ニューヨーク・コンフィデンシャル エピソード10

このコラムでは、「どうせ私なんか…」というセリフが頭に浮かんでいた日本での私が、多様性の都といわれているアメリカのニューヨークに47日間滞在し、半歩ずつそのマインドを変えていき、『“インドミタブル(不屈の精神)”MAYUMI』になるまでの軌跡を辿っています。

★過去のエピソードはそれぞれ下記URLからどうぞ!
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#21 SAYONARA Silver Bay

シルバーベイキャンプからとうとう帰る日が来る。改めてこの素晴らしい機会を与えてくれた婿殿のお母さん、ナンシーに感謝。みんなとの別れも惜しまれるものの自分の力でゲットしたこのオーバル型の部屋を見納めるため、しばらく1人でベッドの上に座って外を眺めていた。

ここで経験させてもらった出来事が私の体の中に入り込んで、最初は隙間だらけだった私の中にぎっしりと重みが加わった気がする。この素晴らしい機会を与えてくれた婿殿のお母さん、ナンシーはキャンプ場スタッフに鍵を返すため、玄関に向かう階段に座って1人で待っている。

「本当にありがとう、ナンシー」

#22 Upstate

シルバーベイを後にし、そのナンシーの家で一泊させてもらう。ニューヨーク州の州都オルバニーにあるデルマーという街だ。マンハッタンから見ると北の方なのでみんなは「Upstate」と呼んでいる地域だ。カナダに近く本来は涼しいところなのに今年はうだるような暑さだ。それなのにエアコンがない。以前、来た時は素晴らしいところだと思っていたのに、2時間前までシルバーベイという異次元の世界で暮らしてきたので、暑さだけではなく現実感にいきなり押しつぶされそうになって、何かたまらない気分になってしまう。

ナンシーの妹のバーバラがショッピングモールに行く?と誘ってくれた。巨大なショッピングモールの駐車場にはスバル、ホンダ、日産、トヨタなどの日本車がぎっしりと止まっていてびっくりした。バーバラの車もスバル車だ。でも、日本の我が家の周りでもベンツ、BMW、アウディなどの外車ばかりだから、外車を持つことに対する気持ちは、いずれの国も同じなのかもしれない?

その日の一大イベントは、私からナンシーへのお礼の手紙と、ネルへの出産祝いの着物、バーバラへのお土産を渡す会だ。日本では親族の中でこうした会はあまりないだろう。婿の姉のネルは、コロナがどういう病気かまだわからない頃に妊娠し、出産後さえずっとコロナへの脅威がつづく時期だった。そんな時期に子供を持つ決心ができたことにその勇気を褒め讃えたくなり着物の贈呈式とあいなった。10人ほどの家族の前でスピーチをした。娘がビデオを撮ってくれて私の良い思い出になった。

こんなふうにみんなが集まって来るのも実はナンシーの力が大きい。前もってこういうことがしたいと相談すると、必ずそういう時間や場所を設けてくれる人なのだ。シルバーベイキャンプでの成功も然り。普段はハドソンリバーの水質を守る仕事をしている。娘が言う通り「人格者」としか言いようがない人だ。それを本人に言うと「ふりをしているだけよ」と笑わせてもくれる。しかし、ここからが肝なのだが、彼女はみんなの世話をして、それで時間を使ってしまい、自分の楽しいことをやる暇がないと言うような生き方をしていない。日本で少し前までたくさん見受けられた自己犠牲的な「良いお母さん」ではなくて、本人もカヌーもやれば、泳ぎもする。ヨットも乗ればパドルボートもと言うふうに自分も楽しみつつ、人の世話ができるのだ。なんともはやワンダーウーマンなのだ!

翌日、ベッツィーがデルマーまで車で迎えに来てくれてアセンズにある彼女の新居を訪問した。ベッツィーの犬の散歩に付き合って近所を案内してもらった。こぎれいな家々が立ち並ぶ閑静な住宅街だった。

アメリカの住宅街っぽい家々

このベッツィーの家、実はご主人のケビンがすべて手作りして建てた家なのだ。日本にでもたまに聞くけれど、すごいことだ。仕事をリタイヤするとニューヨークから郊外に移り住む人が多いようだ。ブルックリンの家は娘さんに譲るらしい。

ケビン自作のベッツィーの自宅

ところがめったにないことらしいが、水道の水が真茶色。水源の貯水池が干ばつだかららしい。私はBRITAを2回通した水をさらに沸かして飲んだ。

ニューヨークの水道水はハドソン川の水なので、東京と同じようにそのまま飲んでも問題ないと言われている。ここは、3分歩くとハドソンリバーに面しているにもかかわらず、水は貯水池からとっているから濁っているそうだ。「安心安全、美味しい」東京の水が恋しくなった。水問題は深刻なんだ。

 ナンシーの妹のバーバラもハドソン川沿いのニューボルチモアに住んでいる。近くなのでベッツィーにバーバラのところに連れていってもらうことになった。バーバラの家は広大な自然保護地区の中にあり庭の先は、なんとハドソン川が流れている。自然公園が庭みたいなものだ。アメリカ映画で見たことのあるビーバーのダムをその庭で初めてみた。家につくとそこにはシルバーベイでヨットを習ったケリーの奥さんのスーザンが一人泊まっていたので驚いた。親戚の中でも、仲が良いのだろう。紅茶を出してくれて楽しくおしゃべりをした別れ際にスーザンから言われた言葉は思いがけないものだった。「今回のシルバーベイのファミリーリユニオンにあなたがいてくれたことはみんなにとってとても良かった」と。なんて素敵な言葉。シルバーベイではあまり話をしなかったスーザンからもらった大きな贈り物。

バーバラの庭(TVCMに使われたこともあるらしい)

UPSTATEでの4日間はこれまたあっという間に過ぎ去り、今回はアムトラック鉄道でブルックリンに自力で戻る。乗車するのにコロナワクチンの接種証明書が必要であった。

アムトラックの車窓からのハドソン川の眺め

#Brooklyn Again

魔法の国シルバーベイ、家の正面にご近所さんと集える広いポーチを持つデルマー、閑静な住宅街のアセンズ、自然保護区であるニューボルチモアから電車と地下鉄を乗り継いでブルックリンに帰ってきたら、駅から出た途端、何か事件?⁉︎NYPDのお巡りさん達もけたたましいサイレンを鳴らして駆けつけている。すごい大騒ぎだが、どういう事件なのか誰にもわからない、でも、ここで銃声がして、この汚らしい道路に伏せるのは勘弁して欲しいなと言うような余裕のコメントも頭に浮かぶ。

そんな中、荷物が重いので地下鉄の駅まで迎えにきてほしいという電話をしたら、なぜか機嫌の悪い娘に冷たくあしらわれるものの、優しい婿殿は駅のほうに向かって走ってきてくれていた。ブルックリンの日常に戻ってきた。

今回は、私のような者でも人に影響を与えることがあり、それを人から言ってもらって、初めて知ると言うような透明人間脱却の出来事をお話ししました。その自覚を元手に次回は一言で言うと、ブルックリンやマンハッタンで以前ならやることができなかったアクティビティ参加の様子をご紹介します。その最後に一生忘れることができないアクティビティで締めくくりたいと思っています。ぜひご覧くださいね。

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