【顔面学講座㉑】 やっぱり顔ですわ! 人物を見る感性の磨き方と心得

前回に続いて 『ルッキズム』 に絡んだテーマとなります。外見だけで相手を判断したり、差別することは許されませんが、一方で、「見た目で人を判断する」のは人間の本能でもあります。

8月5日に大阪樟蔭女子大学で開催された、日本顔学会 関西支部 第4回研究会「人を見た目で判断すること:我々は 『ルッキズム』 をどのように捉えるべきか?」の懇親会で、大手生命保険会社で人材採用の責任者をやっていた楠木新さん(楠木ライフ&キャリア研究所代表)とお話する機会がありました。

楠木新さんは『定年後 50歳からの生き方、終わり方』(中公新書)が25万部超えのベストセラー作家でもある。

企業の採用責任者の視点

どんなに優秀な大学を出ていても、試験の点数が良かったとしても、あるいは特殊な資格を持っていたとしても「顔を見ないと採れない」とおっしゃっていました。

なぜかと言うと、「企業側はこの会社の中で上司とか同僚と一緒に上手くやっていく人かという観点で見る」と。

「見た目と言っても(美人とかイケメンとか)表面的なカタチではなく、顔を中心に話し方も含めてその雰囲気から、信頼に足る人物であるか、自社の風土に合う人物かを判断します。 私は、『顔』はその人の生きてきた道筋が垣間見える時があります。もちろん推測レベルですが」と。

顔以上にその人の“人となり”を短時間で判断する手段はない。
といった会話をしていたところ、「やっぱり顔ですわ!」の名言が飛び出しました。

就活が成績競争ではなく、企業との相性であるという視点で解説した楠木さんの著書。

『就活の勘違い 採用責任者の本音を明かす』 (朝日新書)

顔で判断するのは人間ならではの処世術

やっぱり、その人がどういう人かを判断するには、顔なんですわ!

これはもう、人間が長年、社会生活を営んできた中で身についた「処世術」と言っていいでしょう。

人間のDNAに組み込まれている本能だから、やっぱり、最終的に顔を見ないことには不安になるのだと思います。人間は。

リクルート時代に企業の人材採用のお手伝いをしてきた私は、楠木さんがおっしゃることがよくわかりました。その会社のカラーに合う顔っていうのがあるんですわ。

顔を見なくなった現代人

ところが、20世紀に入って電話が普及し、21世紀以降はメールなど顔を見ないコミュニケーションがどんどん普及してきました。

お年寄りもパソコン、スマホに四苦八苦の時代。ZoomやGoogle Meetなどオンラインコミュニケーションツールでは「パソコンを見ている」のであって「顔を見た」とは言えない。

また、コロナによって日本では3年間以上も「マスク生活」が続き、顔を半分隠すのが当たり前の世の中になってしまっていました。

今でも小中学生の4割弱が「学校でずっとマスクを着用している」、そして理由の1位は「素顔を見せたくないから」でした。

※ニフティ株式会社が子ども向けサイト『ニフティキッズ』にて、同サイトを訪問した小中学生を対象として2023年8月〜9月の期間にインターネットで調査。

「素顔を見せたくない」若者を生んでしまったのには、我々大人にも責任がある。

そんな顔を見る経験が少ない若者が、顔から相手を判断することは極めて危険です。

喜怒哀楽の表情すら読めなくなっているわけですから。

また、年配の人でも先入観が強すぎて、見誤るケースもあります。

そこで、「人物を見る感性の磨き方」と「人物を見る時の心得」をご紹介します。

人物を見る感性の磨き方

①まず、人間に興味を持つことが大切

相対的に見て20歳の人より40歳、40歳より60歳の人のほうが「人を見抜く」能力が高いものです。人生経験が豊富な人ほど、いろんなタイプの人間を見てきて、いろんな場面に遭遇しているので、その都度、無意識のうちに「人を見抜く」行為をしていて、そのデータが脳に蓄積されているからです。

時には、見誤った経験(失敗)もし、それもデータの蓄積となり、次第に「人を見る感性」が磨かれていきます。

普段の仕事では接する機会のない分野の人(職業、年齢、男女)と意識して接するようにすることが大切です。

営業職、販売職、接客業の人は、人を見る経験が多いので、相対的に人を見る感性が磨かれています。

②生身の人間のパフォーマンスを見る

スポーツでも、音楽でも、演劇でも、テレビやネットではなく、会場まで足を運んで生のライブを見ることをおすすめします。生の人間が演じるものを見ることで人間の脳は活性化され、人の感情やその背景にあるものまで感覚的に掴めてくるようになります。

コロナによってオンラインが一気に普及しましたが、やっぱり音楽は生ですわ!

もちろん、一流の人が演じるものを見るに越したことはありませんが、それを映像で見るよりも、たとえ無名の人で合ってもショッピングモールの無料ライブを生で見たほうがいいです。

③書道、花道、茶道、武道、音楽、芸術の実践

芸術鑑賞、音楽鑑賞、スポーツ観戦だけでなく、自ら歌を歌う、楽器を弾く、絵を書く、体を動かす(1人ではなく誰かと一緒に)など、「見る側」ではなく「やる側」になるといいでしょう。

五感をたくさん使うことで感性が磨かれる。

武道といっても激しいものではなく、合気道もありますし、格闘技のジムでも最近は女性や年配者向けに優しく指導するところが増えています。

武道は相手の心の動きを読む訓練に最適。

人物を見る時の心得

①顔は見るものではなく、感じるもの

“人を見るプロ”ともいえる、芸能事務所の社長や銀座のママも「顔に内面が表れる」と言うのですが、具体的に顔のどこに何が表れるのかをなかなか言語化できません。ただ、真面目に長く生きてきた人は「こういう顔つきの人は誠実な人」「こういう表情の人は信用できない」と感覚的に知っています。

②決めつけない

過去の自分の経験から「こういう顔の人はこう」と決めつけてコミュニケーションするのは失敗の元です。いくら極端な顔=極端な性格をした人でも、必ず逆の面があるのが人間です。どんなに似た顔の人でも1人1人微妙に違うように、人の性格は1人1人微妙に違います。血液型で性格を決めつけてしまうような、顔の1つのパーツで決めつけてしまう行為はやめましょう。

③コンディションを整えて心を無にして見る

あなた自身の体調が悪いと、せっかく磨いた感性も鈍ってしまいます。コンディションを整えて心身ともに健康でなければなりません。心がニュートラルで感情に左右されないことが大切です。そして「顔は心の目で見る」。無の境地で見てこそ、心眼でその人の本質を見抜くことができます。

おすすめの記事