アート

書籍やカタログ、絵はがきで振り返る「国立西洋美術館」の名品!休館中の予習・復習にいかが?

上野駅の公園口を出て、公園に向かって歩いていくとすぐ右手に見える国立西洋美術館。西洋の美術作品を専門とする日本最大級の美術館です。

アートファンはもちろん、数多くの人が1度は足を運んだことがある西洋美術の殿堂ですが、現在、2022年春まで施設整備のために長期休館中。

そこで今回、来年秋のリニューアルオープンに備えて、国立西洋美術館や同館で扱われている西洋美術について、私が収集してきた書籍やカタログを参考にしながら同館の魅力をご紹介。再開に向けた予習・復習をしておきたいと思います。

ガイドブックや雑誌で知る国立西洋美術館の概要

国立西洋美術館が開館したのは1959年です。世界的に有名なフランス人建築家ル・コルビュジエが本館を設計したことで、建物としての知名度もワールドクラスです。1979年には新館、1997年には企画展示館が完成。設計はともに弟子の前川國男設計事務所が行いました。

休館直前まで、年間2~3回の企画展を開催。約6000点のコレクションのうち、約200点が常設展示され、常設展では西洋美術の歴史を辿ることができます。

左から:『芸術新潮』新潮社 2009年2月号/『国立西洋美術館 公式ガイドブック』企画・監修 国立西洋美術館 淡交社 2009年/『国立西洋美術館の名作: 国立美術館初の公式ガイドブック』岡﨑素子著 国立西洋美術館村上博哉監修 独立行政法人国立美術館 2019年

『国立西洋美術館 公式ガイドブック』では美術館の歴史や世界遺産の建築、常設展示の作品をコンパクトに紹介しています。『国立西洋美術館の名作: 国立美術館初の公式ガイドブック』には77点の常設展示作品を日本語と英語で紹介しています。この2冊のガイドブックは、持ち歩きにも便利なコンパクトサイズなので重宝します。

また、意外なところでは美術雑誌のバックナンバーも使えます。

特におすすめなのが、『芸術新潮』2009年の2月号。国立西洋美術館の開館50周年を記念して、総力特集が組まれました。開館に至る物語、開館当初の貴重な写真、約50年間の展覧会リストが網羅されています。パラパラめくっていくだけでも、昔はこんな展覧会が開催されていたんだ…と楽しめますよ。

表紙に「なるか世界遺産」とタイトルがついているのは、同誌が発売された前年の2008年に、世界6か国のル・コルビジュエ建築物が世界遺産の暫定登録リストに登録されたからです。実際に登録記載されたのは8年後の2016年のことでした。

休館中も外から見える?!前庭にはロダンの名作彫刻が!

左から:『手の痕跡 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』国立西洋美術館 2012年/オーギュスト・ロダン 左「カレーの市民」(1884~88年原型、1953年鋳造)、右「地獄の門」(1880~90年頃/1917年原型、1930~33年鋳造)ともに松方コレクション

休館のため敷地内には入れませんが、外からもオーギュスト・ロダンの彫刻を見ることができます。

「カレーの市民」は14世紀を通して、イギリスとフランスの王家が戦った100年戦争で激戦地となったカレーで街を救った勇士がモデルです。「地獄の門」は高さ5メートルを超え、ダンテの『神曲』をテーマに200体以上の人物像彫刻されています。

2012年には「手の痕跡」展が開かれ、ロダンと弟子ブールデルの彫刻・素描が展示されました。写真の図録表紙を飾る作品はロダン「ネレイスたち」(1887年以前)。高さ43センチのブロンズ像です。同じくらいの大きさのブロンズ像が複数、館内に展示されていました。同館のロダン・コレクションは60点もの彫刻作品からなります。

『手の痕跡』展 カタログ
https://www.nmwatokyo-shop.org/view/item/000000000010?category_page_id=1001

造船王が収集した傑作揃い!松方コレクションって何?

左から:『西洋美術館名作選』西洋美術館振興財団 2013年/『国立西洋館開館60周年記念 松方コレクション展』国立西洋美術館、読売新聞東京本社、NHK、NHKプロモーション 2019年

国立西洋美術館のコレクションは、実業家・松方幸次郎(まつかたこうじろう)が、日本の若い芸術家に本物の西洋美術作品を見せたいと、パリやロンドンで作品を集めたことに始まります。

その後、売立て、焼失、接収など、コレクションは苦難の歴史を経て、第二次大戦末期にフランスに接収された作品のうち寄贈返還された375点を核として、1959年に国立西洋美術館が開館しました。

松方幸次郎が収集した美術作品のことを「松方コレクション」、松方が手放した作品を買い戻したものを「旧松方コレクション」と呼び、あとから購入した作品と区別をして、キャプションにも明記されています。

『西洋美術館名作選』の表紙を飾るクロード・モネの「睡蓮」は松方がモネのジヴェルニーの自宅まで足を運んで、画家本人から直接購入した作品。それ以外にも、この名作選では約140点のコレクションがカラー図版で紹介されています。

そんな松方の偉業を記念して2019年に開催されたのが、『国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展』です。

同展は、松方がコレクション収集をスタートしてから現在に至るまでの約100年の歴史をまとめた展覧会で、常設展示では見ることが少ない作品や松方の旧蔵作品も展示されました。表紙の作品は、2016年にルーヴル美術館で上半部は欠失した状態で発見され、修復後初公開となったモネ「睡蓮、柳の反映」です。クラウドファンディングを活用して資金を集め、絵画の全体像をデジタル推定復元した展示も話題を呼びました。

「国立西洋美術館名作選」
https://www.nmwatokyo-shop.org/view/item/000000000021

「松方コレクション展」カタログ
https://www.nmwatokyo-shop.org/view/item/000000000027

西洋美術にはひみつがあるらしい

左から:ロレンツォ・レオンブーノ・ダ・マントヴァ「キリスト降誕」1515年頃、ヨース・ファン・クレーフェ「三連祭壇画:キリスト磔刑」16世紀前半、『西洋絵画のひみつ』藤原えりみ 朝日出版社 2010年 

国立西洋美術館のコレクションには中世末期から20世紀初頭にかけての西洋絵画と、ロダンを中心とするフランス近代彫刻などがあります。

そこで、どんな作品があって、どのように鑑賞すればよいのかを教えてくれるオススメの3冊の本を紹介します。国立西洋美術館所蔵作品の絵はがきと一緒に見ていきましょう。

西洋美術ではキリスト教とギリシア神話が多くの作品に表されています。

『西洋絵画のひみつ』では、表紙に、ギリシア神話の女神ヴィーナスとキリスト教のマリアとキリストの聖母子が描かれています。神様や英雄が描かれた時代の決まりごとから、庶民の生活を描く「風俗画」、景色を中心に描く「風景画」が生まれる美術の流れを、イラストも交えてわかりやすく紹介しています。

キリスト教の絵画で登場する主な聖人には、それぞれ目印となる持ち物、服装が決まっています。たとえば、聖母マリアは、天を表す青いマントと受難の血を表す赤い衣が鑑賞のポイント。聖人たちの頭上には、金色の輪が描かれることが多くあります。

左の絵はがきは中央に聖母子(マリアと幼子イエス)が主役の、「キリスト降誕」シーンを描いた作品。クリスマスカードでもよく使われる定番の場面です。右の絵はがきは、キリストが処刑されるシーンを描いた「キリスト磔刑」。

2つの作品をよく見て下さい。両方の場面でも、やっぱり聖母マリアは青いマントを着ています。

▼『西洋絵画のひみつ』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4255005133/

絵画をより深く鑑賞するにはどうしたらいい?

左から:クロード・モネ「雪のアルジャントゥイユ」松方コレクション1875年、ポール・シニャック「サン=トロペの港」1901~02年、『絵を見る技術-名画の構造を読み解く』秋田麻早子 朝日出版社 2019年

さて、もう少し深く絵を見るためのテクニックをご紹介していきましょう。そこで役にたつのが、2019年に発売され、2年以上たった今でもロングセラーとして売れ続けている『絵を見る技術』というガイドブックです。

『絵を見る技術』では、絵画の配色や構図を徹底的に観察するための技法をわかりやすく紹介。それぞれの構図が何を表しているのか、絵画の明るい・暗いといった印象はどこから来ているのか、本書を読むと非常にクリアに理解できるようになるでしょう。

たとえば、風景画では、「手前から奥に向かう線が、中心に描かれたものを導き、後ろに斜めのラインを置くと落ち着いた構図になる」という趣旨で書かれています。

ためしに、同館所蔵の作品で見てみましょう。モネが描いた雪の風景画は、まさにカーヴした雪道が大きな建物に向かい、左側の木々が斜めのラインをつくっています。シニャックの作品も、入り江の曲線が鑑賞者の視線を奥へと誘い、画面奥では右肩が上がりになるように、建物のラインが斜めにつながって描かれていますよね。

▼『絵を見る技術』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4255011117

キュレーターの解説に納得する 

左から:カルロ・ドルチ「悲しみの聖母」1655年頃、アンリ・ファンタン=ラトゥール「花と果物、ワイン容れのある風景」1865年、ヴィルヘルム・ハンマースホイ「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」1910年/『国立西洋美術館 名画の見かた』渡辺晋輔、陣岡めぐみ 集英社 2020年

『国立西洋美術館 名画の見かた』は作品を研究したり、展覧会を企画したりしている国立西洋美術館のキュレーター2人が書いた正統派的な解説書。同館の主力作品を宗教画、物語画、静物画などカテゴリ分けしてピックアップ。作品が成立した当時の歴史背景や、描画技法、鑑賞のためのテクニックなど、様々な視点でアカデミックに作品を深堀りして楽しむヒントが紹介されています。

左から見ていきましょう。カルロ・ドルチが描いた聖母マリアは、手を組み合わせるポーズや悲しげな表情が印象的。これは、我が子キリストの死を悼んでいる場面を描いています。本作は、17世紀当時でも人気を集め、多くの模写がつくられました。

続いて、モネやルノワールとほぼ同時代に活躍した画家ファンタン・ラトゥールの静物画からは、暖色で描かれた桃やメロンから甘いにおいが漂ってくるようです。

一番右の作品は、「北欧のフェルメール」とも呼ばれることもある、デンマークの国民的画家ハンマースホイの風俗画。日常の室内を描いているのに、どこか非日常的で不思議な雰囲気が魅力です。

美術作品は感じること、イメージをふくらませることが大切です。でも、作品が描かれた時代や画家の暮らし、技法の変遷などを知ると、もっと深い感動を味わったり、大きな歴史のうねりを感じることができるのです。

▼『国立西洋美術館 名画のみかた』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4087816842/

休館中もWebで楽しもう

常設作品にちなんだオリジナルグッズ
左上:ヴィンセント・ファン・ゴッホ「ばら」(松方コレクション 1889年)をモチーフにしたハンドタオル
左下:ピエール=オーギュスト・ルノワール「帽子の女」(松方コレクション 1891年)をモチーフにした鏡
右:クロード・モネ「睡蓮」(松方コレクション 1916年)をモチーフにしたハンドタオル、スカーフ、ちりめんベア 

国立西洋美術館は休館していますが、Webサイトは更新されています。時々のぞいてみましょう。

休館中も、ミュージアムショップは営業中。絵はがきや展覧会のカタログ、美術館オリジナルグッズがWebサイトから購入できます。

ミュージアムショップ
https://www.nmwatokyo-shop.org

YouTubeでは、キュレーターが常設展示作品の前で5分程度の解説を実施。館内で作品がどのように展示されているのかもわかるので、美術館の中にいるような感覚が味わえます。

常設展のギャラリー・トーク
https://www.youtube.com/channel/UCFtBgJ1ArMLvcpQeT2vNupQ/videos

FacebookやTwitterでは、季節に合わせた作品を紹介しています。たとえば4月は誕生石のダイヤモンドをふんだんにあしらった指輪作品を取り上げています。

▼「所蔵作品紹介シリーズ」(Facebook、Twitter)
https://www.facebook.com/NationalMuseumofWesternArt
https://twitter.com/nmwatokyo

2022年春の開館が待ち遠しくなります。

国立西洋美術館:基本情報

国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7番7号
TEL:ハローダイヤル 050-5541-8600
公式HP:https://www.nmwa.go.jp/

橋本菜摘

橋本菜摘

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橋本 菜摘 
美術大好きのアートブロガーです。美術館でボランティアをして多くの仲間と作品に出会いました。面白いものがあったら誰かに話したい、美術作品と出会うきっかけづくりをしたいと思っています。
ブログ「アート ハミングバード」には展覧会で見たこと、考えたことを載せています。
http://hummingbird331.blog.fc2.com/
Instagram:okiron2017

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