手作家を積極的に招聘したり、展示と連動した作品販売やイベント開催の機会をつくったりと、アートに携わる人が輝ける場であることを目的としています。

そして、BUGとリクルートホールディングス本社が位置する東京・八重洲エリアはビジネスパーソンの多くが行き交う街。併設するカフェで憩いのひと時を味わいながら、日常の中でアートに触れてもらえる環境となっています。

自分の感覚に寄り添った、自由な鑑賞体験を。

「バグスクール:うごかしてみる!」の入り口

「バグスクール:うごかしてみる!」は、何かを“動かす”ことやそれに伴う身体性をテーマにしています。参加アーティストは1989〜99年生まれの若手が中心。内田涼、柿坪満実子、野口竜平、平手、藤瀬朱里、堀田ゆうか、前田耕平、光岡幸一、渡邊拓也の9名で、いずれも身体性に焦点を当てた作品づくりをしています。

会場やウェブサイトで見られるハンドアウトには、解説文の代わりに「鑑賞する上での鍵」と題したテキストが書かれている本展。このコンセプトに至った経緯のひとつにあるのは、安易に消費されない鑑賞体験の創出です。鑑賞者が能動的に頭や体を動かし、作家との有機的なコミュニケーションを楽しみながら体験し、さまざまなプログラムを通じて何度も楽しめる展覧会を届けたい——そのような想いで企画されています。

そして、コンテンポラリーアートの良さは、自分なりに受け止めたり思考したりできる余白があること。初めは「これは何だろう?」と思っても、ヒントになる言葉を得ることで「そうか、こう見るとおもしろいかも」と、自分の感覚に寄り添って作品鑑賞ができるようになっています。

平手《友情再生機器・人型 R-1113》2023年 他
「さわってOK」の作品に触れて、作家と体験を共有する。

渡邊拓也さんの作品《工員K》は、タイル工場の作業員インタビューがもとになったもの。そこで聞いた言葉を自分の口で反芻しながら、作業員の体重分のタイルを左から右にひたすら移動させていくパフォーマンス映像です。このときにバンドで体に負荷をかけ、労働を意識しています。同じようにバンドで体を固定しながら「労働」の文字を書いたタイル《Drawing as Labor》も、身体性が感じられる作品です。

(左)渡邊拓也《Drawing as Labor》2023年/(右)渡邊拓也《工員K》2017年

9名のアーティストがそれぞれの解釈や関心のもとに表現する「身体性」。それは決して特別ではなく、私たち誰もが持っているものです。けれども、日々の生活をしていて身体性について考える機会はそれほどないばかりか、体の介在に気づかずに過ごしていることがほとんどではないでしょうか。そこに目を向けて思考を巡らせたとき、今までなかった柔軟な物の見方が生まれるのかもしれません。

ラーニングスペースで、ふと立ち止まってみる。

展示エリアの一角には「ラーニングスペース」と呼ばれる場所が設置され、深く腰掛けられるチェアと本棚があります。並んでいるのは、今回の参加アーティスト9名が「身体性」をテーマに選んだ推薦図書。自由に手を伸ばしてみたり、くつろいだりできる自由さが魅力です。

まるでリビングルームのような程よいラフさ。座り心地も是非お試しを。

推薦図書を読むことも、アーティストと間接的な接点を持つことのひとつ。

展覧会コラボメニューも楽しめる、気軽なカフェ。

BUGには併設カフェ「BUG Cafe」があり、飲食を楽しめます。朝はコーヒーやモーニングセットでゆったり目を覚まし、昼は手頃なランチ、夜はお酒とおつまみで軽い晩酌を。忙しい会社員の人には嬉しいメニューが揃っています。

「BUG Cafe」のカウンター

今回の展示では、「バグスクール:うごかしてみる!」× BUG Cafe コラボメニューとしてオリジナルノンアルコールカクテルが販売されています。注文して提供されるのは、空のグラスとシェイカーに入ったドリンク。身体性をテーマにした展覧会にちなみ、自らシェイカーを振ってドリンクを注ぐことで、“場に身体を介入させる参加型の体験”を促しています。

一般的にイメージするカクテルとは異なるスタイルが、飲む人を楽しませる。
数回振って注ぐだけ、簡単ながらも展覧会のエッセンスが含まれている。

カリン・金木犀・スパイスを使用した、季節感も味わえる一杯。華やかなオレンジ風味と酸味が心地よく喉を潤してくれます。

「バグスクール:ふってみる!〜冬の香り〜」650円(税込)

参加型プログラムで、作品やアーティストの背景を知る。

「バグスクール:うごかしてみる!」は参加型プログラムが豊富です。アーティストによるこれらの内容は、制作の背景を伝えるもの、実際に体を動かして感覚を共有してもらうもの、対話型やパフォーマンス型などさまざま。作家について知る貴重な機会となります。

こちらは思い出をもとに作品づくりをするプログラム。誰でも共感しやすいテーマが嬉しい。

BUGで過ごす、アートと学びのやさしい時間。

「美術館はよく行くけれど、ギャラリーの展示はあまり見たことがない」という人は、BUGでその気軽さやミュージアムと異なる距離感を楽しんでみて。そして、「現代アート、コンテンポラリーアートは見てもわからないことが多い」と感じている人もBUGを訪れてほしい。自由でいいんだ、と思える開放感はきっと心地よさをもたらしてくれます。

「バグスクール:うごかしてみる!」の会期は2024年1月14日(日)までです。体とは何だろう?という答えのない問いに自分なりの考えや感情が湧き上がってきた瞬間、現代アート体験のおもしろさに気づけるかもしれません。

BUGのエントランス風景

開催詳細

バグスクール:うごかしてみる!

会期:2023年11月29日(水) – 2024年1月14日(日)
時間:11:00 – 19:00
休館日:火曜 ※年末年始休館:2023年12月25日(月) – 2024年1月4日(木)
入場料:無料
所在地:〒100-6601 東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー1階
交通案内:JR東京駅 八重洲南口 徒歩3分
BUG公式ウェブサイト:https://bug.art/

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