昨今注目を集めている、アートと物語を全身で浴びる没入(イマーシブ)体験。角川武蔵野ミュージアムでは今、企画展『サルバドール・ダリ ― エンドレス・エニグマ 永遠の謎 ―』を開催中です。
ダリを“浴びる”と表現する、独特な展示空間へ。同館で開催する体感型デジタルアート劇場の第三弾にあたり、第一弾の「浮世絵劇場 from Paris」(2021年)、第二弾の「ファン・ゴッホ―僕には世界がこう見えるー」(2022年)に続くタイトルです。
イマーシブアートの先駆者として、世界各地の展覧会でクリエイティブディレクターを務めるGianfranco Iannuzzi(ジャンフランコ・イアヌッツィ)氏とタッグを組み、約1000㎡のグランドギャラリーに広がる映像と音楽で観客を包み込みます。
飲み込まれてゆけ、永遠の謎の世界へ。
“Endless Enigma”即ち“永遠の謎”。奇想天外で、常識を遥かに超えていくダリ作品の世界観はまさに謎めいています。その不思議な世界が待つ第1会場のデジタルアート劇場に入ってみましょう。
ここでは是非、映像に合わせて解説を聞ける「リアルタイム音声ガイド」のご準備を。会場に設置されたQRコードを読み込めば無料で利用できます。スマートフォンとイヤホンをお忘れなく!
360度巨大映像空間に没入する、イマーシブな鑑賞体験。
約35分間にわたるデジタルアート劇場の鑑賞方法は自由。クッションに寝転んで見ても、ひな壇に座って見ても、もちろん上映中に歩き回ってもいい。鑑賞者が主体となるアート体験を満喫できます。
ダリの世界が、ピンク・フロイドの前衛的な音楽と響き合う。
冒頭の「第1幕 プロローグ/Prologue」で映し出されるのは、混沌とした砂漠のような情景。続く「第2幕 カダケス/Cadaqués」は、ダリが「世界で最も美しい」と称した彼自身の故郷です。
客明かりが落ちるように暗くなり、開幕する「第3幕 劇場美術館/The Theatre-Museum」は、スペインにある「ダリ劇場美術館」をイメージした象徴的な章タイトル。ダリ自身が設計や内装を手がけ、美術作品を収蔵・展示する施設でありながら、劇場の舞台美術を思わせる独特な場所です。
光と影のコントラストの強さ、まさに劇場空間を思わせる演出に魅了されます。
これらのイマーシブ・アートと響き合うのは、イギリスを代表するプログレッシブ・ロックバンドであるピンク・フロイドの楽曲。新しいアートを生み出したダリ、新しいサウンドを生み出したピンク・フロイド、前衛的な芸術家たちのコラボレーションは今までにない斬新さで迫ります。
続いての「第4幕 偏執狂的・批判的方法/Paranoiac-Critical Method」「第5幕 召喚/Evocations」は、ここまでの作品が序章に過ぎなかったと感じさせるほど。サルバドール・ダリの真骨頂たる、シュルレアリスムの世界が出現します。「偏執狂的・批判的方法」とは、ダリの独創的な制作手法を指す言葉です。
まさに“イマーシブ映え”するダリの作品、その大胆な絵図や彩色に止まらない、驚くべき画力も細部まで観察できます
ジュエリー、香水、家具。絵画だけには収まらないダリの才能
場面は一転、楽曲「If」の静かな音色とともに「第6幕 ジュエリーとメイウェスト/Jewelery and Mae West」へ移ります。絵画だけではなく、宝飾品のデザインやインテリアなども手がけたダリ。底知れない才能と美を堪能できます。その次に展開する「第7幕 映画と写真/Cinema and photography」は、まるで映画を見ているような鑑賞体験が印象的です。
ダリ劇場のパフォーマンスは後半へ。「One of these Days」の低音が刻むイントロで幕を開ける「第8幕 シュルレアリスム初期/The first Surrealism」「第9幕 ダブル・イメージ/Double images」では、再びダリのシュルレアリスム絵画が顕現します。
原子力への関心、そして晩年の大作へ。
突如、暗転して舞台は暗闇の中へ。そこから徐々に明転して浮かび上がる青色の世界は、「Hey You」の旋律も相まって何処かシリアスなムードが漂います。
「第10幕 原子核神秘主義/Nuclear Mysticism」は、第二次世界大戦の原子爆弾に影響を受けたダリが、原子に関心を持ち始めたことを表す一幕です。代表作《記憶の固執》のリメイク版《記憶の固執の崩壊》を制作するほど、価値観が変わる出来事だったのかもしれない、と思い馳せます。
そんな芸術家・ダリが心酔したのは妻のガラ。「第11幕 キリストとガラ/Christ and Gala」「第12幕 新しい古典/The Neoclassic」で現れるのは宗教的モチーフを描いた大作であるものの、彼にとって神のように絶対的な存在はガラだったのでしょう。
最後に全てが原子のようにバラバラのイメージとなり、消失するラストシーンまで目が離せません。
「言葉の回廊」を歩いて、サルバドール・ダリを知る
劇場を出たら、ダリの自伝から抜粋した言葉がひしめき合う「言葉の回廊」へ。紗幕に書かれたセンセーショナルな言葉の数々を浴び、ページを捲るように前へと進みます。
ダリを学ぶ「永遠の謎 ダリ!ダリ?」
回廊の先にある第2会場では「永遠の謎 ダリ!ダリ?」と題し、ダリを学ぶ展示空間を作っています。年表や作品解説のほか、「ダリの採点表」なるものも。極端な評価からはダリの好みがよく分かります。
第2会場を出ると入り口のホワイエに戻り、再び第1会場に足を運べます。まずは体感し、もっと知りたくなり、また体感したくなる。思うままに回遊できる会場構成も魅力的です。
ホワイエにあるフォトスポットは、チケットがなくても無料で入れます。ダリの髭を模した小道具や、「中に入れる卵」では記念撮影を。
また、写真に指定のハッシュタグをつけてSNSに投稿すると、限定のオリジナルポストカードがもらえます。
※ポストカードは全部で3種類。月ごとに違ったデザインがもらえます。
※開催日:第1弾 1月1日(月)から/第2弾 2月1日(木)から/第3弾 3月1日(金)から
※先着順。各月無くなり次第終了。
角川武蔵野ミュージアムは一日遊べる!他のエリアも歩いてみよう
図書館・美術館・博物館の融合がコンセプトの角川武蔵野ミュージアムでは、好きなエリアを散策しながら一日中遊べます。4階の図書コーナー「エディットタウン」内では、展覧会のサテライト会場としてダリの関連書籍を紹介しています。
※エリアごとに入場チケットが異なります。詳しい情報はチケットページでご確認ください。
2階「ロックミュージアムショップ」では体感型ダリ展図録《別冊武蔵野樹林》をはじめ、関連グッズを多数ご用意しています。
同時開催「髙山辰雄―15㎝×15㎝の宇宙―」にもご注目
ダリ展と同時期に、記念すべきコレクション展の第一弾として「角川武蔵野ミュージアムコレクション展 髙山辰雄―15㎝×15㎝の宇宙―」を開催中です。これまで展示機会のなかった角川武蔵野ミュージアムのコレクションとして、日本画壇の最高峰として知られる髙山辰雄が13年間描いた『文藝春秋』の表紙絵156枚を展示しています。
髙山辰雄の日本画は、柔らかなタッチと温かみのある色使いが魅力。時代順ではなく、季節やイメージを表す語彙で分類したキュレーションに、文学的な情緒が香ります。
中央にある空間は、髙山辰雄が好んだ喫茶店をイメージしたもの。椅子に座って読書をすると、壁に掛かった絵画の人物像と重なるのが粋です。
サルバドール・ダリの永遠の謎は、未だ謎めく。
スペインに生まれ、20世紀を代表する芸術家となったサルバドール・ダリ。シュルレアリスムの旗手とも言うべきダリの作品は、一目見ただけでは理解し難いことも。けれども、作品を体感すれば、きっと新たな魅力に気づけるはずです。
イマーシブ・シアターを備えた角川武蔵野ミュージアムは、埼玉県の東所沢駅から徒歩10分。美術に読書、食事やお買い物も楽しめる、ところざわサクラタウンの中です。ダリ展とあわせて、芸術的な感性を刺激される一日を過ごしに行ってみませんか?
開催詳細
展覧会名 | サルバドール・ダリ ― エンドレス・エニグマ 永遠の謎 ― Salvador Dali - Endless Enigma |
会期 | 2023年12月20日(水)~2024年5月31日(金) |
会場 | 角川武蔵野ミュージアム |
住所 | 〒359-0023 埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 |
アクセス | JR武蔵野線「東所沢」駅から徒歩約10分 |
時間 | 日~木 10:00~18:00/金・土 10:00~21:00 ※最終入館は閉館の30分前 |
休館日 | 第1・3・5火曜日 |
入場料 | オンライン購入(https://tix.kadcul.com/)、 当日窓口購入一般(大学生以上): 2,500円/中高生:2,000円/小学生:1,300円/未就学児:無料 |
公式ホームページ | https://kadcul.com/ |
*休館日、開館時間は変更となる場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
*年末年始は休まず営業いたします。また、営業時間が通常と異なる日があります。詳細は公式サイトでご確認ください。
*展示内容が変更、または中止になる場合がございます。予めご了承ください。
Creative Direction: Gianfranco Iannuzzi
Created by Gianfranco Iannuzzi
Renato Gatto Massimiliano Siccardi
KCM Editing: Rino Tagliafierro
Production: Culturespaces Digital ®
© 角川武蔵野ミュージアム