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読み始めたら止まらない!斜線堂有紀さんおすすめ小説4選

「小説を書くのが好き!」

と仰る小説家さんといえば、私が最初に思いつくのは斜線堂有紀さんです。

小説を書くのが好きだとインタビューなどでよく仰っており、1年に3作ほどのペースで小説を出されている多作な作家さんです。2023年3月には最新作『回樹』が早川書房から出版され、私はこれから読むのでとても楽しみです。

ジャンルはミステリーが中心で、トリックもおもしろいのですが、私が特に素晴らしいと思うのは、ユニークなキャラクターと彼らの微妙な心の動きの描写です。今回は斜線堂さんのおすすめ作品をいくつか紹介していきます!

斜線堂有紀さんってどんな作家?

斜線堂有紀(しゃせんどう・ゆうき)さんは、1993年生まれの小説家です。お名前はペンネームで、島田荘司さんのミステリー小説『斜め屋敷の犯罪』に由来するそうです。

2016年、大学在学中に『キネマ探偵カレイドミステリー』で 第23回電撃大賞「メディアワークス賞」を受賞して、小説家デビュー。以来、ペースを落とさずにどんどん作品を世に送り出していらっしゃいます。

ミステリー作品が中心ですが、恋愛小説の『愛じゃないならこれは何』を執筆するなど、活動の幅を広げています。あまりに多彩すぎるため、ほんの一部になってしまいますが、作品を紹介していきましょう。

『キネマ探偵カレイドミステリー』

斜線堂さんのデビュー作で、シリーズで3作が出版されています。留年しそうなダメ大学生・奈緒崎(なおさき)と、自宅に引きこもって映画鑑賞に没頭する嗄井戸高久(かれいどたかひさ)の物語。

連作短編形式の本作では、火事などさまざまな事件が起きるのですが、トリックが実在の映画のシーンにリンクしています。嗄井戸は持ち前の頭脳明晰さと映画の知識でズバズバ解決していくのですが、引きこもりゆえの問題があって奈緒崎をわずらわせ……。

奈緒崎も嗄井戸もほかのキャラクターたちも全員が魅力的で、会話のかけ合いが楽しい作品です。しかしミステリー部分は結構な重さがあり……。さらに斜線堂さんが映画にも詳しいことが感じられるので、これが20歳くらいの頃のデビュー作?! と驚いてしまいます。

『私が大好きな小説家を殺すまで』

物語は、人気小説家・遥川悠真の突然の失踪から始まります。彼には関係を秘密にしていた幕居梓という女性がいました。

ふたりが出会ったのは、遥川は人気作家としての地位を築いた頃。小学生の梓が遥川の本を抱いて自殺しようとしたところを、遥川が引き止めたのがきっかけでした。

それから共生関係が始まるのですが、遥川が才能の限界にぶち当たる一方、梓は小説家としての才能を発揮するように。ふたりの関係は徐々にゆがんでいき……。

年齢差のある関係という小説ならではの甘美さと、才能がものを言う世界の狂気に触れる物語でした。結論のようなタイトルですが、「殺す」の意味をよく考えたい作品です。

『愛じゃないならこれは何』

斜線堂さんの初めての恋愛小説です。短編集でして、タイトルだけでも興味をそそられると思うので、抜粋させてください。

・きみの長靴でいいです
・愛について語るときに我々の騙ること
・健康で文化的な最低限度の恋愛
・ミニカーだって一生推してろ
・ささやかだけど、役に立つけど

恋愛観というものは、世代によってかなり開きがあるように思います。私が斜線堂さんと同世代だからか、「あるある!」「ありそう!」と自分のことのように感じられて身悶えしながら読みました。

特におすすめなのが『ミニカーだって一生推してろ』です。アイドルの女性が主人公で、ファンの男性を好きになるお話です。……というか、ストーカーまがいのことをしてしまいます。

ありがちなのは、過激なファンがアイドルのストーカーになることですが、本作は反対です。一般人もSNSをやっているので、アイドル側が気になったファンをサーチできるんですね。

それで彼女はおかしくなるくらい彼に夢中になるのですが、「どうして彼のことはウィキペディアで調べられないのか」といった切り口など、一般人に恋するアイドルのもどかしい感情が鋭く表現されています。

『楽園とは探偵の不在なり』

「2人以上殺した者は“天使”によって即座に地獄に引き摺り込まれる」というSF的な世界で展開するミステリーです。言い換えると「1人までは殺せる」のがポイントです。殺人は起こるけれど、連続殺人は起こらない、という世界。

そこで主人公の探偵が招かれたのは孤島の館(本格ミステリーの王道な舞台!)。そこで起こるはずのない連続殺人が起きて……?

トリックが複雑でとても面白かったです。連続殺人ができない世界で、そこまでのトリックをしかけてまで殺人を犯した犯人の執着心の恐ろしさも感じられて、ドラマチックな物語でした。

ちなみに本作はテッド・チャン『地獄とは神の不在なり』にインスピレーションを得て執筆されたそうです。天使の設定やイメージにはつながりを感じる部分があると思います。

小説家がおすすめする本とは?

ちなみに、斜線堂さんはおすすめの本を紹介するコラムを書かれていたことがあります。

https://honcierge.jp/writers/11634

私は勝手に読書ガイドとして活用しており、上から順に読んでいるのですが、どれもおもしろいです! 斜線堂さんの好みの傾向自体が好きなのかもしれません。

斜線堂さんの本が好きな方にはおすすめの本も読んでみてほしいし、おすすめの本が被っている人には斜線堂さんの本がハマるのではないかと思います!

夢中で読んでしまう小説を世に送り出し続ける斜線堂有紀さん

生き生きしたキャラクター、読みやすいのにハッとさせられる文章、秀逸なトリック、意外な発想と、斜線堂さんの作品には私が読みたいおもしろさが詰まっています。読み始めると最後までやめられないんですよね。

ミステリーだけでなく恋愛やSFの作品にも活躍の場を広げていらっしゃるので、これからの作品も楽しみです。

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館めぐりの楽しさを発信。西洋美術、日本美術、現代アート、建築、装飾、ファッションなど、扱うジャンルは多岐にわたる。人間より猫やスズメに好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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