アート

東京・竹橋の新たなアートスポット「丸紅ギャラリー」が誕生!開館記念展「日仏近代絵画の響き合い」レポート

11月1日、東京・竹橋に新たな有力なアートスポットが誕生しました。その名も「丸紅ギャラリー」。大手総合商社・丸紅株式会社の本社内に新設された私立美術館です。

これまで同社が社業の中で収集してきた近現代の洋画や染織作品を中心に、約1300点の所蔵作品を収蔵。そのこけら落としとなる開館記念展「丸紅ギャラリー開設記念展Ⅰ 日仏近代絵画の響き合い」を取材してきました。

東京駅からも近い、抜群の好立地にオープン!

丸紅株式会社のエントランス。この写真の一番奥まで歩いていくと、左手に美術館へと上がるエスカレーターが設置されています。

さて、丸紅ギャラリーがオープンしたのは、丸紅株式会社の本社ビル内。つい最近建て替えられたばかりの、非常に新しいビルです。

地図で見てみると、一番の最寄り駅は、地下鉄東西線竹橋駅。ほぼ直結と言って良いでしょう。大きな道路を挟んですぐ目の前には皇居のお堀が見えています。また、竹橋駅以外にも、神保町駅、小川町駅、大手町駅など、最寄り駅も多数あるのは嬉しいところ。

また、共立女子大学博物館や、東京国立近代美術館、宮内庁三の丸尚蔵館、出光美術館など、近隣にも多数の美術館があります。あわせてはしごをしてみるのも面白いですね。

広々としたエントランス空間

さて、いよいよビル内の3Fに入居する丸紅ギャラリーへと足を踏み入れていきましょう。

建物の東端に設置された専用のエスカレーター。
ギャラリーのエントランス。大きなガラス窓から自然光がたっぷり入ってくる、明るい空間になっています。ここで消毒と検温を実施。

専用エレベーターを上がり、消毒・検温を済ませると、いよいよギャラリーへ。入口を入ると、非常に広大なロビーが待っていました。このスペースだけで、美術展がひとつ開催できてしまいそうなほど、広々とした気持ちのよい空間でした。

丸紅ギャラリーのコンセプトは、「古今東西の美が共鳴する空間」。コレクションは、染織品(約400点)・染織図案(約600点)・絵画(約300点)の3本柱からなっており、明治時代から続く社業の中で収集・蓄積されてきました。

いったい、どんなきっかけや経緯があって、これらが集まってきたのだろう……と思っていたら、ちょうどエントランスすぐのところに、「丸紅の歴史と美術コレクション」という巨大な解説パネルが。どれどれ、みてみましょう。

丸紅の創業は、江戸時代末期の1858年。初代・伊藤忠兵衛が近江麻布(おうみまふ)の持ち下り商いにでたことがきっかけとされています。

うん???伊藤・・・忠??

そうなんです。僕もこの解説パネルを見てはじめて知ったのですが、なんと丸紅株式会社は、後の伊藤忠商事株式会社の兄弟会社だったのですね。京都の染織商から始まった老舗が、令和の21世紀に、押しも押されぬ世界の総合商社へと大成長を遂げていることに驚かされました。

この年表を見ると、同社が創業以来、美術とどのようにかかわってきたのかよくわかります。

中でも目を引いたのが、こちらのボッティチェリ「美しきシモネッタ」が、丸紅ギャラリーの所蔵作品ということでした。この貴婦人の肖像画は、現在、日本国内に現存する唯一のボッティチェリの作品なんです。

思い返せば、日本には同世代のイタリア・ルネサンス期の画家の作品はほとんどありません。ダ・ヴィンチもミケランジェロもラファエロもないんです。いかに「美しきシモネッタ」が日本で見られる、ということが貴重なことであるのかわかりますね。

今回はお披露目されませんでしたが、本作は2022年12月~1月にかけて開催予定の開館記念展第3弾「美しきシモネッタ展」で公開予定。楽しみですね。

他にも、同社中興の祖・古川鉄治郎の慈善活動など、解説パネルには興味深い情報が数多く掲載されています。時間のある方は、ぜひじっくりとチェックしてみてください。ここを読み込むだけで、30分以上楽しめます。

それでは、いよいよ展示室内に入っていきましょう。

47点もの珠玉の作品が待つ、展示室内

さて、こけら落としとなる本展「丸紅ギャラリー開設記念展Ⅰ 日仏近代絵画の響き合い」は、展覧会名が示すとおり19世紀~20世紀にかけて、日本とフランスの両国を代表する画家の作品全47点(※数点はパネル展示)が展示されています。

まず、堪能していただきたいのは、同館が所蔵する、ルノワール、コローやクールベといった19世紀フランス美術の巨匠の作品群。印象派や、その前後に活躍した作家が好きな人は、ぜひチェックしてみてください。

(左)ギュスターヴ・クールベ「積雪の森」(右)ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「ヴィル・タヴレーのあずまや」
ピエール=オーギュスト・ルノワール「エスタックのオリーブ畑」

そして、19世紀美術に続いて、20世紀の巨匠たちも要注目。フォーヴィスムからはヴラマンク、デュフィ、ルオー、エコール・ド・パリからはキスリングなど、西洋美術史で最も重要な画家の力作が並んでいます。

ラウル・デュフィ「ル・アーヴル港の船」
モイーズ・キスリング「ミモザの花」

もちろん、これに呼応するかのように、日本の洋画家の作品も明治時代から大正~昭和へとテーマ別・時代別に整理されて展示されています。ちょうど、西洋の巨匠たちと、時代やテーマを合わせて並べて展示されているので、日本の洋画家たちが当時最先端だったフランスの画壇から様々な影響を受けながら制作していたことが見て取れるでしょう。

展示風景/一般的にはまだまだアートファンに知られていないけれど、確かな実力と個性を持った戦前~昭和の洋画家の作品群は見事です。

こうした日本の洋画も、非常に見応えがありました。戦前に活躍した日本の洋画家は、普段なかなかこうしてまとまった形で見られる機会が少ないので、こうして並んでいると本当に壮観です。

僕もそうでしたが、おそらく大半の来場者にとって、はじめて目にする作家・作品も結構いるはず。自分だけの、お気に入りの作家を見つけてみるチャンスですね。僕も、初見の画家の作品は入念にチェックを入れました!

齋藤与里「白百合」

また、フランスの洋画家でも、モネやルノワールら大家に混じって、彼らと同時代に活躍した非常にレアな作家も展示されています。海外からくる大型企画展などを多数見てきた自分でも、はじめて知った名前の画家がいました。これはなかなか油断できませんね。

たとえば、こちらのギュスターヴ・ロワゾーの作品。

ギュスターヴ・ロワゾー「サン・ジュアンの断崖」

「ああ、モネの海景画もあるんだな~」と思って、鑑賞を終えようとした時、キャプションを見て「あれっ?モネじゃない?!」とびっくり。

描かれたのも1907年と、モネが精力的に海景画を描いた1880年代よりだいぶあとですね。図録を見ると、モネをはじめとする印象派を取り扱った有名な画商ポール・デュラン=リュエルが取り扱った契約作家だったのだとか。

でも、本当に心癒される良い作品です。いわゆる「遅れてきた印象派画家」を思いがけず発掘することができて、印象派好きの自分としては大収穫でした。

ピエール・デュモン「ルーアン大聖堂」

また、こちらのデュモンの作品にも目を奪われました。印象派から表現主義への過渡期に描かれたような作品です。絵の具が盛り上がった大胆な筆使いに惹かれました。ルーアン大聖堂といえば、モネの連作が有名ですが、本作はセーヌ川を挟んだ対岸から描いているのですね。セーヌ川の水面の引き込まれそうな透明感が素敵でした。

ちなみに、後述していますが、本展の人気投票でも中間発表で第3位につけています。

(左)竹内栖鳳「磯つづれ 五」(右)山鹿清華「鶏頭」

最後に、展示室を出て出口へと至る廊下のスペースにも、作品が所狭しと展示されていました。

着物の染織図案や、同社ゆかりの創業者の一族が描いた作品、社業を記念して描かれた油絵なども展示されていました。このあたりは、企業内美術館ならではのラインナップかもしれません。

そういえば、僕が取材のために訪問した日も、丸紅グループの社員やOBの方々もこのギャラリーを訪れていました。会社にゆかりのある人にとっては、かけがえのない作品といえそうですね。

展示を見終わった後は、ミュージアムグッズコーナーも!

さて、展示を見終わったら、なにか記念におみやげが欲しくなるもの。もちろん、丸紅ギャラリーでもミュージアムグッズコーナーが用意されています。

展覧会図録

展覧会の図録や、主要展示作品をあしらったクリアファイル、ポストカードなど、ミュージアムグッズの定番アイテムが販売中。僕はこの展示ではじめて出会った日本の洋画家が多かったので、迷わず図録を購入。1100円と非常にリーズナブルでした。

さて、面白かったのは、展示作品の人気投票です。本展で展示中の全作品が印刷されたパネルに、備付けの赤いシールで自分の一番のお気に入りの作品にシールを貼っていく企画。これは面白いですね。来場者がどんな作品を好きなのか、一番人気の作品は一体どれだったのか?など、興味が尽きませんでした。

ちなみに、僕が推し作品として印をつけたのは、戦前から昭和中期まで息の長い活躍をした、東京出身の洋画家・曾宮一念の「桜島」という作品。東京美術学校出身で、文展、二科展、国画会など様々な公募展で活躍した実力派の画家です。うーん、若干少なかったかもしれません。なので、ぐっと手に力を込めてシールを貼り付けておきました。

さて、そんな人気投票の途中経過が、丸紅ギャラリーの公式Instagramで発表されていました。これはちょっと興味深いです。

ちなみに、一番人気はキスリング「ミモザの花」でした。油絵の具を大胆に盛り上げて花の形を表現したキスリングですが、本展に展示されている「ミモザの花」は格別の存在感でした。ルノワールやクールベといった巨匠を抑えて、見事人気No.1となっているようです。

ぜひ、これから丸紅ギャラリーに来たら、キスリングの凄い作品があるらしい……と期待しながら訪問してみてくださいね。

今後が楽しみな丸紅ギャラリー。ボッティチェリの傑作も近日中に登場予定!

さて、今後丸紅ギャラリーでは、年におおよそ3回ぐらいの企画展を開催して、順次所蔵作品が公開されていく予定。

文中でも紹介しましたが、やはり気になるのはボッティチェリの名作「美しきシモネッタ」ですね。こちらは、今のところ2022年12月に満を持して登場する予定。日本でルネサンスの巨匠のナマの作品を見られる機会はめったにないので、首を長くして待とうと思います。

また、いずれ近い将来、丸紅ギャラリーにカフェも併設されるそうです。展示を見て一息つける場所ができるのはアートファンとしても大歓迎ですよね。こちらも、概要が判明しだい、楽活で取材にお伺いさせていただこうと思っています。

今後の丸紅ギャラリーの新たな展開が楽しみですね!

関連情報

丸紅ギャラリー

開館時間:10:00~17:00
休館日 :日曜・祝日・年末年始、その他展示替期間
入館料 :一般(大学生以上)500円(※全額丸紅基金寄付)
公式HP:https://www.marubeni.com/gallery/
公式Instagram:https://www.instagram.com/marubeni_gallery_official/

かるび

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メーカー、IT企業で勤務後、41歳にして1年間のサバティカル休暇へ突入。現在は、ブロガー&Webライターとしてアートや映画について主催ブログ「あいむあらいぶ」(http://blog.imalive7799.com/)にて日々見聞きした出来事を書き綴っています。

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