10月31日はハロウィン(Halloween)です。
アメリカでは子どもたちが魔女やお化けに仮装して近所の家を訪れてお菓子をもらうなどする風習で、近年の日本ではコスプレして大騒ぎするイベントみたいになっていますが、もともとは古代ケルト人が行っていた祭礼という説があります。
ハロウィンの仮装でドクロが定番なのはなぜ?
ケルトの暦では、10月31日は1年の終わりの日で、死者の魂が家族のもとへ戻ってくる日としても信じられていたそうです。死者の魂とともに悪霊もやってくると考えられ、悪霊に人間だと気づかれないよう仮面を着けるなどして身を守ったとのこと。
なるほど、それもあってハロウィンでは「死」をイメージする頭蓋骨(ドクロ、スカル)の仮面をつける仮装も多いのでしょう。
今回はこの「頭蓋骨」について考えてみたいと思います。
朝、顔を洗うところまでが顔?
その前に、皆さんはどこまでが顔でどこからが頭か考えたことがありますでしょうか?
日本顔学会2代目会長の原島博先生(東京大学名誉教授)は、「顔」の面白さを一般の人や子どもたちに伝えるために、講演中にこんな問いかけをしていました。
どこまでが「顔」なのでしょうか。
髪の生え際までが「顔」?
「おでこ」は「顔」? それとも「頭」?
朝、顔を洗うところまでが顔で、そこから上が頭?
髪が薄くなって額が後退すると顔は大きくなる?
いろんな考え方ができると思います。
頭髪の生えていない眉、目、鼻、口の部分を「顔面」としてこれを「顔」とすることもできますが、頭髪の上の「頭」の部分を「顔上」とし「顔面」と頭髪部分の「顔上」を含めて「顔」とすることもできます。
後頭部は「顔面」ではないので「顔」ではなく「頭」とするのが妥当ですが、「横顔」と言った時には後頭部も「横顔」に含まれます。
「どんな顔?」と聞かれた時は髪型も含めて説明するので、ヘアスタイルを含めて「顔」なので髪も顔になります。
頭蓋骨は23個の骨で出来ている
口から上側の頭蓋骨のほとんどを構成する部分を「頭蓋(とうがい)」と言い、15種22個の骨からなり、縫合によって連結されています。
そして、耳の下からアゴまである可動する部分が「下顎骨(かがくこつ)」で、頭蓋骨全体では23個の骨で構成されています。
ちなみに一般的に頭蓋骨は「ずがいこつ」と読みますが、解剖学では「とうがいこつ」と読むため、医学系の人は「とうがいこつ」と読む傾向があります。
また、人類学的に「顎(アゴ)」は下顎骨全体を指し、私が「アゴ」と言う場合も下唇からオトガイ(アゴ先)まではなく、正面から見て鼻から下、横から見て耳から下側全部を指し「晩年運を良くするには、人生の土台であるアゴを鍛えろ」と言っています。
ホモサピエンスは、700万年前の最古の人類と言われるサヘラントロプスから頭蓋骨の大きさが3倍になりました。これは人類が前頭葉(大脳の前方にある運動、言語、感情、思考、判断力、集中力、気分などをコントロールする器官)を発達させるために頭蓋骨が大きくなったと考えられています。
一般的に脳は生後6ヶ月で約2倍になり、2歳までに約4倍の大きさになり、頭蓋骨の成長は2〜3歳までにほぼ終了しますが、生まれたばかりの赤ちゃんでも頭がかなり大きいです。
そのため、出産時に生まれてくる赤ちゃんの頭蓋骨はまだ骨が完全にくっついておらず、骨が柔軟に重なり合いながら狭い産道を通って出てきます。
頭蓋骨から性別や年齢がわかる
まず、人間の骨なのか、猿やゴリラの骨なのか、頭蓋骨の形だけでわかります。
「法医人類学」では、頭蓋骨やその他の骨を検査することによって人種、年齢、性別、血液型、身長、体格、利き腕などがわかるそうです。
性別推定で一番有効なのは骨盤にある寛骨(腸骨+坐骨+恥骨)で、女性の寛骨は出産に備えて骨の大きさに比べて空洞が大きい特徴があります。
寛骨臼(大腿骨の骨頭が入る部分)では、男性の方が大きく、女性の方が小さい傾向がありますが、頭蓋骨でもある程度性別を推定することができます。
一般的に、男性の頭蓋骨は女性のものよりも大きくてガッシリしていて、女性の頭蓋骨は男性のものよりも小さく華奢でなめらかな形をしています。
また、横から見た時の角度が違っていて、女性の前頭骨がほぼ垂直なのに対し、男性では斜め後ろに後退しています。
他にも、「目の上の部分の眉弓は男性では大きく発達している」「下顎骨の頤(オトガイ)は男性では大きく発達している」など特徴があります。
年齢は、加齢とともにに頭蓋骨が縫合されるので縫合の度合いから推定。(歯のすり減り方でもある程度可能)
人種では日本人を含む東アジアの人(モンゴロイド)は頭の奥行が短い「短頭(後頭部が絶壁傾向)」が多く、白人や黒人などモンゴロイド以外の人の多くは、顔の横幅が狭く奥行きが長い「長頭」をしています。
顔や頭の特徴は頭蓋骨の形と関係があるので、「法医人類学」では、頭蓋骨の上に頭や顔部品(眉、目、鼻、口、耳)を乗せることで生前のおおまかな顔の形を復元できるそうです。
頭蓋骨は「顔」なのか?
さて、頭蓋骨は「顔」なのか?
顔じゃないですよね。顔の中にあるものだけど、目も鼻も口もないし。
ただ、生まれたばかりの赤ちゃんでも顔らしい配置のものに興味を示すように、目を表す丸が2つ、その下に丸や四角がある形を顔に見てしまう習性が人間にはあります。自動車のフロントが「顔」に見えるように。
頭蓋骨も目の空洞部分が「目」で顔っぽく見えます。
さらに「人間の顔」では鼻の部分が空洞になっていて、口を閉じていれば見えない歯が上下とも全部丸出しの状態をしているため死んだ後の「顔」に見えるのでしょう。
そして、「死」への恐怖心と漫画やアニメの影響から「頭蓋骨」は怖いというイメージに。
しかし、「頭蓋骨」のことを知れば知るほど、愛おしいと思ってきませんか?
「頭蓋骨」についてもっと知りたい方は、兵庫県尼崎市にある「シャレコーベ・ミュージアム」にぜひ!
今年、2024年の「ハロウィンフェスティバル」は11月3日(日曜日)に開催され、ハロウィン特別プログラムとして「頭蓋骨解剖学実習」や「ミニ講演会」「仮装コンテスト」と盛りだくさんの内容になっています。
「シャレコーベ・ミュージアム」基本情報
住所 | 兵庫県尼崎市浜田町5-49 |
開館日 | 日・祝 (臨時休業あり) |
営業時間 | 10:00〜17:00(入館は16:30まで) |
入館料金 | 中学生以上 1,000円 小学生 500円 幼児 無料 |
アクセス | JR「立花駅」から徒歩15分(またはタクシーで6分) 阪神電車「尼崎センタープール駅」から徒歩15分(またはタクシーで5分) |
ホームページ | http://skull-museum.jp/frame.html |
公式X | @skull_museum |