目黒駅から徒歩数分の場所にある、ホテル雅叙園東京内のクラシカルな木造建築で知られる「百段階段」。
「百段階段」では、毎年定期的に企画展が開催されていますが、ちょうど4月15日からスタートしたのが、あふれる建物にぴったりの展覧会「大正ロマン×百段階段」です。各展示室では、大正ロマンを代表する画家・竹久夢二作品をはじめ、人気イラストレーター・マツオヒロミ氏の大ヒット作『百貨店ワルツ』とのコラボレーション展示など、華やかな「大正ロマン」の世界をたっぷり楽しめました。
そこで、今回は「百段階段」の各部屋での展示概要をご紹介します。
百段階段とは
この歴史ロマンあふれる建物は、ホテル雅叙園東京の前身である目黒雅叙園3号館にあたり、1935(昭和10)年に建てられました。昭和10年は、大正ロマンから昭和モダンの華やかな時代を経て、世界大恐慌や第二次世界大戦の暗い足音も近づいてきていました。
"昭和の竜宮城"とも呼ばれた百段階段の特徴は、装飾の破格な豪華さ。2009(平成21)年3月、東京都の有形文化財に指定されました。
ホテルの専用エレベーターを降り、履物をぬいで入口に着くと、長い階段が目の前に開けます。
階段の段数は99段。
階段には厚さ約5cmのケヤキ板を使用。階段で結ばれた各部屋はそれぞれ趣向が異なり、各部屋の天井や欄間には、当時屈指の著名な画家達が創り上げた美の世界が描かれています。
最上階まで昇りつめるまでに、階段からつながる部屋は全部で7つあります。かつて宿泊客が食事を楽しみ、晴れやかな宴が行われた各部屋に、工夫をこらした作品が展示されていました。
それでは、各部屋を見ていきましょう。
①十畝の間
歌舞伎や舞台演劇、オペラ、ミュージカルなど幅広い舞台衣装の分野において登場人物たちを彩ってきた松竹衣裳の「大正ロマン」をコンセプトにした着物のコーディネートとモダンガールの装いを見ることができます。ハイカラでかわいい空間でした。
②漁樵の間
室内はすべて純金箔、純金泥、純金砂子で仕上げられた豪華な装飾のお部屋は、人気イラストレーター・マツオヒロミの代表作 『百貨店ワルツ』とのコラボレーション展示。
入り口のランプが可愛くて、抜群のインスタ映えスポットとなっています。単に買い物をする場所ではなく、文化や流行を創り出し、人々の憧れが詰まった空間としての百貨店を上品に再現していました。
豪華な室内装飾に彩られた空間にマツダヒロミさんの世界観が加わり、「漁樵の間」はさらにゴージャスで夢のような世界に。
③草丘の間
「草丘の間」では、大正ロマンの雰囲気に満ちた喫茶室が登場します。
創業当初、百段階段は晴れやかな宴を楽しむ宴会場として使用されていた場所で喫茶を楽しめるなんて贅沢なひとときです。日本のカフェの登場は明治時代まで遡るそう。
本展期間中、特別に室内に配置されたステンドグラスに囲まれていただくお茶とお菓子は格別です。
④静水の間・星光の間
「静水の間・星光の間」では、大正ロマンを代表する作家・竹久夢二の作品を展示。直筆原画を含む約50点が、「港屋絵草紙店」「美人画」「童画」「セノオ楽譜」の4つのカテゴリに分けて展示されています。
こちらは、竹久夢二が表紙絵や挿絵を手掛けた『婦人グラフ』関連の展示です。
『婦人グラフ』は、1924(大正13)年から1928(昭和3)年までの4年間に55冊出版された女性向け高級グラビア雑誌。
表紙は挿絵や木版画(のちにはオフセット印刷)を取り込むという手の込んだ仕様であった為、主に裕福な女性が購入層であったようです。
夢二はこの雑誌に表紙絵や挿絵、さらには文章(小説)も提供しており。彼の描くモダンなファッションの女性は当時の女性から絶大な人気を得ていたそう。
ともあれ、夢二人気にあやかって、『婦人グラフ』は当時飛ぶように売れたそうです。
⑤清方の間
こちらの部屋では、明治、大正、昭和のガラスの作品を見ることができます。
ミュージアムショップでは、かわいいグラスなどのお土産も購入できます!
⑥頂上の間
99段の階段を登りきった、一番上の部屋は文字通り「頂上の間」と呼ばれています。ここでは、旧目黒雅叙園の歴史を知ることができます。
大きな窓が印象的なお部屋は、レトロな家具などがあって、私にとって居心地の良い空間でした。
いかがでしたでしょうか?「百段階段」の各部屋を巡りながら、大正ロマンをたっぷり感じられる展示風景をご紹介してみました。
約100年前の東京にタイムスリップしたような気分に浸れる、特別な鑑賞体験が味わえます。
基本情報「大正ロマン×百段階段」
開催期間:2022年4月16日(土)~6月12日(日)
※5月25日(水)休館
開催時間:11:30~18:00(最終入館 17:30)
会 場:ホテル雅叙園東京
東京都指定有形文化財 「百段階段」
公式HP:https://www.hotelgajoen-tokyo.com/