かわいい日本美術が集結!『国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術』が福岡市美術館で開催

京都・栂尾(とがのお)に位置する高山寺所蔵の国宝『鳥獣戯画』。ウサギやカエルなどの動物たちが擬人化され、ワイワイと騒いでいる愛らしさから、好きな日本美術のひとつに挙げる方も多いのではないでしょうか。

そんな幅広い世代の人に愛される『鳥獣戯画』をはじめとする、動物をモチーフとした日本美術を集めた展示『国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術』が、9月3日より福岡市美術館にて開催されています。

日本美術の愛らしさを存分に味わえる本展示について、作品の見どころをレポートします!

鳥獣戯画とかわいい日本美術が一度に楽しめる!

展示室入り口

本展示では『鳥獣戯画』の魅力のひとつである「動物モチーフ」と「表現の簡素さとユーモア」という2つの大きなテーマに沿って、平安時代から江戸時代までの日本美術が展示されています。

展示室内はメインとなる「愛らしき鳥獣戯画」のほかに、「1.祈りにはぐくまれしいのち」「2.いのちへのまなざし」「3.引き算の美」「4.心を伝える」の4つの章から構成されており、動物と日本美術との関わりや、描かれた動物の愛らしさを感じさせる展示となっています。

1章「祈りにはぐくまれしいのち」

入ってすぐ展示されているのは、仏教美術や動物彫刻です。日本において動物は信仰と深く結びついており、力の象徴や、神の意思を伝える使者であるとも考えられていました。

重要文化財『神鹿』鎌倉時代 京都・高山寺蔵

絵や彫刻などで表現された動物はとてもリアルで、今にも動き出しそう!特に、高野山を再興した明恵上人も愛したと言われている『子犬』は、背中の丸みやつぶらな瞳が本物のよう。

重要文化財『子犬』鎌倉時代 京都・高山寺蔵
重要文化財『子犬』鎌倉時代 京都・高山寺蔵

今にも「ワンワン」というかわいらしい鳴き声が聞こえてきそうです。

2章「いのちへのまなざし」

江戸時代に入ると、祈りの気持ちだけでなく、動物に対する愛情が美術に直結し始めます。円山応挙らの絵師は数多くの動物画を描き、人気を博しました。

描かれているのは、もふもふとして愛くるしい子犬から、唸り声が聞こえてきそうな勇ましい獅子まで様々。

『狗子図(部分)』長沢蘆雪 江戸時代 摘水軒記念文化振興財団蔵(府中市美術館寄託)
『唐獅子図屏風』長沢蘆雪 江戸時代 佐賀県立博物館蔵

人物と動物が共に描かれている作品もあり、当時の人々の動物に対する愛情が伺えます。

「愛らしき鳥獣戯画」

展示中盤になると、いよいよメインとなる『鳥獣戯画』の登場です!

『鳥獣戯画』は甲・乙・丙・丁の四巻から構成されており、甲巻は擬人化された動物たちが遊びや行事を繰り広げる様子。乙巻は擬人化されていない動物の暮らしぶり。

丙巻は人物と擬人化された動物が競技を繰り広げる様子。丁巻は法会や流鏑馬などに興じる人々の営みがそれぞれ描かれています。

『鳥獣戯画』の上部パネルには、場面別の絵の解説が展示されている

本展示では場面替えのため、会期の前半では「甲・丁巻」、後半では「乙・丙巻」が展示されます。筆者が展示を訪れた際は前期期間中だったため、ここでは「甲・丁巻」の様子をお届けしますね。

甲巻は『鳥獣戯画』の中で最も有名な巻であり、ウサギやカエル、キツネなどの動物が駆け回ったり、遊んだりする様子が描かれています。

国宝『鳥獣人物戯画 甲巻(部分)』平安時代 京都・高山寺蔵

動物たちはどれも大変楽しそう。表情などの細かな部分まで丁寧に描かれているため、思わずじっくりと見入ってしまいました。

国宝『鳥獣人物戯画 甲巻(部分)』平安時代 京都・高山寺蔵

一方丁巻は、動物ではなく人々の営みが描かれたもの。人々が競争等に励む様子を、限られた線で勢いよく描いています。

 国宝『鳥獣人物戯画 丁巻(部分)』鎌倉時代 京都・高山寺蔵
国宝『鳥獣人物戯画 丁巻(部分)』鎌倉時代 京都・高山寺蔵

こちらも動物たちに負けないくらいにぎやかで、眺めているとワァワァという声が聞こえてくるようです。

※「甲・丁巻」は9月3日(土)〜9月25日(日)まで、「乙・丙巻」は9月27日(火)〜10月16日(日)までの展示。

3章「引き算の美」

3章では『鳥獣戯画』のように、紙に墨線で描かれたシンプルな絵である「白描画」をはじめとした、余計な要素を削ぎ落とした「引き算の美」を感じさせる作品が展示されています。こちらは尾形光琳を意識して描いた図をまとめた『光琳画譜』。

『光琳画譜』中村芳中 江戸時代 九州大学附属図書館蔵

大胆にデフォルメされた千鳥の愛らしさはもちろん、シンプルな線を用いて対象を表現する、日本美術ならではの表現方法も見逃せません。

4章「心を伝える」

他にも、『鳥獣戯画』を参考にしたと思われる後世の作品も展示されています。特に少ない線でシンプルに形を捉える「略画」が注目され、仙厓義梵(せんがい ぎぼん)らは見る者の心に直接訴えかけるような、素朴な愛らしさを持つ作品を生みだしました。

仙厓義梵の『犬図』には、お腹を紐でくくられた一匹の犬が描かれており、うつむき気味の表情がなんとも言えぬかわいらしさを醸し出しています。「きやふん きやふん」という弱々しい鳴き声がこちらまで聞こえてきそう。

『犬図』仙厓義梵 江戸時代 福岡市美術館蔵

さらに猫が紙袋をかぶってしまった様子を見てはしゃぐ『猫に紙袋図』や、鳥のデフォルメイラストがずらりと並ぶ『鳥獣略画式』なども展示されており、そのかわいらしさに思わず頬がゆるんでしまいます。

『猫に紙袋図』仙厓義梵 江戸時代 福岡市美術館蔵
 『鳥獣略画式』鍬形蕙斎 江戸時代 福岡市博物館蔵

種類豊富で普段使いがしやすいグッズも見逃せない!

ミュージアムショップより広いグッズ売り場

ボリュームたっぷりの展示だけでなく、種類豊富なグッズも本展示における見逃せないポイントのひとつ。クリアファイルなどの定番グッズだけでなく、お菓子や時計などの日用品まで、『鳥獣戯画』や愛らしい日本美術をモチーフとしたグッズが豊富に取り揃えられています。

クリアファイルやマスキングテープ、ポストカードなどのお馴染みのグッズも

グッズは公式サイトでも確認できるので、気になる方はぜひ一度チェックしてみてくださいね。

国宝の『鳥獣戯画』とかわいい動物が描かれた日本美術を目一杯楽しめる『国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術』は、令和4年10月16日(日)まで福岡美術館にて開催されています。ぜひ会場へ足を運び、描かれた動物達を愛でてみてはいかがでしょうか。

【展覧会情報】
『国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術』
会期:令和4年9月3日(土)~10月16日(日)まで 
会場:福岡美術館
休館日:月曜日※ただし、月曜が祝日の場合は翌日
開館時間:9:30〜17:30(※金・土曜日は20時まで開館、入館は閉館の30分前まで)
一般:1,800円
高大生:1,200円
小中学生:800円
※土日祝日は事前予約制(日時指定券)を導入
※鳥獣戯画は展示期間によって場面替えあり 
「甲・丁巻」は[9月3日(土)~9月11日(日)/9月13日(火)~9月25日(日)「乙・丙巻」は[9月27日(火)~10月2日(日)/10月4日(火)~10月16日(日)]で場面替えを行います。

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