この秋、KITTE丸の内が巨大な切り絵に包まれる!柴田あゆみさん初のパブリックアートが登場!

これまで楽活で強力にプッシュしてきた切り絵アーティスト・柴田あゆみさんの待望の新作が、9月17日からKITTE丸の内に展示中。「切り絵による紅葉の森~大地のうた~」と名付けられた展示が、KITTEの巨大なアトリウム空間いっぱいに、秋の気配を乗せて広がっていました。

これまで数々の展示で柴田あゆみさんの作品を追いかけてきた楽活としては、これは見逃すわけにはいきません。早速鑑賞してきましたので、レポートしたいと思います!

切り絵の概念が変わる?!驚異的なスケール感に圧倒される切り絵のパブリックアート

一般的に切り絵といえば、色紙や卓上カレンダーくらいのサイズの紙が美しく精巧に切り取られ、一枚の美しい絵に向き合うような感覚で鑑賞するイメージがあるかもしれません。

しかし、柴田さんの切り絵は一味違います。繊細なハサミさばきはそのままに、とにかくデカい。数メートル級は当たり前。時には展示空間をすっぽりと埋め尽くすような圧倒的なスケール感で、私たちの五感に訴えかけてきます。

作家にとってキャリア初となるパブリックアート作品となった今回の作品は、間違いなく過去最大級といっていいでしょう。最大直径約6.8m、最長約14mの5つの大きな円筒形の切り絵と、床面からそびえ立つ高さ約3.5mの灯籠5基がKITTEの来場者を出迎えます。使われた紙の総面積は、テニスコート2.5面分。まさに柴田あゆみワールド全開の展示となりました。

では詳しく見てみましょう。

短冊状に天井から吊り下がる紙のキャンバスは、巨大な樹木の森のよう。上空には鳥たちが乱舞しています。タイトルに「大地のうた」と名付けられたように、KITTE丸の内の巨大なアトリウム空間に、まるで切り絵の大木が突如出現したようにも見えました。「大地から天に抜けるひかりの柱をイメージして制作しました」と柴田さん。

柴田さんによると、天井から吊り下がる5基の作品は、「古事記」に記された天地が開かれた時に世界(高天原)に現れたという、姿形のない五柱の神・別天津神(ことあまつかみ)をイメージしているそうです。木々や、石、自然現象など、自然の中に”かみ”が宿るという日本人の自然崇拝を基に、五柱の”おおかみ”を大木に見立て切り出しました。

偶然にも「紙」と「神」は声に出せば同じ音ですよね。いわれてみれば、時にヒラヒラと舞う巨大な切り絵には、そこはかとない聖性が宿っているようにも感じられました。

一方、フロアに設置された六角柱の切り絵の灯籠も見逃せません。浮かび上がった絵柄をよく見てみると、木の根の隙間には、食器やテントのようなシルエットも描きこまれ、人間の気配も感じられます。

柴田さんによると、「5つの灯籠は、大地に立つ私たちを表現しています。神から“わけみたま”を授かった私たちを、小さな木々に見立てて切り出しました」とのこと。なるほど、だからこちらの作品には人間の生活空間も描かれていたわけですね。

ちなみに、アトリウム内の巨大ビジョンや、エレベーター前のモニターでは、柴田さんのアトリエでの制作シーンなど、本作に込めた思いなどがまとめられた動画も上映。KITTEの公式HPにもアップされているので、お出かけ前に事前に見ておくとちょっとした予習になりますね。

様々な視点が楽しめる!目線を変えて鑑賞を

本作はとにかく巨大なので、彫刻作品のように様々な角度から鑑賞を楽しめます。ご神木を見上げるように真下に入ったり、アトリウム脇のエスカレーターでフロアを少しずつ上がりながら、真横から、真上からもチェックしてみましょう。いろいろな景色が見えてきます。

夕方17時以降になると、約30分毎に1日10回、RGBライトを用いた「紅葉ライティングショー」の上演がスタート。約3分間のプログラムでは、オリジナルサウンドが流れる中で切り絵が様々な色彩につつまれ、鳥たちが切り絵の中を乱舞します。作品の世界観に深く没入できる好演出でした。

最後に、柴田さんから楽活のために、作品に込めた思いをメッセージとして贈っていただきました。

アスファルトの下には、土があり、たくさんの種、微生物、いのちが眠っています。

今、大きな分岐点にいる私たち。
私たちは、未来に向けて何を選択するか。

手にした技術を破壊や殺戮に使うこともできれば、
再生と調和に使うこともできる。

全てはあつかう人の心。

巨大なシステムと社会を前に、”私なんかは何もできない”と諦めず、
一人、また一人と意識を変え、ちいさくともできる事をしてゆく。

愛と喜びを込めて育てた米野菜
愛と喜びを込めて握ったおにぎり
愛と喜びを持った父母のもと育った子供たち
愛と喜びを込めて作った作品
愛と喜びを持って創る自分の人生

そこにはあたたかい愛の魂、わけみたまが輝く。

未来の地球、東京は、
人、生き物、自然が調和した
美しい緑の星である、
と私は信じている。

作家初の大作パブリックアートをお見逃しなく!

「とにかく作品が巨大なので、アトリエ内では全体像を見ることができず、作品全体の構造やバランスをイメージしながら切り出しました」と語る柴田さんの自信作。初秋の香りが満喫できる、清らかで美しい作品です。

ぜひ、東京駅周辺のお出かけの際は、KITTE丸の内に足を伸ばしてみて下さい。展示は10月10日まで。

展示情報

展覧会名:切り絵による紅葉の森~大地のうた~
展示場所:KITTE丸の内 アトリウム(〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-7-2)
会期:2022年9月17日(土)~10月10日(月・祝)
公式HP:https://marunouchi.jp-kitte.jp/shop/akiiro_kitte2022

< 紅葉ライティングショー >
① 17:00~ ② 17:30~ ③ 18:00~
④ 18:30~ ⑤ 19:00~ ⑥ 19:30~
⑦ 20:00~ ⑧ 20:30~ ⑨ 21:00~
⑩ 21:30~

柴田あゆみさんのプロフィール

横浜出身、2007年にニューヨークに移り、国立アカデミーにて版画とマルチメディアを習得。2015年よりパリに移り、パリ市運営のアトリエ59リボリにて2年間の展示と制作活動を行う。パリ滞在中、ヨーロッパ最大のペーパーアーキテクト会社より後援を受け、大型作品の展示やフランス老舗ブランドrepetto本店にて特別展示、その他多数展示を行う。2018年より日本を拠点として活動中。同年、イタリアミラノマルペンサ空港での大型作品の展示や、ドイツ国際ペーパーアートトリエンナーレに入選。2020年には4ヶ月にわたる大型展示を富士川・切り絵の森美術館にて開催。同年より、継続して森山良子氏コンサートツアーの舞台美術を全て手切りにて制作監修。2023年には全国を巡り個展を開催予定。

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