【顔面学講座㉗】 で「ヒゲ」をテーマにした時に、“「顔学」的には、人間以外の他の哺乳類は顔に毛が生えているのに対し、人間は助け合っていくために顔面から眉毛以外の毛をなくし、表情を発信することでコミュニケーションを図っていった。”と書きました。
今回は「眉毛」をテーマに、科学的に見た眉毛の意味や最新のトレンドまでを紹介し、眉について考察します。
顔面から毛を無くしていった人間
眉は地球上の動物でヒトにしかない独特のものです。人類学的には、ヒトはサルから進化する過程でだんだん顔面から毛を無くしてきました。キツネザル、メガネザルなどの原猿類は犬や猫のように顔面に毛が生えています。真猿類になるとコミュニケーションに目や表情を使うようになり、ニホンザルやチンパンジーは顔に毛がありません。
そして、ヒトは表情を作ってコミュニケーションを図るために、眉毛、ひげのような剛毛以外はうぶ毛のみとなり、顔の表情が豊かになりました。
人間は直立歩行をし、顔面(額から目にかけて)に毛がないため、汗や雨水、ほこりなどから目を保護する役割として、(チンパンジーの眉尾根の上にあたる)眉の部分の毛は残りました。
眉は「感情表現」のためにある
このように眉は「感情表現」のための重要な機能を持っているのです。
そして、その感情が蓄積されて性格を作り、表情が蓄積されて眉の角度を作ります。
眉は子供から大人へ育っていく過程での環境や、ふだんの習慣、いつもよくしている表情によって大きく変わってきます。
面白いもので、1人の人間の顔の変化を追ってみると、基本的に歳を取るにつれて眉が下がってきます。現在87歳の加山雄三さんの若い頃の写真を検索してみてください。一目瞭然です。若い頃は眉尻が上がっていたのが今は穏やかに下がっています。
7月で69歳になる明石家さんまさんも若い頃は眉が上がっていたのが、今は眉尻が垂れています。毎日テレビに出ているような人なので、徐々に変化しているため気づきませんが、これも若い頃の写真と比較すると、その変化に驚くでしょう。
負の感情や気合いの入りすぎに注意
人生における喜怒哀楽、競争心、嫉妬心、警戒心、慈悲、快い、熱い、寒い、苦しい、辛いといった感情が性格と眉を作ります。
怒ってばかりいる「怒りの感情が多い人」は眉がつり上がります。満員電車に乗って不快に感じたり、混雑した道でスムーズに歩けない、渋滞で乗ってる車が進まず遅れそうだとイライラしたり、そういう些細な負の感情にも注意が必要です。
「気合だ〜!」と気合いを入れるのはいいですが、無駄に力が入りすぎると眉頭が寄り、眉尻が上がります。自分の目標に対して集中すると、他人に対する心配りを忘れがちになります。何ごとも緩急が大事です。いつも眉を寄せてばかりいると、視界も狭くなりますし、無駄な力が入っているので、よいパフォーマンスを発揮できません。
逆に困った顔ばかりしていると、眉頭から眉尻にかけてが直線的に下がった情けないハの字眉になります。イジケ顔の情けない顔で、負のオーラが出てしまいます。ネガティブ思考が顔に表れて疫病神のようになり、人が寄ってこなくなります。
心をおだやかにし、眉間が開いた表情を心がけていると、眉間が開いて眉頭と眉尻を結んだラインはほぼ水平になります。「眉を開く」という言葉は安心して心配ごとがなくなるという意味。顔と心は相互に関係しているので、先に意識して眉間を開くことで心配ごとがなくなります。
このように、顔と性格は相互に関係し合っていて、性格が顔を作ることもあれば、顔が性格を作ることもあるのです。
だからこそ、なるべく負の感情が芽生えないようにすることが大切です。また、負の感情が湧いてしまった時にも気づけるように、自分を俯瞰する心が必要です。
起きている間は気づけるのですが、寝ている間は気づけません。寝ている間は、自分が気づかないうちに恐怖心や怒りの感情から眉を寄せてしまっていることもあります。そうならないためには、瞑想をするなど心を落ち着けて、ポジティブな感情で眠ることが大切です。
メイクで顔が変わって性格も変わる
女性の場合は、メイクアップ(化粧)で眉を整えたり描いたりしているうちに「なりたい自分(性格)」になってきます。
眉のデザインを変化させ「意志の強そうな顔」「かしこそうな顔」「穏やかそうな顔」を作っていると、どういうことが起こるでしょうか?
その自分の顔を見ているうちに、その通りの性格になるのです。他人も、その顔からそういう性格の人だと思って接するので、その通りの性格になるのです。
極端に上がって下がる直線的で角度のあるカマキリの鎌のような眉をしていると、刺々しい人に見られるし、刺々しい性格に変わってしまいます。
最先端の眉毛美容
この法則を利用してなのか、最近、男の格闘家の間でアートメイク(眉タトゥー)が流行っています。
凛々しい眉を作る(強く見せる、強い性格になる)ためではありますが、メイクだと試合中は顔も擦れたり汗で消えてしまうので、1〜3年間は保つアートメイク(眉タトゥー)にしてしまえということなのでしょう。
日本の女性は「アイメイク命」で、アイラインやまつ毛も含めて目のメイクに時間をかける傾向にありますが、眉は英語でアイブロウと言うように目の額縁。眉は目とのセットで、ある意味、目以上に顔の印象を決めるものです。
その「眉」を専門にした新たな「眉毛美容」、「ハリウッドブロウリフト(HBL)」が最近人気です。日本人の眉⽑の⽣え癖に着目。眉毛専用のセッティング剤とスタイリング剤を開発し、特殊なオリジナルワックスの技術によって、眉毛の毛流れを矯正。ふわっと立体的な眉にするもので、次世代アイブロウ技術として注目されています。
「見た目で判断しないで」「ルッキズム反対」などと言いつつも、美しくなろう(かっこよくなろう)と思うのは人間の性(さが)」なのでしょう。人ぞれぞれ「美」の概念は違いますが、「美」の追求は人間の自然な欲求なのだと思います。