バリ島の空港も閉鎖される「静寂の日」とは?

バリ島の「ニュピ」は、ヒンズー教徒の信仰と魂の浄化を祝う、神聖な祭典です。
バリ島の空港も閉鎖され、人々はみんな静かに厳かに過ごします。そんなニュピの前日には「オゴオゴ」という鬼が町中の練り歩きます。日本の文化とは異なるバリ島の年末年始を、実際に現地で体験してきました。バリ島独自のニュピやオゴオゴは、とても興味深く刺激的でした。

静寂の日「ニュピ」

バリ島のニュピは、バリ・ヒンズー教徒(カサ歴)の信仰と魂の浄化を祝う、神聖な祭典です。毎年日にちが違い、通常は新月の夜に行われます。ニュピは、火を使わずに心を静かに保つことで過去の過ちを清め、新たな愛と希望への道を開く儀式です。この期間中、バリ島の人々は通常の日常生活を一時中断し、家族や友人と一緒に静かな時間を過ごします

ニュピの期間中、バリ島の道路や空港は閉鎖され、観光客も公共の場での活動を控えます。これにより、島全体が静寂に包まれ、晴れていれば夜空には見たこともないような星が輝きます。家族が一堂に集まり、心を通わせる美しい時を過ごします。音楽や笑い声は静まり返り、唯一の音は自然の囁きと祈りの囁きです

ニュピは、愛と精神の絆を深める魔法の瞬間であり、心が穏やかな癒しと至福に満ちる特別な時間です。このお祭りは、バリの文化や信仰を体験する素晴らしいお祭りで、観光客にもバリ島の真の魅力を伝えるものとなっているように感じました。

オゴオゴとは?

バリ島のニュピ前日には、「オゴオゴ」と呼ばれる大きな怪物のような人形が街を練り歩きます。この伝統的な行事は、悪霊や邪悪な力を追い払うために行われ、オゴオゴは悪霊が潜むとされる場所や家々を回り、騒がしく音を立て、火を焚き、大きな怪物のような姿で現れます。

大迫力のオゴオゴ

この行事の背景には、バリの伝統的な信仰があります。ニュピの前日に悪霊や邪悪な力を払い、清浄な空気をもたらすことで、ニュピがより意義深いものとなると考えられています。オゴオゴは、バリの島民とって重要な催しであり、地域の人々が一堂に集まり団結する機会となっているようです。

オゴオゴが街を練り歩く最中には、地元の人々が打楽器や太鼓を叩き、舞踏や演劇を披露します。また、火を焚く儀式も行われ、悪霊を追い払うための象徴的な行為として位置付けられます。この時期のバリの街は活気に満ち溢れ、人々の笑顔と祝祭の雰囲気が溢れています。実際にオゴオゴを見にバリ島のウブドエリアに足を込んでみました。

アートの町ウブドで出会った大迫力のオゴオゴ

ウブドというエリアは、文化と芸術の中心地であり、美しい棚田や自然に囲まれた静かな町です。伝統的なバリの舞踊や音楽、工芸品が楽しめ、ヨガやスパなどのヘルシー志向の施設も充実している魅力がギュッと詰まった場所です。また、アートギャラリーや手工芸店が点在し、クラフトマーケットもあります。

バリ島ウブドの様子

そんなウブドでオゴオゴを見るため、人気観光スポットでもあるウブド王宮近くまで行ってきました。夕方には町中の至るとこが通行止めとなり、歩きで移動する人がほとんどです。王宮付近に到着すると、地元の人々や観光客で溢れ活気に満ちています。18時頃のオゴオゴのスタートに合わせてたくさんの人が集まっていました。

オゴオゴが登場する場面

コミュニティー毎にプレートを持った女性が先導し、オゴオゴが歓声や音楽と共に登場します。オゴオゴはお神輿のように担がれ、勢いよく進んでいきます。

大勢の人がオゴオゴを担ぐ様子

ほとんどが男性ですが、子供や女性のみで構成されたチームもあり、どのオゴオゴもとても怖い出立ちのものばかり。毎年オゴオゴもコンペティションが開かれ、投票が行われます。また、その年によりイベントの終了時間は違い、現地の人によれば夜中まで続くこともあるそうです。

恐ろしい出立ちのオゴオゴ

オゴオゴを一通り見終えた後は、翌日のニュピに備えてスーパーマーケットで買い物。ニュピの日は外出禁止です。食べ物や必要なものは、前日までに揃えておく必要があります。

ホテルで過ごすニュピ

さて、ニュピ当日はホテルに缶詰です。あらかじめホテル内での過ごし方やレストランやプールの営業時間などを確認し、ニュピに備えて広めの部屋を予約しておきました。

ホテルでの朝食

ニュピの朝は、ホテルのレストランで朝食を摂りました。私の席はプールサイドでしたが、レストランは大通りに面したオープンテラスで、通り側は全方位にブラインドが下されホテル内が見えないようになっていました。通常よりも照明は暗く、音楽は流れていません。そのため鳥の囀りや雨音、ホテル滞在者のリラックスした話し声や中庭の水の流れる音が響いていて、とても優雅な時間が流れていました。

バルコニー

日中はバルコニーで読書をしたり、前日に購入したフルーツやパンを食べたり、バリ島で有名なルワックコーヒーを淹れて過ごしました。供用プールでは、親子が水遊びをしたり、ビールを片手にブランチをしたりと、ホテル滞在者それぞれがリラックスして過ごしていました。事前に予約したホテルのスパに向かうと、ここでも心地よい音が耳に届きます。風に揺れる木々の葉や、木製のテーブルにマッサージオイルの瓶が置かれる音。どんな音も温かく聞こえ、優しい音に包まれながら、心身が癒されていく感覚でした。

ゆったりとしたまま迎えたニュピの夜、日没頃にはレストランの営業が終了し、中庭やホテル中の照明が消えていきます。客室の照明はつけていても大丈夫ですが、あかりが外へ漏れないようカーテンを閉めなくてはいけません。

天気はあいにくの雨。晴れていれば、プラネタリウムのような満点の星空が見えると聞いていたので少し残念。しかし、バリ島の空港も閉鎖され、島中の灯りが消える静寂の夜は、今までに経験したことのないほど穏やかな時間でした。

ニュピを体験して

バリ島の人々はとても信仰深く、毎日祈りを捧げています。至る所にお供物や花、お香が焚かれ、東京で生活している私からすると、バリ島のウブドで過ごしたニュピは、まるで別世界に迷い込んだような体験でした。

街の喧騒が一夜にして消え、静寂が島中を包み、道路には普段絶え間なく行き交う車もバイクもなく、人々は自宅にこもり、家族や友人と過ごす神聖な時が流れます。そんな中、心は静かになり、時間がゆっくりと流れる感覚に包まれます。自然の美しさと、ニュピの神聖な空気が心を満たし、何よりも日常の喧騒から解放されることができました。

ニュピやオゴオゴは、毎年異なる日付で開催されます。普段味わうことのできない、神秘的な時間はとても貴重で穏やかなものでした。晴れた夜空にうかぶ満天の星を眺めに、またニュピの日にバリ島を訪れたいと思います。

おすすめの記事