アート

誰も知っている作品がいっぱい!「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」

このところ、美術展に言ってみたい、という声が増えているように思いませんか? 書店に行けば、”ビジネスマンに役立つアート本”や、”2018年絶対に行きたい美術展”といったタイトルの書籍が平積みになっていたり、いわゆるマニアではないアート初心者の方の興味を集めるようになりつつあります。

そうした、美術展なんて何年も行ってなかった、という方でもしっかり楽しめるオススメの展覧会「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」が東京・国立新美術館において開催中です。会期は5月7日まで。19世紀フランスで活躍した印象派の巨匠たちの作品をじっくり楽しめる美術展です。

ビュールレ・コレクションとは?

ビュールレ・コレクションを引き継いだE.G.ビュールレ・コレクション財団のクリスチャン・ビュールレ理事長がオープニングに登壇

本展のタイトルとなっている「ビュールレ・コレクション」とは、第一次・第二次世界大戦を通じて財を成した実業家で、世界的に有名なスイスの美術コレクター、エミール・ゲオルク・ビュールレ氏(1890-1965)が収集した美術作品のコレクションで、本展ではコレクション約600作品の中から、今回の展覧会のために64点の作品が厳選され、出展されています。

こうした「◯◯コレクション」と銘打たれた大規模な展覧会の多くは、世界的に知られた美術館が所蔵するコレクションだけではなく、本展のように有名な海外の個人コレクターの名前を冠したコレクションがしばしば紹介されます。日本では国立西洋美術館の松方コレクションが有名ですね。

世界的に著名なコレクションともなると、公立の美術館が持つような大コレクションを所有していることも多く、その所蔵品のお披露目のために、数年をかけて、世界各国を回る巡回展が組まれることも珍しくありません。今回のビュールレ・コレクションは、東京を皮切りに、福岡、名古屋と巡回する大型企画展です。東京まで足を伸ばさなくとも、一番近い会場で楽しめるのはうれしいですね。

ビュールレ・コレクションのプライベート美術館
Photo: Hans Humm, Zurich

展覧会の見どころ1:名作ぞろいの印象派作品

ゆったりとした展示空間。落ち着いて鑑賞できます。

ビュールレ氏が特に熱心に収集したのは、印象派や後期印象派の作品でした。モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホといった、誰もが耳にしたことがある、19世紀フランスで活躍した巨匠たちが描いた作品の中にあって、とりわけクオリティの高い作品を多数保有しているのです。

今回出展されている作品の中でも、学校の教科書に掲載されているような有名作品がいくつもあり、初心者でも安心して楽しめる構成になりました。たとえば、このあたりの作品は、実際にどこかの雑誌や映像で見た覚えがあるという方も多いのではないでしょうか?

ポール・セザンヌ《赤いチョッキの少年》(左)1888/90年頃 油彩、カンヴァス 79.5×64cm ©Foundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland) Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

ポール・セザンヌの《赤いチョッキの少年》。よく見ると少年の左右の腕の長さが違うなど、遠近法を無視し、より人間の直感的な視覚に訴えた独自の表現を確立しようとしたセザンヌの最高傑作の一枚とされています。この他に本展に出展されているセザンヌが描いた、《パレットを持つ自画像》と日本初公開となる《庭師ヴァリエ(老庭師)》の2作品も名作と言えます。

フィンセント・ファン・ゴッホ《日没を背に種まく人》(左)1888年 油彩、カンヴァス 73×92cm ©Foundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland) Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

ゴッホの《日没を背に種まく人》は、いくつかの「種まく人」の中でも特に有名な一枚とされており、浮世絵に強い興味のもったゴッホがパリ時代に模写した安藤広重の「亀戸梅屋舗」の影響が見られます。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》(奥)1880年 油彩、カンヴァス 65×54cm ©Foundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland) Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

本展の目玉のひとつと言えるのが、ルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》でしょう。ルノワールは数多くの婦人像、少女像を描きましたが、本作はその中でも特に傑作と言われ、絵画史上、もっとも有名な少女像と言われています。深い緑に浮かび上がるイレーヌの栗色の髪、あどけない表情ながらも気品を感じさせる少女の横顔が丁寧に描き出されており、いつまでも見ていられる作品です。同作品は本展のキービジュアルとして、ポスターや図録の表紙などに使われるだけでなく、さまざまなグッズにも使われています。

展覧会の見どころ2:音声ガイドが充実!ジュニア版も特別に用意

ほぼワンコインで手軽に借りられる音声ガイド。今回は2種類用意されている

本展を鑑賞される上でぜひ活用いただきたいのが、本展のために用意された「音声ガイド」です。各作品の成立した時代背景・作者の制作意図・アートについての豆知識など、パンフレットや解説パネルよりも一段掘り下げた丁寧な解説で、より深く作品を理解することができますよ。

本展で、音声ガイドを担当したのは、音声ガイド初挑戦となった、ミュージカル界のプリンスとして名高い、俳優・井上芳雄さんです。モネの《睡蓮の池、緑の反映》の前で行われた記者会見ではガイド初挑戦の感想を「実際に初めてモネの作品を目の前にして、より深くアートへの関心をかきたてられました」と語った。

女性に大人気のミュージカル俳優の井上芳雄さんが音声ガイドナビゲータに初挑戦!

また、思った以上によかったのが今回、特別に用意されたジュニア版の音声ガイドです。“可愛いイレーヌ”と“赤いチョッキの少年”など絵の中のキャラクターが登場したり、クイズを交えつつビュールレ邸を案内するなど、子どもに飽きさせない工夫が凝らされています。さらに少年の声も使い分ける声優・皆川純子さんの見事な語り口は大人でも十分楽しめます。家族や友人と行く際は、ジュニア版もあわせて借りてみて、交換しながら聞くのもよいかもしれませんね。

展覧会の見どころ3:モネの大作《睡蓮の池、緑の反映》は写真撮影OK!

門外不出とされたクロード・モネ《睡蓮の池、緑の反映》は必見!

展覧会の最後には、モネが晩年のライフワークとして取り組んだ「睡蓮」の中でも代表作とされる大作《睡蓮の池、緑の反映》が待っています。1890年にジヴェルニーに移り住んでから、モネは「積みわら」「ポプラ並木」「ルーアン大聖堂」などの連作シリーズを多く手がけましたが、「睡蓮」をテーマとした作品は生涯で200点を越えて描いています。

高さ2メートル×幅4メートルもの巨大な作品を前にすると、ただただ圧倒されます。印象派の絵画でありながら、抽象画へと半歩踏み出したような豪快なタッチは、近くで見るとモネの内面に燃え上がるエネルギーが感じられるようです。

また、何よりも嬉しいのは本展の中で本作のみ「写真撮影OK」となっていることです。思い出づくりに仲間・家族と記念写真を撮るのもいいですし、インスタ映えを狙うのも面白いですね!カメラを忘れずにお持ちください。

モネの「睡蓮」の部屋の手前に、撮影OKである旨の看板が出ています。(※フラッシュ・三脚は不可)

展覧会の特設グッズコーナーも充実

ピンク色のキーカラーで華やかにまとめられた特設のグッズコーナー

展覧会場の出口直前に設置された特設のグッズコーナーも見逃せません。定番の「図録」や「絵葉書」「一筆箋」「マグネット」他、有名ブランドとコラボしたお菓子や意外なおもちゃ・ガチャコーナーまで、思わず買いたくなるようなグッズが沢山ありました。

定番の「マグネット」「一筆箋」「メモ帳」などは数種類ずつ用意されている

パティスリー界で著名な“ピエール・エルメ”のサブレ「イスパハン」がルノワールの名作とコラボ!

「可愛いイレーヌ」がリカちゃん人形に!これも意外性あふれるコラボグッズでした

最後に・・・

20世紀を代表する印象派絵画の大コレクター、ビュールレが集めた珠玉の印象派絵画を特集した本展は、アート初心者にとっても楽しめる「わかりやすさ」「親しみやすさ」が前面に打ち出された企画展と言えます。

今年こそ、ちょっとアートを趣味にしてみようかな・・・と考えている方や、子供も含めた家族連れで気軽に楽しめる展覧会です。まもなく終了する東京展は5月7日まで。この機会にぜひ!

展覧会情報


所在地:
国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
最寄り駅:
・東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口直結
・東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩約5分
・都営地下鉄大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分
※美術館に駐車場はありません。ご注意!!
会期・開館時間:
2018年2月14日(水)~5月7日(月)
10時00分~18時00分(入場は閉館30分前まで)
※毎週金・土曜日、4月28日(土)~5月6日(日)は20時まで
休館日:
毎週火曜日(※ただし5月1日(火)は除く)
入場料:
一般1600円/大学生1200円/高校生800円
※中学生以下無料
※2月14日(水)~2月28日(水)は高校生無料観覧日
(学生証提出必要)
公式HP:
・国立新美術館HP http://www.nact.jp
・展覧会専用特設ページ http://www.buehrle2018.jp

かるび

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メーカー、IT企業で勤務後、41歳にして1年間のサバティカル休暇へ突入。現在は、ブロガー&Webライターとしてアートや映画について主催ブログ「あいむあらいぶ」(http://blog.imalive7799.com/)にて日々見聞きした出来事を書き綴っています。

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