仏の顔ってどんな顔?豊臣秀吉とお花見もできる『開創1150年記念 醍醐寺 国宝展』

こんにちは。小学生のころ、母親に「仏の顔も三度までだよ!」と怒られたことがある、美術ライターの明菜です。

その頃の私は「2回まではいいのか〜」と、まったく反省していませんでした。

キャプション:重要文化財《大威徳明王像(上醍醐五大堂五大明王像のうち)》平安時代(10世紀) 通期展示

「ほとけ」といえば、同じことわざを思い浮かべる方も多いのでは。しかしですね……「仏の顔」ってどんな顔なのでしょうか?

知っているようで知らない「仏の顔」を、心ゆくまで堪能できる展覧会。それが『開創1150年記念 醍醐寺 国宝展』です。大阪中之島美術館にて、8月25日(日)まで開催されています。

展示風景

醍醐寺(だいごじ)は京都市伏見区にあるお寺で、なんと7万点以上の国宝を所蔵しています(※)。開創1150年を記念する本展では、国宝14件、重要文化財47件を含む約90件の名宝が、一挙に公開されています。

仏さまのお像や絵画などを通し、ミステリアスな密教の世界に触れてみませんか? 豊臣秀吉が主催した「醍醐の花見」を感じられる展示や、桜ミクさんとのスペシャルコラボレーションなど、他にも見どころが盛りだくさんです。

※2013年、69378点に及ぶ醍醐寺文書聖教が国宝に指定されました。

真言密教の拠点、醍醐寺

《理源大師坐像 吉野右京種久作》江戸時代 延宝2年(1674) 通期展示

醍醐寺は、平安時代前期の貞観16年(874)、理源大師聖宝(りげんだいししょうぼう)によって開創されたお寺です。醍醐山の頂上にある上醍醐と、山麓の下醍醐の2つの伽藍からなっています。

お寺といえば、仏さまに願い事をするのは今も昔も変わりません。醍醐寺は高名な学僧や験力の強い僧侶を輩出し、皇族や貴族の信仰を集めました。

展示風景

本展では、醍醐寺の僧侶たちが収集した仏像や仏画、密教法具などが展示されます。鎌倉時代を代表する仏師、快慶(かいけい)によるお像も見られます。

重要文化財《不動明王坐像 快慶作》鎌倉時代 建仁3年(1203) 通期展示

人々の煩悩を断ち切る不動明王は怒りに顔をゆがめるような表情をして、背後にはメラメラと燃え盛る炎が。しかし、恐ろしさだけでなく優美さや上品さも感じられ、快慶らしさが光っています。

国宝《薬師如来光背小七仏薬師像》平安時代(10世紀)通期展示

こちらの小さなお像は、薬師如来の光背から取り外して展示されている小薬師像です。6軀の分身をともなう姿で表される薬師如来ですが、小さいお像もお顔や手、布のシワなどが細かく表現されています。

展示風景

普段は坐高176cmの本尊の光背にあるため、間近で鑑賞できる機会はとても珍しいです。本展では6軀のうち4軀が展示されています。少し笑っているような柔和なお顔立ちを、ぜひ近くで見てみてくださいね。

豊臣秀吉とお花見しよう

展示風景

さて、醍醐寺といえば豊臣秀吉が主催した「醍醐の花見」を思い浮かべる方も多いのでは。応仁の乱の兵火によって荒廃した醍醐寺の復興を、強くサポートしたのが秀吉でした。

花見に際して約700本の桜が植えられ、1300人余りが参加した盛大な宴になったといわれています。

展示風景

本展では、醍醐寺の桜が描かれた絵画を、秀吉像と一緒に見ることができます。赤い縁台風の椅子に腰掛けて、時代を越えたお花見を楽しんでみてはいかがでしょうか?

麒麟・川島さんによる音声ガイド

本展の音声ガイドのナビゲーターを務めるのは、漫才コンビ・麒麟の川島明さんです。京都府生まれ、NSC大阪校出身の川島さんは、たしかに本展とゆかりが深いかも?

音声ガイドでは川島さんが「ええ声」で真面目な解説をしてくださるのですが、どことなく楽しそうな雰囲気が伝わってきました。ですが難しかった所もあったようで…!

動画内では川島さんが推し仏像について語ったり、タグ大喜利を試みたりもされています。

桜ミクとのスペシャルコラボ

展示風景

バーチャル・シンガー「初音ミク」が春をイメージした装いとなった「桜ミク」と、本展がスペシャルコラボレーション。本展の会場に、醍醐寺の枝垂れ桜と桜ミクさんがARで現れます。

AR体験の様子

ARでは、大阪中之島美術館の黒い建物をイメージした黒地に、醍醐寺を象徴する五七の桐の紋をあしらった着物を身につけた桜ミクさんが、「千本桜」の音楽に合わせて踊ります。

音楽を聴きながらのほうが臨場感があるので、イヤホンをご持参するのがおすすめです!

仏の顔は何度でも拝もう

展示風景

約90点の寺宝が展示される大ボリュームの本展は、密教の世界に触れるだけでなく、川島さんの「ええ声」によるガイドや桜ミクさんのAR体験など、現代の文化まで楽しめる内容となっています。

つまり、1150年のうちのあらゆる時間が共存しているんです。過去も現在も未来も仏さまが優しく包み込んでいるような、そんなイメージを持ちました。

仏さまのパワーが満ちた大阪中之島美術館で、時間を忘れて密教の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

展覧会情報

展覧会名開創1150年記念 醍醐寺 国宝展
会期会期:2024年6月15日(土)– 8月25日(日)
◎前期:6月15日(土) – 7月21日(日)  
◎後期:7月24日(水) – 8月25日(日)
*会期中、展示替えあり
会場大阪中之島美術館 4階展示室
休館日月曜日、7/23(火) *7/15(月・祝)、8/12(月・休)は開館
開場時間10:00 – 17:00(入場は16:30まで)
お問い合わせ06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
展覧会Webページhttps://nakka-art.jp/exhibition-post/daigoji-2024/
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