【AIと心理学】AIが「心」を獲得したとき、何が起こるのか?

最近、AIという言葉がよく見られるようになりました。

エアコンもAI、お掃除ロボットもAI、AIの自動運転車ももうすぐ登場することは間違いないでしょう。AIは「アーティフィシャル・インテリジェンス、人工知能」の頭文字ですから、どうやら従来のコンピュータより賢い人工頭脳に近づいたように感じられます。

今までのコンピュータも命令に従ってものすごく速いスピードで計算をこなし、人々に恩恵を与えてきました。ただAIは、その延長線上にあるスーパーコンピュータというものとは違うようです。AIと呼ばれるようになってどう賢くなったのか調べてみました。

人間が介入しなくても、自律的に進化していくAI

AIに厳密な定義はないようで、「一つの概念のようなもの」と書いてありました。AIに「こういうことを知りたい」と伝えるだけで、自分で勝手にいろいろ調べて学習して答えを出してきてくれるようになったらしいです。

つまり従来は、「猫」のことを調べさせたかったら「猫」というのは、動物で、これくらいの大きさで、耳がこんな形でひげがあって…と特徴をコンピュータに教えてあげる必要があり、それを判断基準として写真を見てこれは猫ですという答えを出してきていました。

ところが、AIではたくさんのデータの中から「猫の特徴というのはこういうところだ」というのを自分で学習して猫を認識するという具合らしいのです。

このようなAIの飛躍的な進化は、「ディープラーニング」という人間の神経細胞の仕組みをモデルとしてつくられた技術が寄与するところが大きいようです。これにより、従来はできなかった「ルールのわからない問題」を解けるようになったというのです。

たくさんのデータを人が与えなくても、ネット上にたくさんある画像などのデータをどんどん勝手に調べて学習してしまうし、間違っていたらそれを修正する力も優れているのでどんどん精度も上がるというわけです。(猫のコスチュームを着て猫そっくりの化粧をしたミュージカルのキャットの役者さんを見たら猫と判断するか人間と判断するかやらせてみたいですね。)

また私は、うちの猫は当然とてもかわいいと自分では思っていますが、AIはかわいい猫と、かわいくない猫が判別できるようになるのでしょうか?これこそ心を持たないと、そういったことは語れませんよね。

たとえば、最近ひときわ精度が高くなって実用化された分野に「音声入力」があります。私も使っています。皆さんも使ってらっしゃいますか。AIが私たちの話している音を聞いて言葉の意味をどんどん学習することで、より正確な文字起こしができるようになってきました。

AIが「心」を獲得したとき、何が起こるのか

このようにAIは進化し続けていますが、最終的には人間を超えることができるのでしょうか。

たとえば、鉄腕アトムやドラえもんといった皆さんがよくご存じのロボットは感情を持っていますよね。こうしたロボットは果たして実現するのでしょうか。

車いすの物理学者で有名な故スティーヴン・ホーキング博士は生前こう語っています。

“AIの潜在的恩恵はとてつもなく大きい。病気や貧困を撲滅できるかもしれない。だがAIは危険も招くだろう。気がかりなのは、AIの性能が急速に上がって、自ら進化を始めてしまうことだ。遠い将来、AIは自分自身の意志を持ち、私たちと対立するようになるかもしれない。超知能を持つAIの到来は、人類史上最善の出来事になるか、または最悪の出来事になるだろう。”

このことは、何年か前のNHKのTV番組「クローズアップ現代」でもとりあげられ、話題になりました。

https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4258/index.html

では、なぜホーキング博士はこのような危惧を抱いたのでしょうか?

人間が何か判断を下そうとした時、まず物事を認知する必要があります。このとき、私たちの心、とりわけ「感情」が深くかかわっています。では、AIは心を持つのでしょうか?

たとえばAIを組み込んだ介護ロボットをつくるとしましょう。でも、AIが患者さんの心を理解できないと状況に応じた適切な介護ができません。だからこの分野では研究が盛んにおこなわれています。

もっとも、私たち人間もまた、自分自身の心を完全に解き明かせているわけではありません。それが解き明かされたとき、AIも心を持てるようになるだろうとも言われています。

人間の心は他の生き物にはみられない自殺という、自らの命を断ってしまう悲劇も起こします。日本では新型コロナウイルスで死亡する方より、はるかに多くの人が毎年自死を選んでいる現実があります。

AIが人間の心に近づこうとするなら、こうした人間の心が持つ「危うさ」も同時に抱えてしまいかねません。今よりもっとAIが高度に発展した先に、AIが精神疾患のような状態に陥る恐れはないと言い切れるのでしょうか。心理職として気になるのは、進化したAIが人間のように心の健康を損ね、うつなどの症状を抱えることはあるのだろうか、ということです。

「フリーズ」はAIの心の病気を予言する……?!

「AIがうつになる?!」心を病んで自暴自棄になったAIなんて考えたくもありません。

AIが人間の命令を聞かなくなり、反乱を起こすというストーリーは、スタンリー・キューブリック監督が手掛けた有名な映画「2001年宇宙の旅」をはじめ、SFの世界では早くから描かれています。

人間が考えたものは必ず実現する、という話もあります。そう思うと、とても恐ろしいですね。AIは人間をはるかに超える知識と実行力、パワーを持つでしょうから、怖いですね。

実は皆さんの身の周りでも、恐ろしいことの前兆が、ひたひたと忍び寄っている気がします。皆さんは、この記事をPCでご覧になっていますか?それともスマホでしょうか?どちらも再起動できるようになっていますよね。再起動って何でしょうか?わざわざついているものを消してまたつけるボタンってなんで必要なのでしょうか?

PCもスマホも画面が凍ってしまったりする機能不全があり得ることを前提で作られているということですよね。皆さんも再起動したことが何度もおありではないでしょうか。

このまま時代が進んで、たまに凍ってしまうことがあるかも知れない知能が、社会にとって大きな判断を自ら下すことになったらどうなるのでしょうか。走行中のAI自動運転車のナビが凍ってしまって行き先がわからなくなったり周りの状況を正しく認識できなくなったり他の車にぶつかるなんてこと、あっては困りますね。「フリーズ」はAIの心の病気の前兆とみるのは早計でしょうか?

興味が尽きないAIの「心」の進化。

わたしは心理学者です。心理職である私がなぜAIに関心があるかというとAIにも心理学が重要だと思っているからです。

まだまだ、答えを見出すことはできませんが、AIが人間の知能を超えるとされている特異変換点、シンギュラーポイントは2045年に来るとも言われています。何かとんでもないことが起こる変化点になるという意味です。AIがより優れたAIを人間の介入なしに自らつくり出すという進化を始めたら、果たして人間はそれをコントロールができるのでしょうか?

小学生の時からタブレット端末を渡されてAIと親しんでいる新しい時代の人類が、我々が今考えている心配を超える素晴らしい答えを出してくれるであろうことを心から信じたいと思います。

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