「KAGAYA 星空の世界 天空の贈り物」展を見て、太古から変わらない星空の魅力を再確認しました。
KAGAYA(カガヤ)の写真作品は、詩情あふれるCGのようでもあり、細密絵画にも、童話の世界にも、映画のポスターにも見えます。星空の壮大な感動を引き出すのは、KAGAYAの想い、知識、技術がつくりだすものです。
この展覧会は2024年7月1日(月)まで、そごう美術館(横浜店 6階)で開催されています。
日本の季節と星空が出会う「四季の星空」
この展覧会では、星空写真家・KAGAYAの代表的な写真作品、新作32点含む約100点を「四季の星空」「月のある空」「オーロラ」「天の川を追う星の旅」「天空を映す」「一瞬の宇宙」の6つのカテゴリーに分けて展示しています。なかでも圧巻なのは星空の動きを感じることができる幅16mの新作映像「天空の贈り物」です。
最初の章「四季の星座」では、日本の風景と星空との出会いを取り上げています。
一面のヒマワリの上には、天の川、いて座、わし座があり、わし座の「アルタイル」はアラビア語で「飛翔するわし」を意味し、夏の大三角形をつくっています。
星空はいつ、どこで、どのように見えるかがわかるので、KAYAGAは星空とどこの風景を撮影するのかを調べて撮影にでかけます。ですから写真のキャプションには年月日だけではなく、時分までが記されています。
星好きの少年KAGAYAは写真家に
KAGAYAは1968年、埼玉県生まれの星空写真家、プラネタリウム映像クリエイターです。小学生の頃から星に興味を抱き、中学になると撮影した写真を自宅の風呂場で現像しました。高校生になると山に撮影に出かけ、大人になってから対象を日本、世界に広げて星の写真を撮るようになりました。
2010年、KAGAYAはデジタル一眼レフカメラの性能が飛躍的に上がったことをきっかけに、星空と風景を短時間(数秒から30秒)で撮影し、本格的に星空写真家として活動を始めました。
「ただ一面の雪と星空が広がる世界。その時にいただきに輝いたのは、全天で最も明るいシリウスでした」とキャプションにKAGAYAのコメントが添えられています。この写真はクリスマスツリーと呼ばれる木の頂にシリウスが来る日を待って撮影したものです。
キャプションの上の写真には、シリウスとプロキシオン、ベテルギウスからなる「冬の大三角形」、ふたご座、かに座、うみへび座が図示されています。
月を見つける小さな幸せ「月のある風景」
日ごとに見える時間も形も変わる月、月を見つけて感じる小さな幸せを、KAGAYAは「天空の贈り物」と呼んでいます。
雪明かりの平原にぽつんと立っているのは、人でしょうか。耳があります。ネコでしょうか。よく見ると大きな尻尾があり、キツネだとわかりました。天空への散歩を誘っているようです。
月を撮っていたとき、飛行機が横切り、連写したなかの1点。偶然を捉えた素敵な作品です。
中央の「満月」では、暗い部分は低く平らな「海」と呼ばれる地形、明るいのはクレーターがたくさんある「高地」です。写真からは二つの地形がはっきりとわかります。
撮影の方法や背景などを紹介するパネルがところどころにあり、シャッター速度や絞り、レンズの使い方、星空と風景の関係なども合わせて知ることができます。
世界中の星空を求めて撮影に向かう
オーロラは星と異なり、いつどこに出るのか予想がつかないもので、気温がマイナス20度を下回ることもあり、撮影にはカメラの保温も必要になります。オーロラは11年周期で強くなったり、弱くなったりします。
今年2024年はオーロラがよく見える年です。「オーロラ」の章では、アイスランド、ノルウェーで撮影した作品を中心に展示しています。ふたりが見ているのは「北海道のオーロラ」(北海道 2023年12月1日20時29分)、磁気嵐の予報を見て急遽、現地で撮影した作品です。
天の川が見やすい時期は4~11月、春は深夜から未明の東の空、夏は宵空高く、秋には宵の西の空が見やすい方向です。小さな星々が集まって見える「天の川」が大地に降り注ぐような光景は圧巻です。
なお、時間を表す「UT」は、Universal Timeの略、世界で標準時として使っている時間のこと、日本時間から9時間を引いた時間でもあります。
パネルには、銀河の姿や恒星、惑星、衛星などが紹介され、天文の知識も得ることができます。
「天空を映す」では、星空が水面に映り込んでいる写真を左右の壁に展示しています。左端は、ウユニ塩湖に星空が映り込み、上下を天空で包まれています。立っている人物はKAGAYA自身です。
星の配置はたった一度「一瞬の宇宙」
最後の章「一瞬の宇宙」には、ソニーの超小型人工衛星「EYE」に搭載されたカメラを使って、KAGAYAが宇宙から撮影した地球の写真です。私たちが暮らしている地球の美しさは100点近い星空の写真を見た鑑賞者の心に響きます。
すべての天空は軌道を描いて動き、二度と同じ配列になることはありません。見ている空は一瞬の宇宙の姿なのです。
全身が星空に包まれる映像「天空の贈り物」
新作の映像作品「天空の贈り物」は幅16mの大画面が床面までも広がり、星空は風景とともにさまざまな色や、形をつくりだし、見た後に大きなものに包まれているような感覚になります。manamik/清田愛未による壮大なオリジナル楽曲と歌声も星空の世界により深く引き込みます。
映像は床にも広がり、足元まで波がひたひたと寄せてくるようです。
内覧会で初公開された映像に、取材陣は遠くて広い世界に浸り、拍手があがるまでに一瞬の空白ができました。
この映像はタイムプラスという手法でつくられ、1枚に2~20秒をかけて撮影した写真を数百枚つなげて数秒の画像にし、実際のスピードの数十倍の速さで再生したものです。星空や雲の動き、空の色の変化を短時間でわかりやすく見ることができます。
二画面構成の映像作品「一瞬の宇宙」「天空賛歌」はそれぞれ5分、「天空の贈り物」と交互に上映されています。
「天空の贈り物」は頭上にある
自身の姿とカメラを捉えた作品にはこのようなコメントが添えられています。
「この世界は、知らなければ見過ごしてしまう贈り物であふれている、と私は思っています。その贈り物の宝庫の空はいつでも誰の上にも広がっていて、自由に見上げることができます。この展覧会が、そんな『天空の贈り物』を見つけるヒントになったらうれしいです。」
また、KAGAYAのX(旧Twitter)のフォロワーは90万人を超えています。筆者もフォロワーのひとりで、星空の映像をクリックすると一気に遠くの大きな空間に導かれるように感じます。
この展覧会を見た人は「天空の贈り物」を探すたくさんのヒントを見つけることができることでしょう。
星空の楽しみを広げるもの
ミュージアムショップでは、KAGAYAの4年ぶりの新刊『天空の庭』(河出書房新社 税込2800円)や画集、天文に関する本やグッズ、大画面の映像に流れた清田愛未の新作CD「天空の贈り物」(税込2500円)も並んでいます。
また、KAGAYAが撮影・制作したプラネタリウム作品『「水の惑星 -星の旅シリーズ-」LEDドーム用リマスター版』は、そごう美術館から歩いて約10分のコニカミノルタプラネタリアYOKOHAMAで上映されています。是非、展覧会といっしょにお楽しみください。
会期中、そごう横浜店の10階レストラン「ダイニングパーク横浜」では展覧会にコラボレーションしたメニューも用意されています。
展覧会情報
展覧会名 | KAGAYA 星空の世界 天空の贈り物 |
会期 | 2024年5月1日(水)〜7月1日(月) |
会場 | そごう美術館 神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店 6階 |
休館日 | 会期中無休 |
開館時間 | 10:00~20:00(入館は閉館の30分前まで) |
入館料 | 一般1400円 大学・高校生1200円 中学生以下無料 |
美術館ウェブサイト | https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/ |
KAGAYA | http://www.kagayastudio.com/ X(旧Twitter):@KAGAYA_11949 Instagram:@kagaya11949 |
コニカミノルタプラネタリアYOKOHAMA | https://planetarium.konicaminolta.jp/planetariayokohama/ |