ドイツ・カッセル自然史博物館の特別展『Elefanten』が興味深かった

楽活をご覧のみなさま、こんにちは!

私は現在、日本から9,000km離れたドイツから100%リモートワークでライター業を中心としたフリーランスとして働いています。

ドイツに移住してからはフリーランスの利点を活かし、仕事と博物館や工場、美術館見学をしながら『楽活』へ寄稿させていただいております。

今回、訪れたのは、ドイツ・カッセルにあるカッセル自然史博物館で期間限定で行われている『Elefanten(ゾウ展)』です。

街中で偶然見かけた可愛らしい子ゾウのポスターからは想像もつかない、ゾウの進化の歴史や人間、カッセルとの関連性が垣間見える充実な特別展だったので、今回ご紹介させていただこうと思いました。

館内は撮影OKでしたので、実際に訪問した際に撮影した写真も交えてご紹介します。

是非最後までチェックしてくださいね。

カッセル自然史博物館とは?

カッセル自然史博物館(オットーニウム)の外観

カッセル自然史博物館は、その歴史とコレクションの魅力から、カッセルで最も人気のある観光地の1つとなっています。

通称「Ottoneum(オットーニウム)」とも呼ばれる建物は、1568年にヘッセン=カッセルの初代方伯であるヴィルヘルム4世がカッセルの自然死コレクションを展示するための美術館を設立し始めたことが建設の発端となりました。

1604年、息子であるモーリッツ方伯は、演劇を上映するためのドイツ初の常設劇場を建設。それが、現在のオットーニウムに当たります。

かつては劇場として使われていたオットーニウムの名前は、モーリッツ方伯が劇が好きだった息子のOtto(オットー)が由来しているそうです。以降、オットーニウムは何世紀にもわたって国際的な研究者が研究を行ってきた貴重な場所となりました。

現在はカッセル自然博物館として、恐竜やサメ、マンモスが生息していたかつての砂漠、海底、氷河期の草原へのタイムスリップの旅を楽しめます。

特別展『Elefanten』の概要

特別展『Elefanten』のパンフレット

カッセル自然科学博物館では、2022年8月12日から2023年9月3日の間、ドイツ語でゾウを意味する「Elefant」というテーマの特別展を開催しています。なんと最初の2カ月で2万人以上が訪れたそうです。

展示スペースは400平方メートル以上あり、多くの模型やはく製、復元品やゾウにまつわる貴重な資料、作品が展示されています。

複数展示されている等身大の象の復元模型やはく製もハイライトの1つ。

生物学的な魅力だけでなく、象の文化的歴史も紹介されています。

特別展は2023年9月3日まで開催されているので、この期間にドイツに訪れるご予定のある方は、ぜひ観光地のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

【実際の写真付き】ゾウ展の展示内容と見どころ厳選5つ

迫力満点のゾウ展。今回は写真とともに、ゾウの興味深い生態と文化史を5つ厳選してご紹介します。ゾウの魅力が詰まった展示内容を写真とともにお楽しみください。

見どころ1. ゾウの進化を復元模型とともに観賞できる

ゾウの進化がわかる模型とパネル展示

ゾウ展の一番の見どころは、ゾウの進化を復元模型とともに鑑賞できることです。

Moeritheriumと呼ばれる絶滅したゾウの祖先

絶滅したゾウの祖先といわれている「Moeritherium(モエリテリウム)」は、古代の沿岸地域で水生植物を食べて暮らしていたようです。体格や生活様式はバクに似ており、象を連想させる特徴もあります。

下あごが印象的なPlatybelodon

こちらは、「Platybelodon(プラティベロドン)」という種類です。

プラティベロドンの下向きに生えている象牙や大きな下アゴは、地面を掘るよりは、木の皮を剥くために使われたのではないかといわれています。

見どころ2.子どもも楽しめる!クイズや触って楽しめる展示もあり

パネルをめくればゾウの生体がわかるようになっています

特別展『Elefanten』では、ゾウについてのさまざまな情報をクイズ感覚で学べます。

例えば、ゾウの心臓は27kgまで重くなり、約50cmの大きさを持ち、1分間に30回鼓動しているという興味深い事実があります。

その他にも、鼻が上唇と融合していることや、4万以上の筋肉がゾウの機敏な動きと力強さを支えるなど、ゾウの驚くべき生物学的な特徴について深く理解することが可能です。

ゾウの祖先に関する2択クイズも用意!展示をしっかり見れば全問正解も夢じゃない!?

特に注目すべきは、子ども向けの展示ですが、大人も楽しめる点です。

ゾウの生態や解剖学的な特徴をクイズや触れる展示を通じて体験できるため、知識の向上だけでなく、楽しさも感じられます。

見どころ3. 未来にマンモスが復活する!?

特別展に展示された巨大マンモス。身長198㎝のドイツ人が手を伸ばしても届かない!

ゾウ展の展示には、なんと「未来にマンモスが復活する!」という驚きのテーマもありました。

マンモス復活に向けた研究報告も紹介!

氷河期に絶滅したマンモスを蘇らせるための研究が行われており、その過程を展示しています。研究チームはアジアゾウの特定の遺伝子をマンモスの遺伝子と置き換え、寒冷な氷砂漠で生息できるように研究しているのだとか。

実現までの道のりはまだ長いですが、2027年にはマンモス復活実現の可能性も出てきています。

映画『ジュラシックパーク』のような夢が現実になる日も遠くないかもしれません。

見どころ4. ゾウの影の歴史が隠されることなく展示にある

東南アジアを中心に使われているゾウを慣らす「アンカス」と呼ばれるフック。とがっている部分を赤丸で示されたツボを刺激して制御する。思っていたより先がとがっていています。

特別展『Elefanten』は、単なるエンターテイメントにとどまりません。

ゾウの歴史に関する事実が、過去の写真や展示品をもとに公正に展示されています。

ゾウは神として崇拝される存在でもありました。

例えば、ヒンドゥー教ではガネーシャとして知られる象の頭は、知恵や幸福の象徴であり、障害を取り除く神として崇められてきました。

第二次世界大戦中の日本兵とゾウの写真。イギリス軍との戦いのさなか、ミャンマー(ビルマ)で戦争に使う物資を運んでいる

しかし、ゾウは残酷な飼い慣らしや労働動物としての利用だけでなく、戦争にも利用されました。

さらに、ヨーロッパの貴族の飼育場に入るようになったのは後のことであり、ヨーロッパ人との接触は、ゾウにとって苦痛をもたらしました。展示を通じて、ゾウを巡る問題や法規制の必要性について考えさせられました。

包み隠さず展示された事実を通じて、日本ではなかなか触れる機会が少ないゾウの歴史に対して、大人から子どもまで考えさせられるでしょう。

象牙ハンターとゾウのパネル展示。

また、日本を起点とする象牙の密輸が問題視されているというニュース報道もありました。展示を通じて環境犯罪や規制の必要性についても触れられている点からも、タイムリーな話題でしょう。

ゾウの保全活動についての展示も

1800年代と現在のゾウの生息分布図

現在、生息地の減少や象牙取引の増加により、ゾウは絶滅の危機に瀕しています。

展示を通じて、まずは実際に何が起こっているのかを客観的に知ることができます。

カッセル自然史博物館のスタッフによれば、ゾウにとっての最大の脅威はライオンなどの肉食動物ではなく人間であることが強調されていました。

象牙の需要によって毎年何千ものゾウが犠牲になっていることはニュースやドキュメンタリーで知っている方もいるかもしれません。

さらに、「狩猟農場」と呼ばれる合法的なトロフィー狩りも存在し、ドイツへの輸入も残念ながら制限されていないそうです。

人間全体の責任として、カッセル自然史博物館は一般の人々にゾウの保護意識を高めてもらうため、持てる限りの情報提供や支援を行う必要があると語っています。

私たちにできることは限られていますが、『Elefanten』の展示を見ることで、ゾウの保全活動について知り、問題を啓発し、考えることが重要なのではないか、と思いました。

見どころ5.ゲーテとゾウ

ゲーテとカッセル、ゾウの関係を示す展示

筆者も知らなくて驚いたのですが、特別展『Elefanten』では、詩人ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテとカッセル・ゾウの関連性を明らかにする展示もありました。

1784年6月、ゲーテはカッセル方伯の動物園(カール方伯の動物園) から、早逝したゾウ(通称:ゲーテのゾウ)の頭蓋骨を受け取りました。ゲーテはすでに数か月間、いくつかの脊椎動物の頭蓋骨で人間と同じく「中間顎骨」と呼ばれる骨がゾウにもあるのではないかと仮説を立て、見つけだそうと努力していたそうです。

そこで彼は象の頭蓋骨の中に中間顎骨を発見。ゾウにおける中間顎骨の存在は、それまで一部の人々しか受け入れなかった人間と動物の生物学的なつながりを示す証拠となったのでした。ゲーテは大いに喜び、その後の彼の自然哲学的なアイデアの発展を支えることになりました。

ちなみに「早逝したゾウの骨格」の実物は、カッセル自然史博物館の常設展で見ることができます。

常設展では、ゲーテの逸話にまつわる子ゾウ(アジアゾウ)の骨格展示がみられる。このゾウの骨格がカッセルで保存されるに至った来歴も合わせて紹介されている。

常設展にあるアジアゾウの骨格展示では、ゲーテやカッセルとの関わりなど、このゾウに関する詳細なストーリーも明らかにされています。

生前の子ゾウとカール方伯(1938年)

まず、「早逝した子ゾウ」はカッセル方伯だったフリードリヒ2世への贈り物で、彼の動物園(カール方伯の動物園)に住んでいましたが、1780年、わずか9歳で落下による事故で亡くなってしまいました。

亡くなった後、骨格標本となった子ゾウは、おそらく大型哺乳類の骨格における初の組み立ての1つだったとされています。

五感で楽しもう!カッセル自然博物館は常設展もおすすめ

触って遊べる自然博物館は、大人から子どもまで、楽しく過ごせる魅力があります!

また、常設展は、観察や学習だけでなく、触ったり遊んだりできるため、自然愛好家や家族連れにもおすすめ。大人から子どもまで楽しめます。

展示スペースは程よい広さながら、見どころたっぷりです!

恐竜の骨格標本やカッセルに生息する動物たちのはく製展示、古代に生きた動物や原始人たちの復元展示も迫力があって見逃せません。

臨場感あふれる展示物を通じて、恐竜の世界に思いを馳せたり、剥製の生き物に興味津々で近づいたりするなど、より身近に自然界の美しさと多様性を実感できるでしょう。

さらに、一部の展示物は触れることが可能です。生物や植物、砂などの無機物の形状や触り心地を直接体験できます。

五感でさまざまな展示物を通じて、自然の不思議さや美しさに触れることで、訪れる人々は楽しみながらも学びを深められるでしょう。

まとめ

現在地球に生息するゾウは3種類。特徴も異なることがわかります。

今回は、カッセル自然史博物館(オットーニウム)の特別展『Elefanten』についてご紹介しました。

展示室では、ゾウの生態や歴史、保護の必要性などが、豊富な情報と共に伝えられています。

写真やはく製、復元模型などを通じて、ゾウの生態について学べるほか、ゾウを通じたゲーテやカッセルとの関連性、社会的な意義と啓発をもたらす貴重な展示もあります。

ゾウは絶滅の危機にあり、レッドリストに載る絶滅危惧種です。

人間である私たちが、未来でもゾウの姿を見続けるためには、まずこのような展示を通じてゾウが直面している象牙や狩猟の問題、保全、共生に関する内容を知り、考えることから始まるのではないかと感じました。

もし、会期中に展示が見れなくても、常設展でもゾウに関する展示がいくつか見られますので、気になった方は、ぜひカッセル自然博物館に遊びに来てください。

「カッセル自然史博物館(オットーニウム)」基本情報

所在地: Steinweg 2, 34117 Kassel, ドイツ
開場時間:火、木~土曜日 午前10時~午後5時
水曜日 午前10時~午後8時
日曜日 午前10時~午後6時
※月曜日休館
※12月24日と12月31日は閉館日です。
※祝日(月曜日も含む)は営業
公式HP:https://www.kassel.de/einrichtungen/naturkundemuseum/index.php (ドイツ語)

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