カッセルの技術発展がわかる!カッセル技術博物館訪問記

楽活をご覧のみなさま、こんにちは!

筆者はドイツに移住してからはWebライティング関係の業務・学業のかたわら、博物館や工場、美術館見学などに参加しながら『楽活』へ寄稿させていただいております。

また日本から9,000km離れたドイツから100%リモートワークでライター業を中心としたフリーランスとして働きながら、2024年4月からはカッセル大学院に通い「歴史と公共」という分野を学んでいます。

そんな私ですが、大学院に通い始めて初めて知ったのが博物館の役割を広めるために設定された「国際博物館の日」という日!

今回は「国際博物館の日」に併せて訪れた、ドイツの技術と歴史を一度に楽しめる「カッセル技術博物館」について、現地からレポートします。

毎年5月18日は国際博物館の日!

出典:Museen bieten freien Eintritt, abwechslungsreiches Programm | Stadt Kassel

「国際博物館の日」とは博物館(美術館や動物園も含む)の社会的役割を広めるため、1977年にICOM(国際博物館会議)によって制定されました。

ドイツをはじめとする世界中にある6,500以上の博物館が、さまざまなテーマを通じて「国際博物館の日」を祝っているそうです。

「国際博物館の日」は2024年で47回目を迎え、5月18日を中心に、博物館や美術館の無料開館や記念品の贈呈、地域との連携イベント、講演会などといった催しが行われます。

2024年のテーマ

「国際博物館の日」2024年のテーマは「学びと研究のための博物館」とのことです。

博物館は教育や研究にとって重要な場所であるだけでなく、芸術や歴史から科学や技術まで幅広い分野で教育と研究を組み合わせ、社会教育や文化施設としての役割を担っています。

「学びと研究のための博物館」という形でテーマ化することにより、博物館の役割を再確認できるほか、私たちの世界を深く理解するために欠かせない存在であることが言語化されたといえます。

日本では?

「国際博物館の日」に寄せて、日本でも全国の博物館を中心に様々な記念イベントが行われました。

「国際博物館の日」限定ツアーを中心に、無料公開や記念品の贈呈など、一般の人々が博物館を訪れる機会を増やす工夫が見られました。

2024年にどのような博物館や美術館、動物園が記念イベントを行ったかどうかは、以下のサイトから閲覧できますので、興味のある方はご覧ください。

参考:国際博物館の日|公益財団法人日本博物館協会

ドイツ・カッセルでは?

ドイツでは、第47回「国際博物館デー」が5月19日(日)に開催されました。多くの場合、賛同する博物館などへの入場が無料になったほか、記念イベントやツアーの開催が中心だったようです。

筆者が住むカッセルでは、Grimmwelt(グリム兄弟博物館)自然史博物館(オットネウム)ヴィルヘルムスヘーエ城美術館など多くの博物館や美術館が参加し、無料入館や特別ツアー、限定イベントが行われました。

筆者は今回、まだ訪れたことのない「カッセル技術博物館」を訪れることにしました。

カッセル科学技術博物館について

カッセル技術博物館にある館の紹介概要(ドイツ語)

2010年に設立されたカッセル技術博物館は、工業施設や商業施設の立ち並ぶローテンディットモルト地区の「ヘンシェル工房II」に位置します。

「ヘンシェル工房II」はドイツで最も古い機関車製造現場の1つで、元の構造がよく保存されている場所です。

カッセル技術博物館では、カッセルと北ヘッセンの300年にわたる技術史を展示しており、地域の製品や技術を中心に紹介しています。

また講演会や討論会の開催しているほか、古い図面のデジタル化・保存にも取り組んでいます。

主な展示内容

カッセル技術博物館では、機関車や古い自動車(ヴィンテージカー)、精密機械など「技術」を中心とした多種多様な展示物が見られます。以下にリストを掲載します。

  • 鉱物資源とその採掘
  • モビリティテクノロジー
  • 工具および工作機械
  • 蒸気技術
  • 電力工学
  • 計測、制御、調整技術
  • メディアおよび通信テクノロジー
  • 消防および救助サービス
  • 航空工学
  • 科学的、歴史的器具
  • 病歴と技術
  • ベーブラ鉄道模型1958
  • イノベーションと企業のストーリー

展示品はカッセルと北ヘッセン州の技術や製品、革新を歴史的背景と共に紹介されており、ただ展示プレートを見るだけでなく映像や実際に展示物を触ったり乗車したりできる体験が可能です。

技術系に詳しくない筆者も、実物を間近に見たり触れたりできる展示方法にはすごく満足!お仕事でメカニック系など技術に携わっている方や乗り物が好きな方にとっては、まさに「言って損はない場所」だといえます。

ドイツ在住の筆者おすすめ!カッセル技術博物館の見どころ

「国際博物館の日」にあわせたカッセル技術博物館のお知らせ看板

前述でも触れたように、筆者は「国際博物館の日」にあわせて、カッセル技術博物館を訪れました。

なぜかというと、面白そうな乗り物の乗車体験が無料でできるというイベントが開催されていたためです!(笑)

当日は悪天候でしたが、屋内展示が豊富だったこともあり、十分に楽しめました。つかの間の晴れ時間には、狙っていた野外展示開催の乗車体験も実現し、1日中飽きることなく過ごせました。

この章では、現地ドイツ・カッセルに住む筆者と同行した技術関連職勤めの同行者がおすすめする「カッセル技術博物館」の見どころを、実際の写真付きで一部ご紹介します。

カッセルで作られた巨大機関車がお出迎え!

「ドラッヘ」は約250馬力、当時最速の機関車の1つだったそうです!

カッセル技術博物館の展示場に入ると、まず出迎えてくれたのが巨大な木製模型の機関車「ドラッへ(Drache、日本語ではドラゴン)」です!

機関車「ドラッへ(Drache)」は1848年にヘンシェル社がカッセルで製造した初の機関車です。

カッセル技術博物館では、機関車「ドラッへ(Drache)」の1:1模型が隣接するヘンシェル博物館(後述)から貸し出されており、間近で観察できます。(残念ながら機関室の中は閲覧はできません)

子どもも喜ぶ!ベーブラ鉄道模型システム

鉄道や路線以外も細かな仕掛けがある超巨大ジオラマ!ぜひ実物を見てほしいです!

カッセル技術博物館の目玉の1つが、1958年当時のジャンクション駅などをベースに作られた「ベーブラ鉄道模型システム」です。

長さ22メートル、幅8メートル、1:87スケールで構築された超巨大ジオラマには、500メートル以上の線路が敷かれており、機関車や路線はデジタル制御されています。

筆者が見学した際も、多くの子どもたちが巨大ジオラマに釘付けでした。

カッセル=ゲルシュトゥンゲン線など、歴史的な鉄道の一部も再現されています。

カッセルで開発された!実寸大リニアモーターカー

リニアモーターカー「Transrapid 05」。内部の見学もできます!

カッセル技術博物館では、1979年に製造された実寸大の磁気浮上式リニアモーターカー「Transrapid 05」を展示しています。

リニアモーターカー「Transrapid 05」は、旅客輸送用に初めて認可された車両で、当時はハンブルクに路線を設けていました。

「Transrapid 05」の案内

2010年に解体・復元され、現在はカッセル技術博物館のメインホールで見られます。実際に車両の中にも入れるため、ちょっとした冒険心をくすぐります!

ちなみに「Transrapid」は中国企業とともに実行可能性調査を行っており、上海浦東国際空港と竜陽路駅を結ぶリニアモーターカーとして活躍しています。

カッセル救急医療のかなめ救助用ヘリコプター

救助ヘリコプター BO105C、通称「Christoph 7」

カッセル技術博物館にある、オレンジ色の鮮やかな機体を持つヘリコプター。ドイツ・カッセルでは1日1回は必ず飛んでいる姿を見かけます。救助用ヘリコプター、通称「Christoph 7(クリストフ・ジーベン)」です。

機体の内部を閲覧できるほか、動画を通して「Christoph 7」の役割を学べる点が魅力です。

展示されている「Christoph 7」の機体は、1976年から1995年までカッセルで多くの人命救助に携わってきました。

役目を終え廃棄される予定だった機体は、元パイロットや救急隊員によって復元され、2013年に一般公開され、現在に至ります。

ちなみにドイツの救助ヘリコプターは無線名「Christoph」で識別され、カッセルの救助ヘリコプターは「Christoph 7」として知られています。

実はカッセルがかかわっている品も見れる!

ドイツのコーヒー・紅茶で知られるメーカー「Eiles」のローストコーヒー用真空パックもカッセルで生まれた技術なのだそう

カッセル技術博物館では、日常生活で使われる製品にもカッセルの技術が関わっていることがわかる展示があります。

カッセルがかかわる製品には、コーヒーの真空パック、マッチ、ロックシリンダー付きセキュリティロック、ガラスボトルなど、私たちの日常生活に密接に関わる製品ばかり!

カッセル在住歴15年以上になる同行者も、初めて知る事実だったそうです。

国際博物館の日限定の体験乗車も実施!

国際博物館の日で運行していた「レール・トラビ GKR 1型」に引かれるトロッコに乗車する筆者

国際博物館の日、カッセル技術博物館では、特別イベントとして「レール・トラビ GKR 1型」の乗車体験が行われました。

黄色い車体が特徴の「レール・トラビ GKR 1型」は、1950年代後半に鉄道の保守や工事用に設計されており、当時は約100台が製造されたそうです。

現在そのうち9台が残り、それぞれ博物館で保存されており、その1台がカッセル技術博物館で展示・保管されています。

「レール・トラビ GKR 1型」はミニカーということもあり職員スタッフさんと大人1名までの定員。

長蛇の列ができていましたが、筆者は別枠の「レール・トラビ GKR 1型」に引っ張られるトロッコ列車を体験しました。

短い距離でしたが、ちょっとした童心に返った気持ちで、楽しかったです!

タイミングが合えば隣接する「ヘンシェル博物館・コレクション」にも行ってみよう!

ヘンシェル博物館・コレクションで見学した展示の一部

カッセル技術博物館のある敷地内には、ヘンシェル博物館・コレクションという博物館が隣接しています。

見どころでもご紹介した、カッセル初製造の機関車「Drache(ドラッヘ)」を製造した、ヘンシェル社です!

ヘンシェル博物館・コレクションは2004年に開館し、カッセルの経済史を形作ってきたヘンシェル家と会社の歴史を中心に6世代にわたる経済、文化、社会活動の成果を展示しています。

ヘンシェルの200年の歴史を紹介するツアーもあり、カッセルの産業遺産史を深く理解できます。

開館時間は第1土曜日と日曜日の午後2時から5時までと時間が限定的ですので、もしカッセル技術博物館を訪れた際にタイミングが合えば、ぜひ併せての見学をおすすめします。

終わりに

倉庫のように広い敷地に展示されたたくさんの展示品は圧巻!

この記事では、国際博物館の日に合わせて見学したカッセル技術博物館について、現地ドイツ・カッセルからご紹介しました。

カッセル技術博物館は、地元カッセルおよび北ヘッセンの技術を中心としたさまざまな技術史にまつわる展示が豊富でした!

他にも数多くの魅力的な展示がありましたが、あまりにも展示量が多かったため、紹介しきれないのが残念です。

より詳細が気になるという方は、ぜひカッセルを訪れてみてほしいですし、ドイツ旅行の折にはぜひカッセルを旅行先の候補に入れていただけたら嬉しいです!

カッセル技術博物館の基本情報

施設名カッセル技術博物館(TMK)
場所Wolfhager Str. 109 34127 Kassel
入場料・大人:6ユーロ
・割引*:5ユーロ
・14歳までの子ども:無料
・カッセル大学の学生:無料
・カッセル技術博物館 eV 協会のメンバー:無料
・身分証明書をお持ちのドイツ博物館協会の会員:無料
・MainCardPlus をお持ちのお客様:無料
* 研修生、学童および学生(身分証明書をお持ちの方)、カッセルカード(下の画像を参照)またはテイリャベカードをお持ちの訪問者、ヘッセン州ボランティアカード所有者、重度障害者の入場料の割引(70%から)
営業時間水~金 午後1時~午後5時
土・日 午前11時~午後5時
※展示場には暖房がありませんので、冬季は服装を工夫してお越しください
※ホール9は現在立ち入りが禁止されており、44 号蒸気機関車、路面電車、消防団の一部には立ち入りができないことに注意してください
※テクノロジー ミュージアムは、次の祝日の午前 11 時から午後 5 時まで開館しています。
聖金曜日、復活祭の日曜日、5月1日、労働者の日、昇天の日、ペンテコステの日曜日、コーパスクリスティ、ドイツ統一の日。
※鉄道模型「ベーブラ1958」の運行時間:土曜日 午後12時から午後4時まで
WEB情報(HP / SNS)公式HP:https://tmkkassel.de/(ドイツ語)
公式Facebook:https://www.facebook.com/TechnikMuseumKassel/
公式Instagram:https://www.instagram.com/technikmuseum_kassel/
公式YouTube:https://www.youtube.com/user/TechnikMuseumKassel
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