建築好きは要注目!海辺の風光明媚な史跡「旧田中家別邸」

温泉地や寺社仏閣、旧跡、風光明媚な自然環境など、南九州の観光スポットとして今大きく注目を浴びるのが霧島市。そんな霧島において、特に建築好きの方におすすめしたい、穴場的な観光スポットが「旧田中家別邸」です。

海運業で財をなし、私立福山中学校を設立した田中省三が大正11年(1922)に建造した邸宅は、今年で造られてちょうど100周年。和風建築の技術と美意識の粋を集めて建設された本邸宅は、現在では鹿児島県の有形文化財にも指定されています。

そこで、今回はこの「旧田中家別邸」について、詳しくご紹介していきたいと思います!

旧田中家別邸とは?

旧田中家別邸は大正11年(1922 年)に完成し、昭和28年(1953年)に旧福山町が購入。 その後“福山老人憩いの家”として広く町民に活用されてきました。平成17年(2005年)、周辺の1市6町が大合併して霧島市が誕生してまもなく、平成18年4月(2006年)に県の有形文化財(建造物)に指定されました。

一般開放が始まったのは平成24年(2012年)から。“福山老人憩いの家”としての役目を終え、現在のような観光スポットへと生まれ変わったのです。

田中省三は、「旧田中家別邸」のある福山町小廻地区の出身。徐々にさびれゆく福山を憂慮した田中は、福山をふたたび発展させるためには立派な人物を育てることが一番だと教育の必要性を痛感。大正7年(1918年)に私立福山中学校を設立しました。旧田中家別邸は、その福山中学校に隣接した場所に建てられました。

桜島を中心とした錦江湾を望む風光明媚なこの場所は、心を落ち着けるための別荘としてぴったりですね。

邸内は撮影OK!建物の魅力を一挙ご紹介します

邸内の落ち着いた和モダンなしつらえは、ちょっとした迎賓館のような雰囲気も。美しい装飾が細部まで丁寧に施され、メンテナンスが行き届いています。

戦前のノスタルジックな空気感や脈々と受け継がれてきた美意識を肌で感じながら、静謐な邸内を思う存分楽しむことができました。

それでは、私のおすすめする邸内の主な見どころをご紹介します。

1.欄間

日本間での見どころは、なんといっても欄間彫刻。伝統的な意匠だけでなく、幾何学的な模様も入っているのだな…と思って、よくよく見てみると、この幾何学模様は「田中」という文字を表現しているのですね。美しさの中に、さりげなく含まれたユーモアも見逃せません。

2.天井

木材の梁が格子状に交差し、各木材の木目は一方向に揃えられ、全体としてリズム感のあるデザインを生み出しています。非常に考え抜かれた丁寧な造りに感激しました。

私は普段建築を鑑賞する際、あまり「天井」を強く意識して見ることはないのですが、旧田中家別邸の天井は格別でした。この日は、床の間の天井をずっと眺めていたくなりました。

3.障子の木彫細工

また、それぞれの部屋を仕切る「障子」にも要注目。直線や曲線を組み合わせた、アール・デコ調のモダンなデザインが非常に魅力的でした。

私は、旧田中家別邸で出会うまで、こんなに自由で美しい枠の形状や組子のデザインをみたことがありませんでした。ぜひ、じっくりチェックしてみていただきたいです。

4.床

こちらは長い板廊下。旧田中家別邸は、床板の美しさも格別でした。

廊下の曲がり角では互い違いに板が組まれており、心地よい調子を生み出しています。

このように、邸内のすみずみまで見どころだらけの旧田中家別邸。ここまで鑑賞しがいのある建築にはなかなか出会えません。

庭園も見学可能。霧島市の穴場観光スポット「旧田中家別邸」、楽しめました!

なお、邸内の見学が終わった後は、桜島を望む庭園も自由に見学が可能。こちらも風光明媚で、建物とマッチした景観が見事でした。

神社仏閣や温泉巡りなどで賑わう霧島観光の中で、旧田中家別邸はちょっとした穴場的なスポットかもしれません。知らないとなかなか足を運ぶことがないかもしれませんが、霧島に行ったらぜひ足を運んでいただきたい場所です。

旧田中家別邸・基本情報

所在地 :鹿児島県霧島市福山町福山2926番地1
・東九州自動車道国分インターチェンジより車で約10分
・鹿児島交通「福山中学校前」バス停より約3分
開館時間:8:30~17:00
入場料 :無料
休館日 :毎週水曜日、年末年始12/29~1/3
https://www.kagoshima-kankou.com/guide/10139

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