カッセル市立博物館の特別展「1943: カッセル空襲」に行ってみた

楽活をご覧のみなさま、こんにちは!

私は現在、日本から9,000km離れたドイツから100%リモートワークでライター業を中心としたフリーランスとして働いています。ドイツに移住してからはフリーランスの利点を活かし、仕事と博物館や工場、美術館見学をしながら『楽活』へ寄稿させていただいております。そんな私は、自身のワークライフバランスを考え、長期休みを取りながらフリーランスとして働くスタイルを継続しています。

2023年、カッセルは第二次世界大戦による爆撃から80年を迎えました。実は現在のカッセルの街並みは、戦後の復元によるものが多いです。そんな特別な年に、カッセル市立博物館では約半年に渡り特別展示「1943: カッセル空襲」が開催されています。

そこで今回はこの場をお借りして、壊滅的な攻撃からの復興を遂げたカッセルの歴史を掘り下げていく特別展示「1943: カッセル空襲」について、実際の写真を交えながらご紹介します。

前回ご紹介した「ペーネミュンデ歴史技術博物館」と比較すると、写真や展示は少々目をそむけたくなるようなものが多くありました。しかし1人でも多くの人がより良い未来への希望を見出すためにも、この記事を通して歴史から現代、そして未来を少しでも考えるキッカケとなれば幸いです。

カッセル市立博物館の概要

カッセル市立博物館の外観。

カッセル市立博物館は「カッセル」をテーマに、さまざまな時代から集められた展示品を通じて、街の歴史を学べる場所の1つです。

まさに「カッセルについて知りたいのであれば、市立博物館へ訪れる」という言葉がぴったりといえます。

カッセル市立博物館は知識を深めるだけでなく、人々が交流する場としても設計されているほか、歴史を身近に感じられる双方向型および体験型の展示が特徴です。

また内部に設置されている「カッセルキノ(Kassel Kino)」では、待ち時間も楽しく過ごせるよう、地元カッセルの歴史に焦点を当てた映画が上映されています。

特別展「1943: カッセル空襲」について

特別展の展示は常設展とは別の展示室に設けられています

特別展「1943: カッセル空襲」では、カッセルの戦前・戦後の様子を紹介するだけではありません。

未公開の写真や資料を含む豊富な展示品を通じて、訪問者は当時のカッセル市民が経験した戦争の現実と、それが現代に残す深い傷跡などについて深く学べる展示構成です。

カッセルがなぜ連合軍の攻撃目標となったのか、その背景と結果を深く掘り下げる展示が多く見られる点からも、特別展「1943: カッセル空襲」は、過歴史の教訓を現代に繋げ、未来への議論を促すことを目的としています。

なお本展示は、カッセル市民の戦争体験に焦点を当て、記憶を次世代に伝えるための「カッセル 1943」文化プログラムの一環とのことです。

なぜカッセルは空襲の標的にあったのか?

1942年から1944年にかけて当時カッセルで製造されていた戦車「Tiger I」の模型

1943年10月22日の空襲は一夜にして約1万人の命が失われただけでなく、カッセルの歴史と景観を永遠に変えたといわれています。

カッセルが空襲の標的になった理由は、カッセルは軍備の中心地だったからとのこと。

特にヘンシェル&ゾーン社(Henschel & Sohn)による機関車、戦車、軍事トラックの製造や、航空機の建設が行われていたため、連合軍の標的となってしまったそうです。

結果として、1943年10月22日に連合軍は大規模な焼夷弾を投下し、市の大部分を破壊しました。

カッセル空襲は国家社会主義がもたらした第二次世界大戦の結果として見られ、カッセルはこの過去から重要な教訓を得たとされています。

カッセルで現在も稼働している軍備会社

カッセルには現在も、クラウス・マッフェイ・ヴェグマン社(Krauss-Maffei Wegmann (KMW))とラインメタル(Rheinmetall )といった防衛企業が存在し、戦車や装甲車両の製造とメンテナンスなどを行っています。

これらの企業は、残念ながら特にウクライナ戦争に関連して利益を得ているそうです。

筆者はカッセルに移住するまで、まさか自分の住む町に防衛企業という名の軍事企業があることを知りませんでした。しかし一部の地元カッセルの住民や大学の間では、軍事企業の存在や活動に対する否定的な動きも見られます。

たとえばカッセル大学では、これまでの防衛企業との長年の連携を終了させていますし、街中では戦車製造に異を唱えるストリートアートもあるほどです。

軍事企業の存在が地域社会に与える影響は大きく、地域社会の平和への願いを反映しているといえます。

参考:Uni Kassel beendet Kooperation mit Rüstungsfirmen Rheinmetall und Krauss-Maffei Wegmann | hessenschau.de | 

特別展「1943: カッセル空襲」の見どころ

空襲当時の写真を使ったパネル

特別展「1943: カッセル空襲」では、それまで平和だったカッセルが、1943年10月22日の夜どのように変貌したのか、そしてその影響が今日までどのように残っているのかを、未公開の品々やオリジナルテキスト、写真を通じてご覧になれます。

この項目では、筆者が特に印象に残った内容を写真付きでご紹介します。

戦時中に焼け野原になったカッセルの実態が分かる

空襲後のカッセルの写真たち。石やレンガ造りの建物以外は跡形もありません……

80年前の1943年10月22日、カッセルが英国空軍の壊滅的な空襲に遭遇した事実について、当時の写真や資料等を通じて紹介しています。

展示された写真や立体模型は、私たちが知っているカッセルがどれほど激しく変わったかを示しており、普段歩いている街の様子とつい対比して見ていました。

2021年7月撮影

たとえば上記の写真は、カッセルのランドマークの1つ「オランジェリー(Orangerie)」です。

空襲後の再現模型

そして、こちらが空襲被害後の「オランジェリー(Orangerie)」再現模型です。

「オランジェリー(Orangerie)」は18 世紀初頭に建築されており、本来であれば重要文化財級の建物ですが、空襲により骨組みを残すのみに。

現在では市民の憩いの場となっている「オランジェリー(Orangerie)」の空襲当時の姿を知り、なんとも複雑な気持ちになってしまいました。

五感で学べる双方向型展示で1940年代のカッセルに没入できる

3Dメガネを通してみる空襲前のカッセル立体写真映像!このような展示は日本で体験したことがなかったので新鮮でした!

特別展「1943: カッセル空襲」では写真や当時の資料だけでなく、まさに訪問者が五感を使って過去を体験し、歴史の一部を感じることができるように工夫されています。

特に印象的だったのは、3D眼鏡を使って見る空襲前のカッセルの立体写真映像です。

この展示では、当時の街並みや市民の生活が平面ではなく現代の技術を駆使した立体的な映像で紹介しているため、当時の人たちの様子が生き生きと再現されていました。

カッセル空襲を体験した当時の方のビデオインタビューも展示

さらに、当時の空襲を体験した人たちのインタビューを含む動画メディアは、その時代の個人的な記憶と体験を共有する貴重な機会を私たちに与えてくれます。

一般家庭の地下に作られた防空壕の再現。写真は明るくなってしまいましたが、実際はとても暗かったです

さらに当時、自宅の地下につくられた防空壕の再現も興味深かったです。実際に中に入って地下防空壕の暗さや雰囲気を体感できるのも、五感で感じられる双方向型の展示ならではと感じました。

さまざまな関連企画も実施

特別展「1943: カッセル空襲」に付随した多彩なツアーや講師向けワークショップ、講演、コンサートといった企画も開催されています。

筆者が展示に訪れた際にもガイド付きツアーが行われていたほか、2024年1月27日のホロコースト追悼記念日にあわせた、カッセル市立オーケストラの室内コンサートも開催されたそうです。

コンサートの様子は一部Instagramでも閲覧できるようですので、気になる方はカッセル市立博物館のInstagramアカウントもぜひ見てみてください。

特別展「1943: カッセル空襲」に行けない?通常展でも一部展示が閲覧可能

通常展示でも見られる空襲後のカッセル中心部の再現模型。普段歩いている場所がほぼ跡形もなくこわれてしまったんだ、というのがわかりました。

特別展「1943: カッセル空襲」は2023年10月21日から2024年4月7日まで開催されていますが「会期中の訪問が間に合わない」という方もいるでしょう。

しかし特別展「1943: カッセル空襲」にある展示の一部は通常展示でも見られますので、特別展を逃してしまった場合は、ぜひ通常展示に足を運んでみてください。

通常展示にあったパネル。1943年10月22日には40万本もの爆弾が投下されたそうです。1つの爆弾は100個を表しています。

特に動画や音声を使った「メディアインスタレーション」や、1945年5月の戦闘による都市の災害を示す再現模型は、カッセルにおける第二次世界大戦の影響を深く理解するのに役立ちます。

通常展示の様子。1900年代初頭から1930年代頃のカッセルを描いた絵画が展示されています

またカッセルの成り立ちや戦後復興に関する展示も豊富にありますので、特別展だけでなく通常展示も楽しめます。

最後に

本記事では、第二次世界大戦のドイツ・カッセルについてピックアップした、市立博物館での特別展「1943: カッセル空襲」について、概要や見学時の見どころをご紹介しました。

「1943: カッセル空襲」は、過去の悲劇を通した平和の重要性を再認識させられる展示ばかりで、筆者だけでなく特別展を訪れた友人・知人からも絶賛の声が上がったほどです。

特にカッセルはドイツ国内でも数少ない空襲によって焼け野原状態となってしまった場所の1つです。

実際に起こった歴史から過去を振り返りつつ、現在と未来について考えさせられるいい機会だったなと思っています。

内容がすこし重たい記事となってしまったかもしれませんが、カッセルの深い歴史と文化を垣間見ることができた貴重な機会でした。

カッセル市立博物館の特別展示は期間限定ではありますが、通常展示でも街の歴史が多く学べます。

この記事をキッカケに興味を持ってくださった方は、ぜひカッセルを旅の候補に入れていただけますと幸いです。

基本情報

施設名カッセル市民博物館
住所Ständeplatz 16 34117 Kassel
時間火、木~日曜日:午前10時から午後5時まで
水曜日:午前10時から午後8時まで
※12月24日と31日は休業となります。
祝日は月曜日であっても、午前10時から午後5時まで営業しています。
入場料・大人4ユーロ Euro(割引で3ユーロ*)
* 割引入場は、学生、訓練生、軍のボランティア、連邦ボランティア活動を行っている人、サービスカード、NVV 年間カード、またはボランティアカードの所有者、年金受給者、社会扶助受給者、重度障害者、失業者が利用できます。
※18歳までの子供および若者、カッセル市博物館フレンズの会員。
V.、ドイツ連邦ツアーガイド協会の会員、ICOM カード、博物館バンド カード、カルチャーチケット、MeineCard+の所有者は無料
・10名以上の団体:1人あたり3ユーロ
・重度障害者 1 人あたり 2 ユーロ
※重度障害者とその同伴者の 4 人以上のグループに適用されます。
公式HPhttps://www.kassel.de/einrichtungen/stadtmuseum/index.php
(ドイツ語、日本語ページ表示あり)
SNS公式Facebook:https://www.facebook.com/stadtmuseumkassel/?ref=embed_page
公式Instagram:https://www.instagram.com/stadtmuseum_kassel/

◉特別展『1943: カッセル空襲』 開催期間:2023年10月21日~2024年4月7日まで

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