ニューヨークコンフィデンシャルエピソード9

このコラムでは、「どうせ私なんか…」というセリフが頭に浮かんでいた日本での私が、多様性の都といわれているアメリカのニューヨークに47日間滞在し、半歩ずつそのマインドを変えていき、『“インドミタブル(不屈の精神)”MAYUMI』になるまでの軌跡を辿っています。

★過去のエピソードはそれぞれ下記URLからどうぞ!
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep1-20221124/
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#19 ドキドキの部屋割り

シルバーベイは、since1902!歴史の浅いアメリカでは、由緒あるYMCA施設だ。当然、建物の雰囲気も、古き良きアメリカっぽい。外回りは、街路樹を中心に緑の広葉と赤の花でまとめられ、その中心にシルバーベイ湖が座している。まるでスイスの景色のようだ。ブルックリンの喧騒から来た私は、思わず「ここは、天国?」と呟く。

湖沿いに点在する宿泊施設の中で私たちが泊まるのは大きなお屋敷のようなPine House、3階建てで1階には大きな石畳ホールもある。この大きな家で親族一同約30人が家族単位で部屋割されていった。お年を召した方は階段を避けるため1階というふうに配慮され歩ける私は3階に1人部屋が割り当てられた。知らない人と長い時間を過ごすことが大の苦手な私は、ホッとした。前もって聞いていたとおり1人部屋だった。でも、裏庭側だった。

実は、正門から大きなオーバルの曲線を持つ部屋が見えていた。憧れていた。でも、長い人生「諦め」と共に生きてきてしまっていた私は、下を向いていつも通り、つい受け入れてしまう。とほほ。

ところが、次の瞬間、「ダメもと❣ダメ元❣」と呟く声がして、「このオーバルの部屋に変えてくれない?」とお願いする言葉が口をついて出てきた。私の中のどこに、そんなに私を押し上げてくれる力があったの?自分じゃないみたい?どこからそんな勇気が出てきたの?

一瞬の間。私にはとても長い間を置いて、「OK」の声がした。

もらえちゃった???、!!!

自分の願いがちゃんと自分でわかって、それを相手に伝えられて、その上、それが叶ってしまった。信じられない! 心が弾んだ!

この部屋で8日間過ごすことに。

#20 選びきれないアクティビティの数々

湖でのアクティビティには最初に行った水泳場はもちろんボート、カヌー、パドルボート、ヨットの講習会まで用意されている。陸上のスポーツではテニス、アーチェリー、ソフトボールのできるグラウンド(広場?)などがあり、雨の日には図書館で本を読むもよし、トレーニングジム、体育館まである。いくつかのホールではコンサートが開かれ教会で祈りをささげることもできる。家族の絆を深めるたくさんの仕掛けがそろっている。またそれぞれのアクティビティにはインストラクターがいて、基本どれに参加しても自由だし、それらの料金は概ね基本料金に含まれている。アクティビティ費用込みなので、いつ何をやってもいい。贅沢すぎる!英語がわからないから詳しいことは抜きにして、自由な感じ!

広すぎる自由の中で、何を選んでいいのか迷ってしまう。

今回のFamily Reuinionを仕切っているナンシーに訊ねても皆の自由意思を尊重しているので「みんな、好きなことやってね」と言われるばかり。

さーて、何しよう。

翌朝、「散歩に行かないか」と誘われた。

こんなにたくさんのアクティビティが用意されているのに「散歩?」と思った。

色々やれることが目の前にあると、やりたくなっている欲張りな自分に気がついた。散歩の途中でソフトボールをやってる親戚の子供たちがいた。小さい頃から遊びに「入れて」と言うのがとっても不得意な私だったのに。1声かけたら、入れてもらえたぁ~。自然にできてきた人から見れば、それは、ちっちゃなことかもしれないけど、できなかった私にしてみれば、でっかいことだ。そして最初の打席、見事センター前ヒットに。

気分は、もちろん、ハイテンション!もっと、やりたい!

人気のあるクラスなどは一応予約が必要だけれど参加者もぎすぎすしていない。入るのもやめるのも自由。ユルーイ感じ。なのでふらっと行って「やらせてください」と言えば「はい、どうぞ、ようこそ」 という感じで気軽に参加できる。だから、ビフォーの緊張感を持つことが無い。日本だと、初日とか第一回目の前って、「行って、本当に出来るかな?」とか、「できなかったら、どうしよう」とか、いろいろ、頭で考えすぎて、疲れちゃうのだけど、それが無いから、ノーストレス。ここでは、気を揉む作業が無いので、あっけないぐらい、ノーストレス。日本では今まで味わったことのない不思議な感覚。誰かが面白そうなことをやろうとしているのを見つけたら「一緒に連れてって」と言えば連れて行ってくれて一緒にできるんだ。

ヨットの初心者クラスは人気があってキャンセル待ちでそれだけでがっかりして帰宅したら、ナンシーがついてきてくれてウエイティングリスト9番目に入れてくれた。

そのあとも1人でマシーンジムに行って体を動かしたり、乗りにくいけど、かっこいい親戚の自転車を借りて、敷地内の施設の中を見て回って帰ると夕飯タイム。遊んで、暗くなってから帰って、ご飯が始まるなんて「まるで、子どもの世界」

3つの大テーブルで次の予定を話しながら、一緒に食べる。夜8時からコンサートに行くらしいと知って連れて行ってもらった。時節柄、ウクライナ音楽、選曲が素晴らしく音楽オンチの私でも飽きることが無かった。珍しいことが立て続けに起こった。

恐る恐るアクティビティに足を突っ込んでみたら、なんともはや心が満たされていった。

3日目、ヨット講習ウエイティングリスト9番目だったので「無理よねー」「でも無理だったわ。と言う方が気が楽だよね~」なんて思いながら、行ってみたら、なんとメンバーに入れてもらえた。始めはヨットハウスでヨットの操縦の仕方と理論を教えてくれる座学。ほとんど英語が聞き取れず、持参した小型ビデオで録音し、ホワイトボードにかかれた単語を携帯で調べたり説明のための図を見ながら想像を巡らせるしかなかった。部屋に戻って、日本語のユーチューブを見て少しわかった気がするものの、明日から足のつかない湖で実技に挑戦できるかと考え始めるとどんどん緊張してきてお腹が痛くなってしまった。その結果、残念ながら、2日目の講習会は不登校に、いやいや、欠席に。けれど後で親戚のケリーにその様子を聞くと、全員転覆を経験したそうだ。いや、させられた⁈  のかな。参加していたケリーの奥さんのスーザンは、この転覆騒ぎにインストラクターに本気で腹を立て、「もう行かない」と宣言した。それからの展開がすごい。その代わり、スーザンと私は、ケリーにユルーク操縦を教えてもらうことになった。何にもしていないのに、私の望み通りに事が進む。はじめてヨットの帆を操ることができ、自分じゃないような気分になった。

#21 透明人間返上

そのあともヨガにピラティス、テニスにアーチェリーと片っ端から参加してみた。

考えられない、信じられない。

日本では、うまくやろうとか、どんな人と一緒とか、人に迷惑かけちゃいけないとか、人の足を踏まないように気にしてばかりだった、そのバリアーが無いのだ。自分で信じられないほど色んな事が出来た。自分ができることに驚いた。相手も受け入れてくれた。英語がそんなにできるわけではないのに楽しい空気をなぜか皆と共有できていく。

ここは一体どういう場所なんでしょう?

夜は、セントラルパークでスタッフをしているジェリーの出番だ。Pine Houseでキャンプファイヤーをしてくれた。ここでは、それが自由にできるのだ。皆、思い思いに寝転んで、焚火の灯りの元でおしゃべりをし、お決まりのチョコレートマシュマロを焼いて、歌った。

最終イベントは、YMCAのスタッフ・コーチ・インストラクター一同によるアマチュアミュージカルだ。観客達も自分達がお世話になった人がステージに出てくると、黄色い声援を送っている。あっという間に滞在期間の8日が過ぎていった。日本でもソロ活ばかりで、どこへ行っても「いない人」になってしまい「透明人間」だった私が、ここでは、ソロなのにひとりぼっち感を感じなかった。ここは、キャンプ場なのだから、ほとんどの人が家族連れだ。その人たちを見ても、私のお決まりのセリフ「どうせ私なんかひとりぼっちだから」と拗ねる言葉が頭をよぎらなかった。不思議だ。それは、たぶん、疎外された感じがしなかったんだ。

アメリカは、個人主義が行き過ぎていて皆が孤独と聞いていたけど、その孤独の立ち位置を知っているから、1人で参加している人でも自然に受け入れることができるんじゃないかな。それもリスペクトのような空気感をもって。

あまりにも何にでも挑戦してやろうとするのでナンシーからは indomitable「不屈の精神」と言われるし 婿殿の姉さんネルからは intrepid「恐れを知らない」とどちらも私にとって、初めての形容詞を頂戴した。自尊感情の欠片もなかった私が、そんなふうに見える?本当?私は誰?

日本では、始めの一歩が踏み出せなかった私が、シルバーベイで魔法にかかった。

今回は、アメリカ滞在のハイライトともいえるシルバーベイキャンプのお話でした。ここで確かに私は変わった気がしましたし、この後の行動にも変化が起きた気がします。次回は帰国までに起こった体験についてお話しします。お楽しみに。

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