早朝、アザーンの声で目を覚ます
日の出前、響き渡るアザーンの声に目が覚めて、イスラムの国にやってきたことを実感しました。イスラム教では一日に3~5回(宗派によって回数は異なる)、メッカの方向を向いて礼拝をします。アザーンはその礼拝を呼びかける声です。低く落ち着いたよく響く男性の声で、母音を引き伸ばして節をつけて歌うような感じです。
2024年10月にトルコツアー「4つの世界遺産とイスタンブール充実観光トルコ8日間」に参加しました。トルコはヨーロッパとアジアを結ぶ文明の十字路、永い歴史と自然の雄大さを感じました。今回は「カッパドキア」を紹介します。
カッパドキアは、東西に長いトルコの中央部・アナトリア高原にあり、白い岩山が連なる幻想的な風景と紀元前の遺跡が魅力の場所です。この風景は数百万年前に火山が噴火して、火山灰と溶岩が積もった岩山になり、厳しい気温の差が年月をかけて岩山を削ってできました。
カッパドキアはペルシア語で「美しい馬の土地」を意味します。この地の歴史は、馬と鉄器を使って発展した紀元前2000年ごろのヒッタイト王国が始まりで、その後、ペルシア帝国、ローマ帝国、ビザンツ帝国、セルジューク朝、オスマン帝国など大国が興亡しました。
気球に乗って奇岩地帯を飛ぶ
トルコには21の世界遺産があり、カッパドキアはそのなかで一番古く、1985年に「ギョレメ国立公園とカッパドキア(中央アナトリア地方、ネヴシェヒル)」として登録されました。ここは文化遺産と自然遺産の両方の条件を満す、世界でも珍しい複合遺産です。
カッパドキアの大地を見るには気球ツアーがおすすめです。1時間ほどの飛行で雄大な風景を堪能できます。
私は気球ツアーではなく、朝食を取りながら「気球を見る」コースでした。気球をひとつ、ふたつと数えて、気がつくと60以上の気球が上がっていました。最大で100機もの気球があがるそうです。山裾に目を凝らすと地上から浮かびあがる気球も見えます。
私たちのツアーから気球に乗りにでかけた人がいました。朝4時にホテルを出発しましたが、乗ることは、できませんでした。私がたくさんの気球を見た同じ日でしたが、気球が飛ばなかったのです。
気球の飛行は、トルコ政府が厳密に天候状態を調査し、可否を各気球会社に通達しています。フライトの状況は直前までわからないこともあり、出発場所によっても状況が異なることもあります。
岩山から「妖精の煙突」が生まれる
カッパドキアの不思議な形の岩はどのようにして生まれるのでしょうか。噴火で降り積もった火山灰や溶岩に雨が降り、長い年月をかけて、雨水の流れた跡に沿って岩が垂直に削られていきました。上に硬い溶岩が残り、下が細いキノコのような形になりました。キノコの群れのそばには、これからキノコのなる準備をしている形の岩も並んでいます。トルコではキノコのような形を「妖精の煙突」と呼んでいます。ロマンチックですね。
三本並んだ岩は、上に硬くて黒っぽい玄武岩、下には軟らかい凝灰岩があるのがよくわかります。岩の形からイメージして、「三姉妹の岩」と呼ばれています。
火山灰の大地はすべりやすいので、観光客が三姉妹の岩に向かう道は舗装され、柵もついています。
三姉妹の岩の後ろには、中央が帯状にほんのりと赤い谷が続き、「ローズバレー」と呼ばれています。夕日を受けるとさらに美しく、ピンクから紫色に変わるそうです。
ラクダと聖母マリアが並ぶ
この岩はふたつのこぶに見立てて、「ラクダ岩」と呼ばれています。ちょっとでも角度が違うと三本の岩になってラクダには見えなくなります。
岩の近くまで行くことができます。岩のそばに立っている人物と比べると岩の巨大さがわかります。
この大岩には名前はありませんが、着物を着た僧侶が腰掛けて休んでいるように見えませんか。
観光客が撮影をしている隣では、犬が寝ています。あまり見たことがないポーズですが、すっかり安心しているようです。トルコでは犬や猫の世話を近くに住む人がしているので、犬・猫は安心して暮らしています。犬の耳には狂犬病の予防注射をした印がついています。
岩山の洞窟で暮らす
今から5000年ほど前から、軟らかい凝灰岩を削って人々が岩山の洞窟で暮らし始めたと言われています。1~4世紀にはキリスト教の修道士が暮らして壁画を残したところがいくつかあり、一部はギョレメ野外博物館、ゼルヴェ野外博物館として見学ができます。
紀元前5世紀頃には地下都市の記録があり、アリの巣のように入り組んだ通路が広がっています。地下都市カイマルクは地下5階まで、デリンクユは地下8階まであり、見学ができます。
大地の下には地下に食料貯蔵庫が掘られ、アンズやスモモの砂糖漬け、ジャガイモ、タマネギなどを保存しています。
岩山を利用した洞窟ホテルはいくつもあり、以前に住まいとして使用されていた洞窟などを改造したものです。室内は天井、壁も削ったままの岩が使われ、部屋はそれぞれ造りが異なっています。ベッドが2階、トイレが地下と段差のある部屋もありました。冷暖房も備えていますが、洞窟は一年中温度差が少なく快適に過ごせます。
手織りの絨毯はなめらかな手触り
絨毯はトルコの紀元前3500年前に遡る重要な産業です。オスマン帝国時代の後期になると、絨毯は産業化され、世界中で販売されるようになりました。
絨毯工場を見学してお話を伺いました。絨毯の大量生産が進み、伝統的な織り手が少なくなってしまったことに、危機感を感じたトルコ政府は絨毯の織り手となるための研修を始め、資格を設けました。資格をもった織り手が草木染めの天然の糸をつかって丁寧に織り上げた絨毯は、織り目が細かく、なめらかで丈夫です。
写真の絨毯はヨガマットサイズ、羊の毛色をそのまま生かしたことがポイントになって購入しました。大切にします。
トルコに行ってみよう
トルコは日本の約2倍の面積があり、21の世界遺産があります。どこに行きたいか、何を見たいか、何がしたいのか、日程はどのくらい取れるかなどからトルコ訪問を検討してみてください。各旅行社からさまざまなツアーが出ています。個人旅行でまわるのも楽しいでしょう。
私にとって、トルコはいつか行きたい憧れの国でした。オスマントルコ宮廷を舞台にしたテレビ番組を見て、その想いはさらに募り、友人が申し込んでいたツアーに参加しました。8日間のツアーは多くの名所を効率的にまわり、充実した時間を過ごしました。
トルコ共和国大使館・文化広報参事官室 | https://goturkiye.jp/ |