イギリスの郊外に住みながら、平日はIT企業でフルタイム、週末はのんびりライターとコーチング活動をしているKumikoです。海外での暮らし、生き方、マインドについて毎月更新しています。
日本では、9月から運動会、文化祭、他行事など秋のイベントがはじまる一方、イギリスでは 9月から新学年がはじまり、学校には初々しい新入生達が通いはじめます。
そんなイギリスの新学期に合わせて、今回はイギリス教育の「7つの特徴」についてご紹介したいと思います。
その前に簡単にイギリスの教育基礎情報について説明します。
【イギリスの教育基礎情報】
イギリスの教育システムは、日本の小学校(6年)、中学校(3年)、高校(3年)とは若干異なります。
イギリスの義務教育は5歳から16歳(日本の年長から高校1年生)までとなり、「プライマリー・スクール(5〜11歳まで)」と「セカンダリー・スクール(12〜16歳まで)」の2つに分かれます。
5歳になる前は、義務ではありませんが、ほとんどの子どもたちが、ナーサリー(3歳)、リセプション(4歳)から教育をスタートします。
義務教育が終了し、将来進学を希望する17と18歳は、さらに「シックス・フォーム」という2年間の教育を受けます。
●5〜11歳 : プライマリー・スクール (義務教育)
●12〜16歳 : セカンダリー・スクール (義務教育)
●17、18歳 : シックス・フォーム
学校に通う期間は日本とそこまで大きな違いはありませんが、実際にイギリスの学校に4歳になる娘を通わせたことから、気づいた特徴がいくつかあります。
【イギリスの教育の7つの特徴】
- 小さいうちからプレゼン能力と自己肯定感、自分で考える力を高める
- 本をとにかくたくさん読ませる
- 教科書はなく、ノート類も家に持ち帰らない
- インタラクティブ、先生が生徒と同じ目線でレッスン
- 子どもの学力に合った授業
- 寄宿学校であるボーディングスクールではマナーも学べる
- 歴史の授業は暗記だけではなく、意見を発表する時間
1.プレゼン能力と自己肯定感
イギリスでは、プレゼンテーションのスキルを磨くため、朝の会に「Show and Tell」という時間が設けられ、4歳、5歳の幼少期のうちから、クラスで順番に毎日一人が発表する時間が与えられます。
みんなの前でお気に入りの物を見せて(Show)、5分間ほどお話(Tell)をするというゲーム感覚のプレゼンテーションです。
みんなの前で発表することによって自信を生み、ストーリーを自分の力で伝える創造性を養うことができます。
「みんな違って、みんなOK」という、何を話しても否定されない場づくりを先生がすることで、自己肯定感が育まれています。
2.本を毎日読ませる
4歳から8歳ぐらいまでで、特に学校が力を入れていたのは、本をたくさん読ませることでした。
これは、日本のブリティッシュ系の学校でも、イギリスのローカルの学校でも同じです。
定期的に先生の前で本を音読し、その結果によってレベルが上がるごとに、本に付いているシールの色が変わり、モチベーションアップにも繋がっています。
3.教科書がない、ノートがない
とても衝撃的だったのは、教科書というもの自体が存在しないことです。
イギリスの学校では日本のように国から教科書を無償でもらうことはありません。
ノートは学校から支給されるのですが、基本的に家に持ち帰ることはなく、学校に置いたまま。
そしてテストもほとんどないので、子どもが何を学んでいるか、クラスの中でどれぐらいの学力レベルなのかは、三者面談をするまで分からない状態です。
教科書がないので、本屋さんでその学年で学ぶワークブックや参考書などを購入して学ばせていますが、予習・復習ができないため不便を感じており、教科書が国から無償で支給される日本って素晴らしい国だと感じました。
4.インタラクティブなレッスン
子どもが4歳の時にブリティッシュ系のスクールに学校見学をして驚いたのは、なんと20人ぐらいの子どもたちがカーペットの上に胡坐をかいて、先生の話を真剣に聞いていることでした。
日本で過ごした私の子どもだった頃は、先生が黒板の前に立ち、生徒は椅子に座って、先生をじっと見て話を聞き、言われたことには従うという教育を受けてきました。みなさんが子どもの時はいかがでしたか?
言うことを聞く子どもが良い子であり、先生に対しては意見を言ってはいけない、そんな雰囲気があり、生徒との間には心理的な距離がありました。
一方、イギリスでは、カーペットとはいえ地べたに胡座をかき、一見不真面目そうに見えてしまいますが、先生は生徒たちと目線を合わせながら、実にさまざまな質問を投げかけ、インタラクティブなコミュニケーションを図ります。
先生が質問をすると、子供たちは目をキラキラさせてみんな競い合って手を挙げる姿、そしてどんな回答に対しても先生は必ず褒める。
そんなレッスンに思わず顔がほころび、「この学校に通わせよう!」と決めた学校見学の日を思い出します。
5.子供の学力に合った授業
算数など子どもによって学力に大きな差が生まれる授業については、子どもの学力別にクラス内でグループ分けをして、個々に合った内容でレッスンが進められます。
通常、プライマリースクールには担任の先生以外にアシスタントティーチャーがクラスに常駐しており、先生と子ども達をサポートします。
授業についていけない子どもを対象にブースターグループと呼ばれる補習クラスが用意され、担任の先生から補習学習が必要と思われる子ども達は、アシスタントティーチャーが学習のサポートを行っていきます。
6.ボーディングスクールではマナーも学べる
ボーディングスクールとはイギリスの私立の寄宿学校になります。
生徒たちは先生に対して、「サー」や「マダム」を挨拶の語尾に付けるなどの敬語を使用し、テーブルマナーなどが身に付きます。
公立の学校よりもクラスの人数が少なく、生徒ひとり、ひとりを先生がサポートしやすい体制を整えています。
日本でも最近はラグビースクール(https://rugbyschooljapan.ed.jp/)やハロウスクール(https://www.harrowappi.jp/ja/)など、イギリス系のボーディングスクールが進出し始めているんですよ。
7.歴史や音楽も創造的で考える時間
歴史の授業と聞くと、「良い国(1192)作ろう鎌倉幕府!」と、暗記教科のイメージがありますが、イギリスは歴史の授業もインタラクティブです。
例えば、「ヘンリー8世(イギリスの歴史上の有名な人物)が、もし〇〇だったら、イギリスはどんな世の中になっていたと思う?」という先生からの質問に、生徒はそれぞれ想像力を働かせいろいろな考えを披露します。
このように歴史の授業は、物事を違う角度から捉えて、考えさせ、意見を答えさせる時間でもあります。
音楽に関しても、教科書がないので、レッスンは先生の作った内容(作曲のやり方など)に合わせて進められるため、個人のクリエイティブ性が求められる場になっています。
日本にいながらグローバル教育を受けられるオンラインスクールが開校!
日本には、プレゼンスキルや自己肯定感を高めることに特化したスクールはあまり存在していません。
日々の勉強に追われ、「本当は自分は何が得意で、何が好きなのか」と自問自答する機会は少ないのではないでしょうか。
教育において大切なベースである
●みんなの前で発言することの楽しさ
●認められることの楽しさ
●周りの人と協力しながら、主体的に行動することの楽しさ
●子供のレベルに合わせたレッスン
そんなイギリス的な教育を取り入れたオンラインスクールが10月に日本に開校しました。
こちらのTomoniスクールでは、小中学生を対象に日本にいながら英語を共通語として、プレゼンテーション力を学べるレッスンなど、さまざまな角度からアプローチした授業内容により、人生を主体的に生きるアントレプレナーシップを身に付けることができます。
プレゼンスキルは子供の時から場数を踏んで少しづつ慣れておくことで、将来さまざまな場面で活用できるときがあるかと思います。ご興味ある方はぜひWebサイトをご覧になってみてくださいね。
Tomoni: https://service.plusbeyond.co.jp/
最後に
これらの7つの特徴から、イギリスの教育は先生も生徒もお互い主体性が求められる授業だと感じました。
「自分の意見をいう力」、「別の角度から物事を見る力」、「個人の考えを尊重することで自己肯定感を高める力」を幼少期から行っている現場を実際に見てきて、教育やそのシステム、そして日本との違いなど、いろいろと考えさせられています。
教育とは、将来良い大学に行き、大手企業に就職するために、知識を詰め込んでテストで良い成績を取ることなのでしょうか?これには賛否両論があるかと思います。
確かに一生懸命勉強することで競争心を育てたり、忍耐力を身に付けることはできるかもしれません。
しかし、有名大学に通うことだけをゴールに勉強するとなると、せっかく生まれてきた本来の目的を存分に発揮できないのではないでしょうか。
世の中には、自分軸で主体的に人生を切り開く人と、他人軸で周りの評価を気にし、他人との比較や競争の中で生きる人の2種類に分かれます。
本当に良い教育というのは、親や周りからの評価をベースに良い学校を目指すのではなく、将来自らの力で道を切り開く自主性や自立心を育てるために「教育を活用」していくことなのではないかと思います。
これから世の中はAIと共存する世界に移行していくため、今までのように塾に通ってひたすら大量の知識をインプットするだけでは、世の中で通用しなくなってくるでしょう。
自分の意見をアウトプットでき、高い自己肯定感を持ち、自立した子どもを育てていくことが教育において大切な時代に突入しはじめていると感じています。